第796話 決着!〈サンハンター〉アーロンの太陽スキル。
「アーロン先輩の避け方、上手いな」
「はい。全力で回避に専念していますね。まだ少し余裕が見えます」
「その余裕が無くなった時が私たちが参戦する時ね」
「まだ俺たちが出る必要は無いか」
俺たち〈エデン〉はいつ突入してもいいように準備していたが、アーロン先輩が上手くボスモンスターの攻撃を回避するのを見て、参戦するのを踏みとどまった。
エステルとシエラも同意見で、槍と盾を構えながら待機していた。
「エステルとカルアはアーロン先輩の逃げ方を良く見ておけよ。ああいう経験は〈エデン〉には無いものだ」
「はい」
「ん」
アーロン先輩が崩れたときが俺たちが参戦する時。
しかし、それまではタンクが崩れたときの逃げ方をよく観察させてもらおう。
アーロン先輩の逃げ方はタンクがヘイトを稼ぎづらい欠点はあるものの、自身がやられるリスクが低い悪くない作戦だ。
〈エデン〉ではまだタンクが落ちたことが無いため、こういう立ち回りは新鮮だ。
是非エステルとカルアには吸収してもらいたい。
「そういえば私たちってあまりアイテムを使わないわよね。回復系はともかく」
「使う必要があまりないからな。使う必要があれば使うぞ? アーロン先輩と同じように」
シエラの疑問の言葉に俺は答える。
「俺はそもそも
アイテムが勿体無くて使いたくない。という理由もあるが、それは情けないので言わない。
ゲームでは貴重なアイテムほど使いたくないという衝動がよく起こるのだ。これは〈ラストエリクサー症候群〉と呼ばれている現象だな。俺も勿体無い精神に汚染されていて生産品以外はあまり使いたくない。
生産品も結局は素材を確保しなくちゃいけないしお金もバカにならないほど掛かるので出来るだけ
とはいえMPポーションは別枠。ポーション類は使い慣れるべきだと俺は思っている。
「なるほどね。確かにMPポーションだけあれば大体の状況は解決出来るものね」
シエラも納得したように頷いた。
〈エデン〉では戦闘でアイテムをあまり使わない。
それに戦闘系のアイテムって使おうと思うとすぐに無くなる。膨大な量を確保する必要があるのだ。MPポーションみたいに。金がいくらあっても足りない。そんなのはMPポーションだけで十分である。
「2人とも、気を抜きすぎですよ。いつアーロン先輩がやられるとも限らないのですからまずは警戒を」
エステルが俺たちに集中するべきと言ってきた、まあ上級ボスが相手だし未だに高すぎるヘイトをダンカン先輩は取り戻せていないからな、アーロン先輩が逃げるので上級ボスはそれを追いかけながら暴れる、そのためヘイトが稼ぎづらいのも要因の一つだろう。
確かにここでアーロン先輩がやられると非常にまずい。
アーロン先輩のヘイトはかなりのものだ、タンクのダンカン先輩がそのヘイトを稼ぐまでもう少し掛かるだろう。
そしてもしアーロン先輩がやられてしまうと次に狙われるのは回復女子先輩だ。
回復女子先輩はダンカン先輩を復活させている。
復活系は非常に特殊で、復活させた人が稼いでいたヘイトを受け継いでしまう。
タンクが受け持っていたヘイトは膨大だ。それを受け継いだということはそれだけ膨大なヘイトを稼いでしまったということに他ならない。
ただ一度止めを刺されて戦闘不能になると大幅にヘイトは低下する。ダンカン先輩のヘイト値を受け継いだ回復女子先輩がアーロン先輩のヘイト値を上回らなかったのはそのためだ。
しかし油断はできない。ちょっとの
アーロン先輩があそこまでヘイトを稼いでいなければ真っ先に回復女子先輩が狙われていたはずだな。
タンクがヘイトを余分に稼ぎすぎてはいけない理由でもある。そんなタンクを復活させればヒーラーが狙われ、戦闘不能になってしまうからだ。
ヒーラーが使う復活とは最終手段。だからこそできるだけ戦闘不能にならないことが求められる。
復活させすぎるとヒーラーが狙われる。退場してしまったら復活や回復を使える人が居なくなってパーティが壊滅する、というわけだ。
だからこそタンクとヒーラーは絶対に戦闘不能にならないことが理想なわけだな。
さて、俺たちの役目はバックアップ。しかしどうやらアーロン先輩はこういうのに慣れているらしく、このまま逃げきれそうな勢いだ。
俺たちが途中参加してしまうとボスのHPは回復し、パワーアップしてしまう。
アーロン先輩がやられたら介入するつもりだったが、これは介入せずに済みそうだ。
「行けーニャルソン!」
「そこ! そこ! 斬る! ニャルソン頑張って!」
そしていつの間にかラナとカルアがニャルソンを応援していた。
アーロン先輩のテイム猫モンスター、ニャルソンは先ほどからアーロン先輩が逃げるのを援護するように〈ヤギキイノシシ〉に取り付いたり斬りつけたりしていた。
しかし、だんだんそのHPも少なくなり。
「あ! ダメ!」
「あああああ! ニャルソン、やられた」
「そんな、ニャルソンが……」
ついにHPがゼロになりニャルソンが光に還ってしまう。
瞬間ラナとカルア、そしてエステルの落胆の声が聞こえた。ってエステルもかよ。
とはいえ大丈夫だ。テイムモンスターなので普通のモンスターと違って復活可能だ。
しかしテイムモンスターがやられると必ずドロップする〈
「あ! アーロン先輩が!」
「いや、ダンカン先輩がついにヘイトを取り返した。ギリギリセーフだ!」
ニャルソンが消え、邪魔者が居なくなったことで猛威が上がった〈ヤギキイノシシ〉がついにアーロン先輩に追いつき、突撃。大きなダメージを受けてアーロン先輩は吹き飛ばされ、騎乗していたジェイウォンも光に還ってしまう。リャアナが悲鳴を上げるが、しかし、おかげでヘイトが下がったのか、ダンカン先輩がようやくヘイトを上回ることに成功し、〈ヤギキイノシシ〉がアーロン先輩からダンカン先輩に
「『ギガントヒール』!」
「ニャルソン、ジェイウォン! お前らの貢献は忘れないぞ! うおおおおおお俺の期待に応えよ、太陽大剣よ! 『太陽の輝き』! 『陽光剣現』!」
回復を受けて気合を入れ立ち上がるアーロン先輩が大剣を両手で真上に構え自己バフと剣の攻撃力を上げるスキルを使う。
「おお!」
「ゼフィルスと同じやつじゃない! でもこっちの方が輝きが強いわ」
「おそらく、スキル強化してるんだろうな」
俺の〈陽聖剣・ガラティン〉と同じ太陽スキル。
非常に強力なスキルなためスキルのLVを強化していると思われる。
ちなみに、俺のは未強化だ。〈スキル強化玉〉を使うのは、ちょっと勿体無い。この先も上級ダンジョンでこれ以上の剣が手に入るのだから。
しかし、アーロン先輩は上級ダンジョンボスをクリアするためだろう。おそらく強化できる最大まであれのスキルレベルを上げているな。輝きが俺のガラティンより強い。
「――『溜め』!」
そのままアーロン先輩は大剣を振りかぶった体勢で溜めのスキルを使う。
あれはチャージ系スキルだな。動けない代わりに長く溜めれば溜めるほど次の一撃のダメージが大きくなるスキルだ。
ダンカン先輩がそれを見て必死にヘイトを稼ぎまくる。
「ダンカン!」
「うおおおおおお!」
溜めが完了したのだろう、アーロン先輩の呼ぶ声にダンカン先輩が走る。その先には当然アーロン先輩がいて、〈ヤギキイノシシ〉は突進系スキルを使って向かってきた。
このままではアーロン先輩が轢かれるというところで、目にも留まらぬ速さでアーロン先輩が大剣を振り下ろした。
「『サンバスター』ァァァァァ!」
「フンゴーーー!!!!」
太陽スキル炸裂。
正面から突進スキルと打ち合い、しかし勝ったのは当然アーロン先輩だった。
スキル負けしてさらに強烈な一撃が直撃したことにより、〈ヤギキイノシシ〉のHPが一気に危険域に突入し、さらにクリティカルダウンする。
「とどめだーー! うおおおおおお!」
アーロン先輩のスキルのクールタイムはもうほとんど明けている。
連続で強烈な
〈サンハンター〉が単独で上級ボスを撃破した瞬間だった。
―――――――――――――
後書き。
〈エデン〉が加わって〈サンハンター〉を助ける、という展開にしようかとても迷いましたが、〈サンハンター〉は単独で上級ボスを倒したという形に治めました。
理由は明日!
さて、一昨日からPVの低下が著しい。まさか土曜日のPVが金曜日より下回るとはビックリしました。これがポケモン効果……。ポケモン現象がすごい……。
ちなみに作者も購入しました。ポケモン楽しい! ふう。そりゃあPVも落ちますよ、うん。
御三家はほのおタイプ派の作者でしたが、今回くさタイプに猫がいたので転向もやむなしとくさタイプを選んだ作者です。ニックネームはさちねこさま。
さちねこさま、お願いします!
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