第768話 Dランク試験の準備。相手はどこのギルド!?




〈エデン〉の下部組織ギルド、――〈アークアルカディア〉。

 14名から構成されているギルドで、メンバーの半分近くが新学年に通っている。

 主な活動内容は親ギルド〈エデン〉のサポートで、よく一緒に行動しダンジョンで活動しているな。

 いや、サポートじゃないな。〈エデン〉の延長線だ。むしろ〈エデン〉の一部だ。


 そんな〈アークアルカディア〉は現在Eランクギルドで上限は15人まで受け入れが可能だ。

 そして下部組織ギルド自体、親ギルドの1個下のランクまで上げることが可能であり、最高Dランクまでギルドランクを上げることができる。


〈エデン〉が今Cランクギルドなので、つまりは〈アークアルカディア〉はもう一つランクを上げることが出来るわけだな。

 ランクを上げればDランクギルド部屋へ移れるほか、最大で20人までのメンバーを入れることが可能になる。

 下部組織ギルドとは救済場所。俺たち親ギルドの〈エデン〉がBランクギルドとなり、上限人数が30人に上がったと仮定して、万が一負けたとき、脱退するメンバーの受け入れ先としても非常に頼りになる場所だ。


 だからこそ、俺たち〈エデン〉がBランクに上がる前に〈アークアルカディア〉にはDランクへと上がっていてほしかったわけだ。まあ、Bランクの〈ランク戦〉の条件がまだ満たせていないんだけどな。


 それは置いといて、〈アークアルカディア〉には出来ればDランクに上がってほしい。

 というわけでギルドバトルが解禁される前の昨日、Dランク試験を受けたいとついでに学園長に軽く言ったのだが。

 そうしたら、なんか速攻で決まったんだけど、今ココ。


「ずいぶん早かったな~」


 普通申請すれば最短でも1週間くらい掛かるはずだ。試験官を務めるギルドを抽選しなければならないからな。


「ギルドバトルの禁止期間が長かったですから。ギルドバトルが解禁されたと大々的に告知発表するために、その栄えある最初のギルドバトルに〈アークアルカディア〉が選ばれたようですね。また、これは学園なりのお礼の一種とも考えられますが」


 セレスタンが自分の考察を混ぜながら述べる。


「うーむ、学園に利用されることを悔しむべきか、気を使ってもらってすぐに試合を組んでもらえたことを喜ぶべきか。さすがは学園の長だな」


 見事な案配。

 さすが学園のトップである。まあ、ここは素直にお礼を受け取っておこう。


「しかし、やっと〈アークアルカディア〉もDランク試験か。セレスタンは大丈夫か?」


「もちろんですよ。ニーコ様もなんだかんだ言いつつ手を貸してくださいますし、それにサトルがとても優秀ですから。ギルドマスターの負担なんてそれほど多くはありません」


「それを聞いて安心したよ」


 セレスタンは〈アークアルカディア〉のギルドマスターをしている。

 それだけじゃなく〈エデン〉のサポートを始め様々な雑事をこなしているので大変か確認したが、セレスタンがこう言うなら大丈夫なんだろう。仕事量を超えるなら超えていると言うからなセレスタンは。


「新メンバーの様子はどうだ? Dランク試験を突破できそうか?」


「全員がすでにLV55を超え三段階目ツリーまで開放されておりますからね。十分可能かと思われます。」


 新メンバー。

 つまりは〈新学年〉組、レベルをリセットしたメンバーだ。

 LVゼロとなりやり直しをした〈新学年〉組だったが、授業で〈道場〉を使ったレベル上げを行なってくれたため、全員がLV40へと至っている。


 その翌週はダンジョン週間だったために〈エデン〉メンバーと共に中級ダンジョンへと進出。

〈ジュラパ〉へ速攻を掛けて他の学生が追いついてくる前に周回しまくった。

 さらには人気の無い〈暗森の魑魅ちみダンジョン〉も周回の獲物に加わり、ガンガンレベルを上げたことによってすでに〈新学年〉メンバーは全員がLV55を超えている。

 メンバーの本気度がすごい。


 一応速攻の理由として、〈転職制度〉を受けた学園の3分の1の学生は高位職。つまりは〈ジュラパ〉でも十分対応できる強さの者が多いという意味でもあり、〈公式裏技戦術ボス周回〉が見られないよう急ぎで周回したのだ。


 しかし、蓋を開けてみると、〈ジュラパ〉へ来た学生はほとんどいなかった。

 まだまだ苦手意識がある様子だ。というのもあるが、〈ジュラパ〉は中級下位チュカの中でも1,2を争うほど難易度の高いダンジョン。

 いきなりそんなところに挑む学生はほとんどいなかったということだな。みんな段階を踏み、まずは優しいダンジョンから攻略している様子だった。そりゃそうだ。

 え? 「〈エデン〉は?」って?

 うむ。


 つまり準備はいい感じに整っているわけだな。LV55を越えるならかなり戦えるだろう。

 今までDランク試験の〈10人戦〉に人数が足りなかったり、ギルドバトル禁止期間になったりで機会が無かったが、ようやく〈アークアルカディア〉がDランクになる時が来たというわけだ。


「よっし、早速今日の放課後集合だ。明日の話し合いをするぞ! 主に出場枠の10人を決める。セレスタン、連絡を頼めるか?」


「お任せください」


「それで、相手のギルドの名前は?」


「はい。相手は最近一つランクを落とし、Dランクになった元Cランクギルド。――〈ファイトオブソードマン〉ですね。手強いようですよ」




 今日は金曜日。

 俺は講師の仕事がある。

 だが、今日は早めに切り上げよう。

 そしてギルドメンバーと明日の作戦会議だ!

 講師よりもギルドの方が大事だ!


 しかし俺は奮闘するも、やっとギルドに合流できたときにはすでに17時になっていたのだった。

 学生の熱意がすごすぎる!?



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