第794話 再び2層に到着! 次のボスへ!




 2層は1層とあまり変わらない山岳地帯だ。

 まるでビルや塔のような細長い山々が立ち、巨大な樹木がそれに対抗するかのように伸びている。

 大地には道というものが無く凸凹だらけで、巨大樹木の極太の根っこが張り巡らされている。


 エステルの〈馬車〉は使えず、〈戦車〉系統の〈蒼き歯車〉でさえも『悪路突破』スキルが無いと地面では使い物にならないほどの凸凹だ。

 戦闘でもAGIの高い人は足を取られる心配があるため苦労している様子だ。

 なお、カルアは『悪路走破』スキルと『罠突破』スキルが育っているため結構動きやすそうである。立体的に動くことが可能であっちこっち跳び回っていた。さすがは猫人だぜ。


〈サンハンター〉のメンバーは2層に来てから、まずアーロン先輩がソロで離脱した。

 ウルフ系である〈ラウルフ〉のジェイウォンに騎乗し、〈スピリットニャニャ〉のニャルソンも前に騎乗させて斥候に出たのだ。


 今回の目的は2層のどこかにいるエリアボスの討伐だ。

 まずはアーロン先輩の帰還を待って進む方向を決めることになった。


 そうして15分ほど経過したところでアーロン先輩が帰還する。


「待たせたな!」


「アーロン、戻ったか。エリアボスは見つかったのか?」


「もちろんだ。北東の方角から強い気を感じるぜ。ただデカイ木が倒れていやがってな。直線では進めない、北からか東からか大きく回りこむ必要がありそうだ」


 強い気を感じるとかファンタジー。

 だがなるほど、倒木エリアの辺りだな。


 俺はゲーム〈ダン活〉時代に培った脳内地図で大体の場所を予想する。

 あの辺りは倒木が多くて初見だと割と迷うんだ。

 エリアボスがよくいる場所なためにボスが暴れまわって出来たエリアだとも言われていたな。


 行くなら東側からの方が良い。北からだと倒れた巨大樹木の無数の枝が邪魔で枝の上を登ったり降りたり潜ったり面倒な道なき道を歩くハメになる、来た道を覚えられないんだ。東からだと地面を歩けるのでまだ初心者には覚えやすいだろう。戦闘もしやすいはずだ。


 俺はそれとなく東から進むよう誘導する。


「アーロン先輩、木はどっち向きに倒れてた?」


「ん? そうだな東から北西に向かってドデカイ木1本が倒れてた。幹が太すぎて登るのも一苦労だろうよ。ありゃ天然の壁だな」


 どうやらアーロン先輩は倒木エリアの手前にあるドデカイ木だけしか見てきていないようだ。あれは太すぎて奥の倒木エリアが見えないからな。奥は重なり合うようにして木がそこら中に転がっている迷路地帯だ。


「なら北方向は枝が密集しているはずだ。それほどの巨木の枝だ、太い枝が行く道を阻んでいることだろう。東側は枝が少ないかもしれないな」


「なるほど、枝葉は木の先につくからな。根元からなら進みやすいかもしれんか。アーロン」


「よし、んじゃ東から行くか! こっちだ、警戒しながらついて来い」


 俺の予想の言葉にダンカン先輩が深く頷き、アーロン先輩に促したことでルートが決まった。


 襲ってくるモンスターをアーロン先輩たちが屠りつつ東へ行くと、折れた幹の部分が見えてきた。


「なんだこれは? 大木がこんな折れ方をするのか?」


 ダンカン先輩が驚く。それもそのはずで巨大樹木は根元からバッサリ切られたように折れて倒れていた。まるで人工的に斬られたように見えるが、ここはダンジョン。それはありえない。人が採取したり伐採したりしても木は倒れないからだ。


「お、伐採ポイント発見。少し伐採していくぜ」


 巨大樹木の倒木におののいているメンバーたちを横目に、俺は強化しまくっている〈優しい斧〉を取り出してまだ地面から生えている切り株にスコーンと当てる。

 俺は偶然見つけたと装って伐採ポイントで採集する。


「よしよし〈山樹の木材〉と〈山樹の幹〉ゲットだぜ」


「おいおい〈エデン〉だけ羨ましいじゃんか。俺たちも採集していいか?」


「構わないぜアーロン先輩、だが〈エデン〉が最初に見つけたのだから多く貰うぞ?」


「少し貰えるだけでも助かるぜ!」


 この樹木の幹は超太い。おかげで伐採ポイントが12箇所もあるのだ。

〈サンハンター〉に多少採らせても問題は無い。

 とはいえ見つけた〈エデン〉が8箇所のポイントを貰ったけどな。


 上級ダンジョンの素材というだけで色々と重宝されるんだ。帰ったらハンナに渡そう。


「そろそろ出発しよう。『エリアボス感知』! 良しボスはあっちだな! 大体居場所が掴めたぜ」


 倒木エリアに突入した俺たちは、進む度に立ちはだかる倒木を横から回り込んだり、時には飛び越えたりして少しずつ進んだ。

 俺も〈サンハンター〉が見逃した、もしくはスルーした採取をしまくって〈転移水晶〉の素材を集めながら付いていく、そしてとうとう2層のエリアボスの姿が見えてきた。


「あれは、イノシシ? ヤギ?」


「『看破』の結果、〈ヤギキイノシシ〉と出たな」


「えっとつまり?」


「多分イノシシ」


「いや、あれは2層にいる〈ヤギキ〉の亜種ボスだ。ヤギだな」


「ヤギなんだ……」


 リャアナが困惑して訊ねてきたので俺は〈幼若竜〉を取り出して敵を『看破』した。

〈幼若竜〉っていうのはな、本当はこうやってダンジョンに持ってきて使うんだぜ。

 何故か『看破』したあともミューとリャアナは困惑していたが気にしない。


〈ヤギキイノシシ〉はヤギの顔面に角を持ち、イノシシの豚鼻と体格、立派な象牙のような牙を持った――――樹木型モンスターだ。

 こほん。うむ、ヤギとイノシシが合体したような見た目をしているな。一応〈ヤギキ〉というヤギのような木のモンスターにイノシシの要素が加わってパワーアップしたようなボスだ。


 注目するべきはその頑丈な2本の巻き角と2本の大牙。攻撃方法は『突進』、『ぶちかまし』、『頭突き』など角と牙を使ったものが多い。

 体長は4メートルもある。体はヤギで、足は長い。その分スピードが出る。

 上手く防御スキルを使わないとタンクが吹き飛ばされることもある、気をつけろ。


「強そうだな。どうするアーロン」


「まずは一当てだ。撤退することも視野に入れろ。俺たちの戦法が通用するのかを確認する!」


「了解だ。全員聞いたな! しっかりサポートしろ! 相手は上級ボスだというのを心得ろ!」


 アーロン先輩の一言で方針が決まる。


「行くぞ!」


「「「「応!!」」」」


〈サンハンター〉メンバー5人がしっかり準備をしつつ、まずはダンカン先輩が大盾を持って走り出した。




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