第784話 決着は目前に。作戦会議で勝ち筋を共有!
赤本拠地陥落!
Dランク試験官であり、有名人な上級職、ソードマンを下しての本拠地侵攻、そして陥落という熱い展開の流れに会場が大きく盛り上がる。
「まさかまさかの、〈ファイトオブソードマン〉の本拠地が陥落だと!?」
「おいおいおい、マジかあの1年生!? いやほとんどが〈新学年〉のメンバーなんだっけ? へ? 今の〈新学年〉ってあんなに強いの?」
「〈新学年〉やべぇーー!? 〈我らのアイアムソードマン〉が負けるって相当だぞ!?」
大体の反応が困惑のざわめきだった。
今年新しく発足された新しい学年、――〈新学年〉。
筋肉を除いて全てが高位職というとんでもない粒ぞろいのクラス、その真価はいかなるものなのか?
〈転職制度〉が始まってからギルドバトルが禁止されていたために、人々は今日、初めて〈新学年〉が多くいるギルドのギルドバトルを見ることになった。
〈アークアルカディア〉の今回の出場者はサチ、エミ、ユウカ、トモヨを除く6人が〈新学年〉に所属している。
その結果は見ての通り。
〈新学年〉の集団は上級職のいるギルドすらも打ち破るほどの強力な人材へと化けていた。
しかもこれが〈転職〉してから僅か1ヶ月足らずでの出来事だというのだからとんでもない。
もう完全に〈転職〉の悪しき風潮は覆され、〈転職〉は新たな希望の架け橋という認識へ書き換わっていくことになる。
学園の思惑は、見事に成功を収めていた。
◇ ◇ ◇
「みんな、やったわね!」
「上級職の【アイ・アム・ソードマン】まで倒しちゃうなんて、すごいじゃない!」
「お疲れ様でした。みんな大活躍でしたね」
「そちらの活躍のおかげでこちらも3人を足止めすることができました。2名ほど撤退されてしまいましたが大丈夫でしたか?」
本拠地にてフラーミナ、カタリナ、ロゼッタ、オリヒメが赤本拠地を陥落させて帰ってきた6人を労った。
ここは白本拠地、つまりは〈アークアルカディア〉の本拠地だ。
どちらかの本拠地が落ちたら2分間のインターバルの後リスタート。
お互いの選手は一度自陣の本拠地へ戻ることになるため、こうして全員が集合していた。
「「「イエーイ!」」」
早速仲良し3人娘が「イエーイ」からのハイタッチでカタリナたち東側部隊の4人に順番にタッチしていく。
先ほどからテンションが上がりまくりの3人がよくしていた光景だった。
「そっちも足止めお疲れ様。少ない人数だったのに、抑えてくれて助かったよ」
「戻ってきた2人も安心して、私とトモヨで止めたからね。こっちは被害なんてほとんど無かったわ!」
「はい。姉さまはタンクの人を眠らせてMPをごっそり奪っていましたからね」
トモヨも東側を足止めしてくれたカタリナたちに礼を言い、エリサが心配を解消し、フィナリナが安心させる様に少しジョークを言う。
ひとしきりみんなで喜びを分かち合ったところで、リーダーのサチが言った。
「あんまり時間も無いから、今後の展開予想、と勝ち筋の相談に移るよ! 何か意見がある人はどんどん言ってちょうだいね!」
それはこれからの展開の話だった。どうやって勝つのか、それを相談するべく、サチがみんなに意見を求めたのだ。
「では、私から。まずは状況の再確認をしましょう」
そこで発言したのはフィナリナ。
小さく挙手をして、まずは今置かれている状況の情報共有を行なった。
このDランク昇格試験は制限時間40分、そして現在の時点で21分が経過していた。
巨城は全て〈アークアルカディア〉の手にあり、中盤戦は完全に制したと言って良い。
ポイント〈『白13,440P』対『赤7,390P』〉〈ポイント差:6,050P〉。
〈巨城保有:白6城・赤0城〉
〈残り時間18分44秒〉〈残り人数:白10人・赤2人〉
巨城を三つ獲得して6,000点を獲得した〈アークアルカディア〉が大きくリードしていた。
〈ファイトオブソードマン〉は西部隊の5人が全滅しており、東部隊はトモヨとエリサが相手をしていた2人以外全滅している。実質的な敗北に近い状態だった。
特にエリサにMPを奪取されたのが響いており。戦士男子のMPは、他のメンバーに〈MPハイポーション〉を融通してもらってなんとか回復していて厳しい状態だった。
基本的に〈MPハイポーション〉の回復量は100P、高品質で150P、後は【薬師】の腕によって回復量が変化する。
10本持って来ても1500P分しか回復しないため、持久力勝負をすると不安が残る。
MP奪取が恐れられている所以である。恐ろしい。
さらにはソードマン他、7人を撃破したが〈敗者復活〉には10分という短いようで長い時間が必要だ。ソードマンが復活するまで後6分近くある。
そうなると相手が執れる手段は限られてくる。
ゼフィルスは言っていた、残り時間が10分を切るイコール〈敗者復活〉のルールが適用されなくなる期間だと。
復活に10分掛かるため、次に復活しても試合が終わってしまっているためだ。
ソードマンが復活するのは残り時間12分前後、それまでは〈ファイトオブソードマン〉は何も出来ないだろう。
何かするにしても、ギルドマスターであるソードマンが復活してからになるはずだ。
そして12分しかないということは、もしもう一度倒されれば10分後に復活してもほぼ活躍できないことを意味する。つまり、決戦を仕掛けてくるだろう。この白本拠地に。
おそらく全軍で。
再び総力戦になる、というのがフィナリナの考えだった。
それをしっかりと説明する。
「さっすがフィナちゃん! あったまいい~」
「これは頭が良いというか、経験の差だと思いますよ姉さま。相手の出方を考えるとそれくらいしか動けません」
見た目10歳にもかかわらずフィナリナとエリサはこの中では一番の年長者。
ギルドバトルに参加したのも1度や2度では無く、Dランク昇格試験も実は初めてでは無かったりする。
「Dランク昇格試験とは対人戦をメインに向けた内容が組まれています。Dランク試験官として動くためには、小城ポイントや巨城を削るよりも本拠地を目指して逆転を狙ってくるでしょう。そうすれば私たちが防衛に動かざるを得ないため対人戦が成立するからです」
目と口をポカンと開けていたサチがそれを聞いてようやく再起動を果たした。
どうやら見た目に似合わぬ的確な情報分析と読みにビックリしていたらしい。
「こ、こほん。えっと、フィナ先輩の案を採用したいと思います!」
「いえ、多分こうなるということを言っただけで、これからの私たちの行動についてはまだ述べていないのですが」
「う~、じゃあフィナ先輩。あなたに作戦参謀の地位を与えます。作戦を考えてください」
丸投げ、にも取れるサチの発言だが、ここではそれが最善だった。
分からないなら分かる人に意見を聞く。それができるというのも立派なリーダーである。
「任せてください。〈ファイトオブソードマン〉は最終的にはこちらの本拠地陥落を狙うでしょう。先ほども言ったとおりそれで対人戦が成立し、勝負がつくからです」
「……どういうこと?」
「〈敗者復活〉のルールがあって無いようなものになるのです。つまり退場したらそのまま。人数を減らせれば、それだけ本拠地を落としやすくなります。ソードマンさんの性格からして、おそらく本拠地に攻撃するというのは見せかけだけで対人戦をメインに仕掛けてくるでしょう」
フィナリナが説明を始めると、全員が前のめりになる。
すでに試合再開のブザーが鳴ってはいるが、作戦共有こそが重要だとして、全員この場から動かなかった。
フィナリナの予測からするとギルドマスターが復活するまでは攻めてこないとの事なので、まだ余裕があるとの考えだ。
「それで、私たちの勝ち筋は?」
相手が対人戦メインで来るのは分かった。
ならば迎え撃つ、というそう簡単な話では無い。
〈アークアルカディア〉は本拠地を守っている身なのだから。
そして守ることは攻めること以上に難しい。
本拠地を狙われて、守ろうとした隙にやられるということも十分ありえる。
だからこそ、ただ守るだけでは無く、守り切る勝利条件をトモヨが聞いたのだ。
フィナリナもそれにコクリと頷く。
「先ほどぶつかった戦闘、正直〈ファイトオブソードマン〉は上級職のソードマンさん以外ほとんど大したこと無かったです」
「それ言っちゃうか~」
「みなさんもそれは感じていたと思います」
「まあね。ほとんどが中位職みたいだし、レベル差はあってもステータス差はさほどなかったように感じたよ。〈スキル〉〈魔法〉はこっちの方が強いし、やりようで何とかなるよね」
「はい。なんとかなる程度の戦力差なんです。だから狙うは一点のみ、相手の上級職、ソードマンさんだけです。この人さえ撃破すれば、〈ファイトオブソードマン〉の勝ち筋を潰せます。そうすれば後は巨城を持っているこちらの勝ちです」
「おお!」
「フィナちゃん大胆!」
フィナリナの提案はごくごくスタンダードな常道。
「今相手が攻めてこないのはソードマンさんがいないからです。つまりはソードマンさんがいなければ勝てないのが今の〈ファイトオブソードマン〉です」
そう、フィナリナは無慈悲な感想を述べたのだった。
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