第754話 模擬戦! ゼフィルスVSラクリッテパーティ




 ドーム状の結界で上から覆い、下から『フレアストーム』を直撃させる。

 いい手だな。

 しかし、俺を倒すには残念ながら火力が足りてない。


「『ライトニングバースト』!」


「へ? ぶびゃらあああ!?」


「え、カジ!?」


 炎の渦の中心から発射された雷の閃光が結界を破壊し、そのまま【結界師】カジマルを吹き飛ばしたのだ。

 まさかフレアストーム直撃状態から反撃してくると思っていなかったのだろう。

 カジマルは直撃を受けて吹き飛んでしまう。


 そして俺は炎の中から悠々ゆうゆうと歩き、登場するのだ。


「え、ええ!? 全然効いてないじゃない!?」


「おいおい、勇者って不死鳥か何かなのかい?」


「いやあ、割とフレアストームの中って見通し良いのな。ビックリな大発見だったぜ」


 意気揚々と前に出る俺。

 そんな俺にアケミとキールがとても驚いた視線をくれるが何のことは無い、上級職に上級装備が揃っているのだ。LVだって彼らがカンストしていたとしても15も違う。

 さらには〈勇銀装備〉の防御力と『ダメージ減少LV7』『全属性耐性LV3』の能力も合わされば、『フレアストーム』のような属性範囲攻撃はあまりダメージは入らない。


 HPバーを見ればダメージはたったの90ポイント、俺のHPが756あるので1割強くらいのダメージだった。

 ふっふっふ、ノーガードでこれだ。素晴らしい防御性能だ。


 あと何気に大発見。炎の渦の中から見た外の景色が割と見通し良かった件。

 これは心のメモ帳にしっかりと記載した。

 HPのおかげで炎の中でも暑くあるが熱くは無いのが嬉しいところ。おかげで一度やってみたかった炎の中から登場ができちゃった。やったぜ!


 俺が苦も無く攻撃の直撃を受けきって平然としているからだろう、周りがざわめいている。


「おいおい、勇者がとんでもないぞ!? INT超特化あのアケミの攻撃が全然効いていない!?」


「あのアケミの攻撃をまとも食らってまったく意に介していないなんて!」


「ノーガードでわざと受けきったのか!? あのアケミの攻撃を!?」


 ここでも言われている、あのアケミとは?


「不死鳥、あのキールって男子は中々良いこと言うわね、炎の中から出てくる勇者、これは絵になるわ」


「そ、そうか? 確かに絵的に〈死神〉を倒す勇者みたいな構図になっているが。俺は少し〈死神〉が可哀相になってきたぜ」


「勇者君の装備が素敵! 強い! どこで手に入れたのかしら? あれ私も欲しいわ!」


「た、確かに、ゴクリ。装備が凄まじい性能だな。さすがにアケミの攻撃をノーガードで耐えるのは厳しい。つまり、あの装備に秘密が?」


「うおお! 勇者すっげー、もっとやれー!」


「〈死神〉たちも頑張れー! 根性見せろー!」


 いつの間にか結構な注目を集めていたようだ。

 応援ありがとう!


「だが、あんまり俺が1人で突出するのはこのパーティ模擬戦の趣旨に反する。――ハイウド!」


「任せてもらおう! 『メタリック・ウェポンナックル』!」


「伏兵か! アケミ!」


「!! 『ボンバーフレ――キャァ!?」


「! 狙撃か!? 『ソウルメディカル』!」


 その通りだ。ミューによる攻撃がアケミを吹き飛ばしていた。

 それまでアディ、レミ、ミューの3人でラクリッテを抑えつけていたが、ラクリッテの行動に慣れてきたのかミューがこっちの援護にも加わった形だな。


 キールのパーティには俺の知らない3組男子もいたが、ラクリッテの援護をしようと無理に前に出たところでアディに吹き飛ばされてすでに退場している。残念すぎる! もっとラクリッテの盾を上手く利用していれば即行退場は無かったはずだが、男のプライドで前に出ちゃった模様。


「ハイウド追撃! 俺はキールを抑える」


「了解した!」


 素早く指示。

 俺がキールを抑えている間にハイウドには吹っ飛んだアケミを狙ってもらう。

 しかし、


「そうはさせない――『大結界』!」


「ぬう!」


 吹っ飛んだカジマルが戻ってきてアケミを防御。ハイウドは結界に阻まれて進めなくなる。

 さらに、


「ポン、ポン! ユニークスキルは夢幻ゆめまぼろしの巨塔――『夢幻むげん四塔盾しとうたて』!」


 ラクリッテのユニークスキルが発動、これが見事な位置取りで俺たちのパーティとラクリッテたちのパーティを見事に分断したのだ。


 破壊してもいいが、相手が見えない状況、ここは一度距離を取るのが吉と判断。

 俺の指示によりアディとハイウドが塔から距離を取る。


 さて、どう攻めてくるかな? と期待を胸に待ち構えていると、徐々に塔が透けてきた。幻化したのだ。

 とはいえまだ向こう側は見えない。ここで塔に向かって範囲攻撃魔法を放つのも手だが、ここは少しラクリッテたちの手を見てみたいと待ち構える。

 アディとハイウドには最大限の警戒を促した。


 すると、突如『直感』が警報を鳴らす。


「ハイウド回避!」


「何?」


「食らえ即死攻撃ユニーク――『ソウルチョッパー』!!」


「うおおおおおぉぉぉぉ!?」


 その正体は『ソウルコンパクト』で気配を消したキールだった。一瞬でハイウドに接近してユニークスキルを直撃させる。ハイウドは俺の警告むなしく即死によって戦闘不能になってしまった。


「む、無念なり……」


 さらに幻となった塔からラクリッテが俺へ向かって飛び出してくる。


「ゼフィルスさんの相手は、わ、私がします! ポン! 歪みのオアシス『蜃気楼』!」


「おお、ラクリッテが俺の足止めか」


 いい手だな。というか俺を止められる可能性があるとしたらラクリッテしかいないし、キールの即死が強力なのでキールを自由に動かしたい狙いと見た。

『蜃気楼』のスキルで空間を歪ませミューとレミの狙撃を防ぐ狙いも見事。

 カジマルとアケミは後方の蜃気楼の中からアディを狙う考えのようだ。


 だが、レンジャー系を侮ってはいけない。


「『エネミーロックオン』! 『ブレイクショット』!」


「アディ突っ込んで! 『光の連矢』!」


「わきゃああ!?」


「あ、アケミさんー!?」


「! 『ジャミング』!」


「ラクリッテ、それはちょっと判断が遅かったな」


「あ!」


 遠距離スナイパーのミューはしっかり相手の幻影を見破るスキルを持っていた。

 レミは特殊だな。アディの隙を無くすように矢を撃ってキールを牽制。

 ミューの攻撃はアケミに直撃した模様だ。

 ラクリッテが慌てて『ジャミング』で索敵系妨害をしてくるが、それは『蜃気楼』と同時に使うべきだったな。


 ということで俺はラクリッテの気が逸れた隙に後衛のアケミたちの下へダッシュ。

 一度離されればAGIの差でラクリッテは追ってこれない。

 アディによってカジマルの結界が破壊された隙に俺が飛び込んでカジマルに『聖剣』と『ライトニングバニッシュ』を叩き込んで戦闘不能になってもらい、続いてアケミも俺がユニークスキル『勇者の剣ブレイブスラッシュ』を叩き込んで戦闘不能になってしまう。


「まだまだ! 『ソウルチョッパー』!!」


 ここで動いたのがキールだ。ラクリッテが俺への追撃より遠距離攻撃の防御を優先したようで、キールがユニークスキルを再び使用し、アディを狙ったのだ。

『ソウルチョッパー』はユニークスキルの中でもクールタイムが明けるのが格段に早い。もうクールタイムが明けたようだ。


 さすがキール、いいタイミングでの切り込みだった。しかし、俺は新たな防御スキルでそれを防御してしまうのだ。


「『勇猛結界』!」


 アディのほんの目の前に壁のような結界が出現する。


「な! ユニークスキルの刃が通らない!」


「そいつは状態異常攻撃系を無効化する結界だからな」


 俺の新装備〈勇銀の盾〉のスキル『勇猛結界』は、状態異常系の攻撃を防ぐ特化型防御スキルだ。ユニークスキルだろうと防御スキルで防御は出来るため、完全に防いだ形となる。


「アディはラクリッテを」


「うん、ありがとゼフィルス」


『勇猛結界』によって生き延びたアディにラクリッテを任せ、俺はキールへと躍りかかった。

 そこからの勝負は一瞬。

 最後は俺が『ライトニングスラッシュ』と『ハヤブサストライク』の目にもとまらぬ連撃でキールのダウンを奪って、仰向けで大の字になるキールに剣を向けて制止する。いつでもとどめを刺せる状態だが、模擬戦ではとどめを刺すまでも無くこれで戦闘不能扱いだな。


「キール、お疲れ様。これで終わりだ」


「そうらしいね。まったく、ゼフィルス君には勝てる気がしないな」


「そりゃあな。キールは俺を倒す手段が無いからなぁ。連携が崩れたら厳しいだろう?」


「まさに言うとおりだ」


「そこまで! ゼフィルスパーティの勝利」


「「「「わー!!」」」」


 そこでラダベナ先生から模擬戦終了の宣言。

 どうやらラクリッテの方もアディ、レミ、ミューの攻撃に耐えきれず戦闘不能になったらしい。

 すげえな、あのラクリッテを倒しちゃったのかよ。

 あ、よく見ればラクリッテが降参しただけのようだ。ラスト1人になると降参ができるからな。


 5人で横並びに整列し、一礼をして模擬戦終了だ。


「お疲れ様でした!」


「「「「お疲れ様でしたー!」」」」


 そうして自分のパーティで集まり、今の戦闘の感想など意見交換をし、何が良かったのか良くなかったのかを話し合ったりした。

 今まで組んだことも無かった学生でパーティを組むのって新鮮だ。

 合同授業の意義がよく分かるぜ。


 その後2度パーティシャッフルの時間があり、パーティ模擬戦の合同授業はとても有意義な時間を過ごせたのだった。

 楽しかった。




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る