第786話 白本拠地前決戦、Dランク昇格試験決着。




 ある程度場を乱したところで、〈アークアルカディア〉のメンバーが一斉に動いた。


「カタリナちゃん、お願い!」


「行きますわ『姫の変幻結界』!」


「あん?」


「ギルマスが!」


 ある程度ソードマンと他の〈ファイトオブソードマン〉が離れた所で、ソードマンと彼らの間を遮るようにカタリナの結界が張られたのだ。


 つまり、ソードマンを隔離したということ。

 そこに後衛組の攻撃が放たれる。


「『魔本・ビッグフレアバースト』!」


「『魔弓・光の四矢』!」


「『反転ヒール』! 『ダークハイヒール』!」


「しゃらくせぇ!!」


 狙われたのはギルドマスターのソードマン。

 三つの遠距離攻撃がソードマンを狙い、同時攻撃してきたのだ。

 ソードマンはすぐにトモヨへの攻撃を中止、若干間合いを取って足を使いつつ回避行動を取って、矢は剣で撃ち落とす構えを見せた。

 だがトモヨはそれを許さない。


「逃がさないわ――『ゼロ距離ガードアタック』!」


「なにぃ!? シャハ、おめぇも巻き添えを食うぞ!?」


「それであなたを倒せるなら、むしろ安いものよ!」


 二つの盾で押さえ込み、迎撃と回避をしようとしていたソードマンに組み付いたのだ。『ゼロ距離ガードアタック』はつばぜり合いに近いスキル。二枚盾で相手に組み付きプレスを与え、動きを阻害するスキルだ。ソードマンは微妙に力を吸われる盾のせいで押し切れず足を踏ん張り回避が出来なくされてしまう。


「んなら――『ソードソードバーストスト――」


「させません。『ソニックエルソード』!」


「うおおおおお!」


 防御と攻撃の範囲攻撃『ソードソードバーストストーム』で一掃しようと行動に出ようとしたソードマンだったが、そこへ空中から『ソニックエルソード』で接近したフィナが一閃。おかげでソードマンは片手でトモヨ、片手でフィナリナを対応することになりスキルは失敗してしまう。そして同時に遠距離攻撃が飛来。


 ソードマンは両手の大剣を離し片手剣2本を装備、足止めしようとするトモヨとフィナリナを捌きつつ遠距離攻撃を回避しようとするが、トモヨが盾によるプレスで圧力をかけていたせいで、トモヨ共々攻撃がいくつかヒットする。


「たたみ掛けるわ!」


「ギルマスが!? ギルマスを助けろ!」


「この結界を破壊するのだ!」


「そうはさせないよ! チーちゃんゴー! 『サンダーレイ』!」


「ここを通りたくば、私を倒してからにしてもらいましょう! 『閃光一閃斬り』!」


「ぐお!? ええい、そこを退くがいい! 『バスタースラッシュ』!」


 結界の向こう側では、〈アークアルカディア〉の狙いがギルドマスターだと知った〈ファイトオブソードマン〉が、一瞬弛緩したように自分のことに集中しようとした。これはソードマンの実力を信頼しきっていたためだ。しかしその後の展開に、ソードマンが押されている事実に浮き足立って慌てて助けようと行動したが、フラーミナ、ロゼッタ、カタリナがそれを許さない。


 あのソードマンが負けるかもしれない。

 その事実に本拠地への攻めを中止し、誰もがソードマンの援護へ向かおうとする。

 しかし、カタリナの結界は元々防御系のユニークスキルだ。生半可な攻撃ではびくともしない。しかも、


「『マジックブラスト』! 良し亀裂きれつが出来たぞ! って亀裂、どこへ行く!?」


 カタリナのユニークスキルは変幻自在。ダメージを受けた箇所を逃がすことも出来る。魔砲使い男子によって亀裂の入った箇所は、彼らの手が届かない上の方へ行ってしまった。そしてノーダメージの結界と入れ替わった。

 ならばと結界破壊に一撃必殺の大技を使おうにもフラーミナたちがそれをさせない。


「『ライトニングボール』! チーちゃんゴーゴー!」


「プルプルー!」


 その間に残りのメンバーがソードマンへ躍り掛かる。


「たああ! 『魔剣・バーストストライク』!」


「『エルソード』! 『ソニックエルソード』! 『ソニックエルソード』! 『ソニックエルソード』!」


「しゃらくせー! シャハシャハシャハシャハ! シャッハー!!」


 しかし、1人で集団に狙われていてもソードマンは反撃する。器用に両手を駆使し、いつの間にかスリーまでブーストした剣技で相手の攻撃を受け、避け、あるいは敢えて切られたうえで相打ちを狙い、投剣で迎撃する。


「くっ!」


「あう、まだ、まだ!」


「その意気はいいぜ! だが、この俺を倒せるか! 『フォーブーストソードマン』!」


 すでにHPが半分を切っているソードマン。

 しかし、その闘気は衰えることは無く、とうとう『フォーブーストソードマン』の域へ達する。

『フォーブーストソードマン』まで行くとバフの上昇値も高く、下級職では手に負えない程のステータスへと至る、ソードマンの必勝スキルだ。


「さあ! 倒せるものなら倒して見ろ! 俺は【アイ・アム・ソードマン】! 【アイ・アム・ソードマン】だーー!!」


「させ、ないんだからー! 『盾流し』!」


「この! 『魔剣・ノックバスター』!」


「シャハハハハハ! シャッハーーー!」


「はぐっ!?」


「残り1分! 『ソニックエルソード』!」


「空を飛びながら斬ってくる戦法も、慣れて来たぜ!」


「きゃ!?」


「トモヨさんも隙有りだ!」


「あうっ!」


 トモヨの二枚盾に切り込んだ隙を突いたハズなのに、いつの間にか大きくHPを減らされているサチとフィナリナ。それに動揺したトモヨにも良い攻撃が入ってしまう。

 ソードマンの剣と動きの速度が上がり、3人を相手にし、エミ、ユウカ、エリサの後衛陣から援護攻撃に晒されてなお、有利を取ったのだ。


 すぐにエミから回復魔法がサチへ飛ぶが、フィナリナもトモヨもHPが危険域に陥っていた。特にトモヨは残り30というHP。何か一撃でも当たれば、即戦闘不能になるだろう。


「楽しかったぜトモヨさん。これで終いだ。――『奥義・会心一閃』!」


「『大防―――きゃああ!?」


 トモヨの防御スキルが間に合わないタイミングを正確に見切り、【ソードマン】のユニークスキルが直撃し、HPごとトモヨを吹き飛ばしてしまう。


「トモヨー! この、『魔剣・サードストライク』!」


「シャッハー! タンクは片付いた! 次はおめぇたちだぜ!」


 回復し、即後ろから強襲を仕掛けたサチだったが、ユニークスキル直後だというのに器用に身体を捻り直撃を避け、ダメージを最小限にしてソードマンが反撃する。

 狙いはサチとフィナリナ。タンクのトモヨがいない今、『フォーブーストソードマン』まで強化されたソードマンを止められる者はいない。と思われた、しかし。


「チーちゃん、ゴー!」


「プルプルー!」


「あん!?」


 まだ剣士にめっぽう強いモチッコがそこへ乱入してきたのだ。


「うお!? なんだこのぷにすけ! 全然ダメージが入らねぇだと!?」


 一瞬で四撃の斬撃を放ったソードマンがその硬さに驚いた。


「チーちゃんを舐めないでよね! 『モンスターハイヒール』!」


 ここで戦況に割り込んできたのはフラーミナとテイムモンスターのチーちゃんだった。

『ファーストモンスターGO』でパワーアップしたチーちゃんがソードマンに躍りかかる。

 さらに、


「はっ! 『ライトクロススラッシュ』!」


「おお! 『ブレイクソード』!」


「チーちゃんにばかり構っていると、危ないですよ?」


「フラウちゃん! ロゼちゃん!」


「シャハ、マジかよ、あいつらやられたの? 早くね?」


 ロゼッタがチーちゃんの陰から切り込んだのだ。頼もしい援軍にサチが喜色を上げる。

 すでに〈ファイトオブソードマン〉のメンバーは3人が〈睡眠〉中に加え、残り6人中2人が退場。

 カタリナのユニークスキルは壁から牢獄に形を変えて3人を雁字搦めで固定していた。最後の1人はエリサによって〈魅了〉状態にされて牢獄の外から仲間を攻撃しようと奮闘中だった。


 つまり、いつの間にか〈ファイトオブソードマン〉の生き残りはソードマン、ただ1人になっていたのだ。

 その事実に会場はき、ソードマンも目を見開いて驚愕した。


 そして最後の決戦。全員が本当の意味でソードマンへ集中攻撃を行なう。

 カタリナだけはユニークスキル発動中に他のスキルが使えないので見守っているだけだが、他全員がソードマンへ殺到していた。


「やっとクールタイムが終わりました。みなさん行きますよ――『ハッピーデュエットラブソング』!」


 ここで今までバフと回復に集中していたオリヒメの男声と女声が揃い、ユニークスキルが発動される。

 これは最大HPをさらに超過して回復し続ける継続回復スキル。

 無敵状態にも近い回復特化〈姫職〉のユニークスキルだった。


「滾ってきたわ! エミ、ユウカ、準備はいいわね!」


「任せてよサチ!」


「もちろんだ!」


「「「『クールダウン』! 『魔装武装』! 『魔装全開放』!」」」


 3人娘が魔装を再チャージし、次の一撃に全てを放出して挑まんとする。

『クールダウン』は今纏っている魔装を解除し『魔装武装』のクールタイムを短縮するスキルだ。

 残り回数にかかわらず魔装を解除できる。これによって『魔装武装』をかけ直す事が出来、回数10回分のフルチャージができる。そして残り回数が多いほど次の一撃の威力が増す『魔装全開放』を使って、準備を整えた。


 次の一撃に賭ける。

 最初に動いたのはフラーミナだった。

 超硬いタンクであるチーちゃんがいるからこそ先陣を切れる。


「チーちゃん行くよ! 『モチモチ拘束』だよ!」


「プルプル!」


「そんなもんに引っかかるか! おおう、やりにくいったらねぇぜ!」


 モチッコお得意の相手に絡まって拘束する『モチモチ拘束』を狙うが、当然ソードマンは引っかからない。素早い動きで回避、後退しようとする。

 しかし、これは序章に過ぎなかった。続いてまたチーちゃんのボディの陰を上手く使いながらソードマンの側面からロゼッタが強襲する。


「これならどうです――『セブンスレイド』!」


「はっ! シャッハー! やってくれるぜ!」


 チーちゃんに狙われている状況での足を狙った強襲。

 これで足を止めてしまえばチーちゃんに拘束されるかもしれない状況を作りだし、ロゼッタが七連撃を見舞う。しかし、ソードマンはそれを器用に迎撃しながらチーちゃんから距離を取ろうとした。


 そこへ上からフィナリナが強襲する。

 すでに『大天使フォーム』の効果は秒読みとなっており、本当に最後の攻撃だ。

 フィナリナは全力を持って上から剣を振り下ろす。


「『ソニックエルソード』! 『エルライトブレイカー』!」


「おおおおりゃあ!」


「きゃ!」


「フィナちゃん!? フィナちゃんをよくもー! 『ダークバインド』!」


 さすがのソードマンも上下の攻撃を防ぎきること叶わず、フィナリナの攻撃がヒットしてHPが残り三割を切る。その代わりフィナリナは反撃の直撃を受けて天使の翼が消えてダウンしてしまった。

 それに怒ったエリサが再び『ダークバインド』で下から拘束しようとすると、闇の腕を速攻で切り裂かれ対処されてしまうが、その隙にロゼッタが斬る。これが掠りHPが残り二割に突入する。


「はっ!」


「シャッハー! いいないいなぁ! そんなおめぇらにプレゼントだ! 『ソードソードバーストストーム』!」


 ここでソードマンの渾身の大技。身体中の剣が空中に浮かび乱舞してストームを起こす。

 これで道はふさがれ3人娘の攻撃は届かないと思われた、だが。そこへ大盾使いが飛び込んだ。


「私が止めるわ! ユニークスキル『大防御』!」


「なにぃ! トモヨさんだと、なんで退場してないんだ!」


 ストームの剣は反時計回り、それを遮るように止めたのは退場したと思われていたトモヨだった。

 実はトモヨのパッシブスキル『不屈の心得LV5』は食いしばりスキル。

 30%の確率ではあるが、HPがゼロになる攻撃を受けたとき残りHP1で耐えることがある強スキルだ。

 あの時ソードマンはトモヨにユニークスキルを使った直後、後ろから仕掛けてきたサチを迎撃するために振り向き、トモヨが退場するところを見ていなかった。


 トモヨはその後、オリヒメの回復魔法によって回復し、チーちゃんの後ろに隠れて潜伏していた事でソードマンに発見されなかったのだ。

 そうして大技を使い、範囲攻撃で吹き飛ばそうとストームを使ってきたタイミングでトモヨはこれを止めて今に到る。

 剣を止められたことで道ができた。


「今よ!」


「いっけぇー! 『魔本・火炎爆撃』!」


「待ちわびたよ! 『魔弓・チャージショット』!」


 エミから火炎の波の範囲攻撃が、ユウカからは限界一杯まで溜めた高威力の矢が放たれる。


 命中すれば、たとえ迎撃出来たとしても大ダメージは必須の攻撃、ソードマンは逃げるしか無い。


「おおおおおお!! 『ブレイクソード』!」


 しかしソードマンは剣の嵐で範囲攻撃の爆撃に耐え、ユウカの一撃も『ブレイク』系スキルでギリギリ破壊する事に成功する。しかしノーダメージとはいかず、剣の竜巻は消え去り、ソードマンのHPは残り一割を切った。そこへロゼッタとサチが飛び込む。


「最後です! エステルさん直伝――『姫騎士覚醒』! 『プレシャスソード』! 『セブンスレイド』! 『閃光一閃斬り』! 『プレシャスソード』! 『ライトクロススラッシュ』! 『セブンスレイド』! 『プレシャスソード』! 『閃光一閃斬り』! 『ライトクロススラッシュ』!」


「これで、今度こそ終わりだよー! 『魔剣・光剣』んんんん!」


「シャーハハハハハ! 俺は【アイ・アム・ソードマン】、【アイ・アム・ソードマン】だ――――」


 直撃。ロゼッタのスキルの嵐にさらされ、迎撃のために完全に動きを封じられたところへサチが振りかぶる光の剣の波がソードマンを呑み込んだ。

 これによりソードマンは最後、片手を真上に上げるポーズを取りながら退場してしまう。


 もう試合中の復活は出来ない。


 これによってほとんど勝敗は決し、そのまま〈ファイトオブソードマン〉は白の本拠地を落とせずにタイムアップ。


 Dランク昇格試験は〈アークアルカディア〉の勝利が決まったのだった。


 ポイント〈『白13,750P』対『赤7,630P』〉〈ポイント差:6,120P〉。

 〈巨城保有:白6城・赤0城〉

 〈残り時間0分00秒〉〈残り人数:白10人・赤7人〉



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