第798話 上級職ランクアップ! カイリ編!
帰還後、〈サンハンター〉は本日の成果や近況を学園長に報告するため〈上下ダン〉を出たところで解散することになった。
「じゃあ次は近々。月曜日から水曜日の放課後に行こうぜ!」
「おうよ。放課後にもボスが狩れるとなればギルドの強化も早まるぜ。頼むぞゼフィルス」
俺とアーロン先輩が肩を組み合って約束する。目的はエリアボス狩りによる〈上級転職チケット〉の確保。
狩りは速度も重視しなければならない。何しろエリアボスは毎日1度しかリポップしないデイリーボスだ。
土日しかやらないとか勿体無いからな。放課後でもなるべく狩りに行きたい所存。
ありがたいのが〈エリアボス〉が各階層に存在することだな。なるべく狩れるようしっかり仕上げていきたいところだ。手分けして狩れるところまでいければなお良し。
「じゃねみんな。また明日」
そうミューたちが手を振って、〈サンハンター〉はそのまま去っていった。
現在の時間はまだ11時だ。2層までしか行っていないうえ、ボス狩りしたらすぐに〈転移水晶〉で帰還しちゃったしな。早い早い。
「少し早いけれど、昼食にしようかしら? それとも一度解散して午後再集合にする?」
そう提案したのはシエラだ。
せっかくの日曜日。これで終わりなわけが無い。もちろん午後もダンジョンに行く所存。
しかし、少しやりたいことがあるので、シエラの問いに俺は後者を選んだ。
「あーっと、なら一度解散して13時から行こうか。ちょっと2時間くらい時間が欲しい」
「どうしたのよゼフィルス。いつもならなるべく時間を確保してダンジョンに行きたいって言うじゃない」
「そうなんだが、いくつかやらなくちゃいけないことがあってな」
いぶかしむラナに俺は肩をすくめて答える。
実際学園の〈上級転職チケット〉回収組織発足によって俺もやるべき事が多かったりする。ユーリ先輩たちも動いてくれてはいるが俺も出来るだけ手伝う所存だ。
目指すは学生全体が上級ダンジョンに進出すること。
そのための安全性を上げる必要があるのだ。その第一段階、〈転移水晶〉のお披露目は済んだ。
〈サンハンター〉のボス狩りが安定すれば学園はさらに様々なギルドに声を掛けるだろう。
しかし上級ダンジョンとはまだまだ怖いところだ。元々上層で活躍していた〈サンハンター〉はともかく、他のギルドが手を出すにはやはりハードルが高い。
俺はそのハードルを少しでも低くするために活動する。言いだしっぺだしな。全部人任せにはしないのだ。
「というわけでシエラに相談したいんだが」
「何?」
「さっきドロップした〈上級転職チケット〉だが、カイリに使ってもいいか?」
〈アークアルカディア〉に所属するカイリは探索系
攻撃系のスキルが無い代わりにダンジョン探索に特化しており、パーティを無傷でキャリーし、ダンジョンを安全に探索させることが出来る優秀な
道中エンカウントをなるべく回避し、消耗を抑えたいときや雑魚モンスターばかりポップするところで無駄な戦闘を回避したい時などとても重宝する。
今は〈エデン〉が強すぎてあまりギルドに貢献できてはいないが、その代わり学園からの依頼で学生を安全にキャリーし、とてもありがたがられている。
俺的には、その幅をもっと広げてほしいのだ。上級ダンジョンまで。
しかし【シーカー】はあくまで下級職。上級ダンジョンのモンスターの上級索敵スキルからはさすがに隠れきれない。防ぐにはこちらも上級職にならなくてはいけない。
というわけで、カイリにはギルドの安全のため、学生の安全のために上級職になってもらうことにした。
「い、いやいやいやいや!? いくらなんでもセレスタンさんやシェリアさん、ルルちゃんまでまだ下級職なのに私が先に上級職になるのは!?」
そんな反応をするのはもちろんカイリ。
彼女の依頼も
ブンブン顔を横に振って両手を待ったのポーズにしている。
ちょっと待っての意味だな。――だが待たない。
「前々から言っていたとおりだカイリ。カイリの力が必要なんだ。是非探索系の上級職、高の下、【ダンジョンインストラクター】に〈
「いやだからちょっと待って!?」
「だが待たない」
「そ、そんなぁー」
これはすでに決定事項。シエラにもちゃんと許可を取ってあるし、カイリにも前々から言ってあったこと。
上級ダンジョンは危険。
その危険を緩和できるのである。むしろ上級職にしない選択肢は無い。
「前々から言ってあっただろ? そのためにレベルもカンストしてもらったんだし」
「うっ、だって……もう少し先の話かと思ってたんだ。だってレベルカンストしたのなんて昨日だし。まだ中級上位ダンジョンに突入したばっかりで上級ダンジョン入ダンの条件だって満たせていないし」
そう、カイリは上級ダンジョンの入ダン条件を満たせていない。
それに先日
しかし、何の問題も無い。
「俺たちだって上級職に就いたのは同じ頃だっただろ?
「そうだった……」
上級職のレベルが上がるのは
カイリは
何の問題も無い。
しかし、彼女からすれば先に〈エデン〉へ入っているセレスタンやルルより先に上級職に就くのはとても抵抗があるようだ。
ならば、その抵抗を緩和していこう。
「上級ダンジョンのボスからは〈上級転職チケット〉がドロップしやすいということが分かっている。だからカイリを上級職にするのは先行投資みたいなものだ。カイリのおかげで〈上級転職チケット〉が早く集まればそれを使ってセレスタンやルルも上級職になれるだろうぜ」
「そ、そうなの?」
よしよし。もう少しだ。
「それに上級職に就けば学園の仕事もやりやすくなるだろう。良いことずくめだ。何も遠慮することは無い。セレスタンやルルたちだってすぐに上級職になれるさ。何しろ俺はギルドメンバー全員を上級職にするつもりなんだからな」
「! ゴクリ。わ、分かったよ。私も上級職になる、いやなります!」
「よく言ってくれた!」
説得成功。
俺がギルドメンバー全員を上級職にすると言ったくだりでゴクリと唾を飲み込んだカイリだったが、それで心配事が消えたのだろう。上級職になることを了承してくれた。
ということで、時間が無いので早急に動こう。
「よし、さっそく測定室へ行こう!」
「きゅ、急だな~。私、まだ心の準備ができてないんだけど?」
「そんなもの無くても構わん! さあ行こう!」
「わーい、もうやけだー」
そんな感じに測定室の一室を借りて、ザ・上級職へ転職。
【ダンジョンインストラクター】の条件は〈【シーカーLV75】〉に心系アイテム〈鎮める心〉、最後に〈『パーティインビジブルLV10』『高位探索LV10』〉の3種類。とても簡単だ。
俺はカイリに〈鎮める心〉を渡すとカイリが受け取りすぐに使用する。
うむうむ。これで条件は揃ったな。最後に俺は〈上級転職チケット〉を渡した。
「カイリ、これで発現条件は揃ったはずだ【ダンジョンインストラクター】を選ぶんだぞ?」
「う、うん。分かった――。あ、本当にある……」
〈上級転職チケット〉を片手にカイリが〈竜の像〉へ触れると、そこへジョブ一覧が映し出された。
カイリが目で追うと、しっかりと【ダンジョンインストラクター】の名がそこにあった。
カイリは若干震える指でそれをタップし、気丈に振舞いながら言った。
「だ、【ダンジョンインストラクター】へ!」
瞬間、その他のジョブ一覧はグレーアウトして【ダンジョンインストラクター】のみが残った。
これで〈
「おめでとうカイリ。これで今日から君も【ダンジョンインストラクター】だ」
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