第746話 2パーティ〈祭ダン〉攻略! レアボス周回~!




「わー壮観だよ。ここまでモンスターが集まると凄まじい絵になるよねー」


 ニーコが棒読みのような疲れたような声をして言った。

 まあ、その意味も分からんでもない。

 それもそのはず、現在2パーティでの〈宵闇の祭壇ダンジョン〉攻略中だ。


 1層から19層までは1層につき1ウェーブで10体、20層から39層までは1層につき1ウェーブで15体出現、そして40層からは1ウェーブで20体出現するようになる。


 これはパーティが増えても変わらない。その合同パーティの分だけモンスターのステータスは上昇するけどな。


 ニーコをつれてダンジョン攻略、1層から超速で殲滅してとうとう40層に突入、俺たちを出迎えた20体のモンスターの群れにニーコは若干遠い目になっておられる。


 しかし問題は無い。

 むしろ一塊になってくれて助かるくらいだ。


「遠距離攻撃よーい! タンク班引き付けろー!」


 俺は2パーティ指揮を執る。


 ちなみに2パーティのメンバーは、俺、シエラ、ラナ、エステル、カルアのパーティの他にリカ、シズ、リーナ、ラクリッテ、ニーコのメンバーが2パーティ目に選ばれていた。

 ラクリッテ以外は上級職メンバーだ。


 ちなみにタバサ先輩には例のDランク昇格試験の件で〈アークアルカディア〉を任せているので不参加だ。


 俺の指示でタンクであるシエラとラクリッテが前に出てスキルを使いモンスターを集め始める。


「私は右を集めるわ――『挑発』!」


「わ、私は左ですね。――ポン! 音に聞こえるは気になる太鼓――『ぽんぽこぽん』~!」


 シエラが寸分違わず右側に狙いを定めて挑発スキルでモンスターを集め、ラクリッテもそれに続くようにヘイトを集めるスキルを使う。

 ラクリッテのスキルはどういう原理なのか、どう見ても金属の両手盾である装備〈城塞タワーシールド〉から、まるで小太鼓を叩くようなポンポンポ~ンという音が鳴り、それを聞いたモンスターがわらわらと集まって来るのだ。


 そのままタンク班はモンスターを引き付けながら後退して、バラけていたモンスターたちを集めることに成功する。よし、今だ。


「魔法班、遠距離攻撃班、放てー! リーナはユニークスキル発動だ!」


「一網打尽ですわね『全軍一斉攻撃ですわ』!」


 5ウェーブ目のフィールドボスまで効果が持つだろうと思うのでリーナには最初からユニークスキルを発動してもらった。2パーティ全員の〈スキル〉〈魔法〉の威力が上昇する。


「どんどん攻撃しろー! 『サンダーボルト』!』!」


「我が巨刀の一撃を受けよ! ――『二刀斬・炎紅刀華えんこうとうか』! 『二刀斬・氷雪月下ひょうせつげっか』!」


「やっと出番ね! 『大聖光の四宝剣』! 『聖光の宝樹』!」


「ラナ様の攻撃から生き延びたことは称賛しましょう、でもさようならです。――『マルチバースト』! 『ジャッジメントショット』! 『デスショット』! 撃ち漏らしはすぐに片付けますよ」


「シズさん、クールタイムも考えてスキルは少し抑えてくださいまし、それではウェーブが進むと息切れしますわよ。この階層は唯一5ウェーブもあるのですからね――『遠距離集束砲』!」


「んー、みんな気合が入りまくってるね。僕も微力ながら手伝うよ『3連バースト』! 『クイックショット』!」


 2パーティ目のメンバー、上級職であるリーナ、リカ、シズ、ニーコの遠距離攻撃が飛ぶ。

 俺たち1パーティ目はあまり遠距離攻撃や範囲攻撃が得意ではなかったため殲滅力が爆上がりだな!


「8割方の消滅を確認しましたわ!」


「前衛班行くぜ! 続けーー! 『ソニックソード』!」


「はい! 『騎槍突撃』!」


「ヤー! 『フォースソニック』!」


 おかげでボロボロになったモンスターの群れを余裕を残しながら殲滅することが出来るのだから楽だ。

 そうしてボコボコになったモンスターの群れは再び殲滅させられるまで時間は掛からないのだった。


 そうして前よりも簡単に5ウェーブが終了する。〈グレーターデーモン〉も早々にやられてしまったよ。〈木箱〉を落としました。いらん!!


「いやぁしかし、やっぱ対集団の戦闘能力が高いわ~」


 俺は2パーティ目のメンバーを見てそう評価する。

 そう、たとえ敵が強化されようとも苦戦するとは限らない。

 むしろ楽である、不思議! 


 まあ不思議でも何でもないんだけどな。集団殲滅に使える範囲攻撃や遠距離攻撃持ちが多いからな2パーティ目は。

 おかげで前より全然タイムが早い。

 被害も軽微だ。


 上級職が9人もいる超豪華メンバーである、苦戦するはずもないな!


 しかし、そうなるとただ1人下級職のラクリッテが心配になる。

 しっかり仕事はこなせているので、一応何も問題は無いのだが、俺はラクリッテの元へ向かった。すると羨望の目でみんなを見つめているラクリッテが独り言を呟いているのに気が付いた。


「うう、皆さんが強い。うちも早く上級職なりたいです」


「悪いなラクリッテ。もう少ししたら〈上級転職チケット〉を用意するから、もうしばらく待っていてくれ」


「へ? あ! ゼフィルスさん!? 聞いていましたか!? あの、待っていますから! 大丈夫です! はい!」


 俺がいると気が付いたラクリッテが慌てたように弁明してくるが、さっきのが本音で間違いないだろう。ラクリッテも本当は上級職になりたいのだ。

 だがもう少し待っていてくれ、上級ダンジョンさえ攻略できるようになれば〈上級転職チケット〉は爆発的に集まって来るんだ。何しろドロップ率3%だからな。


 今回2パーティ目のメンバーに、俺はラクリッテ、リカ、シズ、リーナ、ニーコを組み込んだ。

 上級職4人を組み込んだ理由は言わずもがな、ドロップだけじゃなく上級職のレベル上げも目的の一つとしている。


 しかしそうなると、なぜラクリッテを今回のパーティに入れたのか気になるだろう。

 リカがタンクも行けるため、盾タンクを入れる必要に疑問を持たれるかもしれない。

 だが、リカはあくまでアタッカー&タンク。シエラのような完全なタンクとして活躍することは出来ず、集団戦をタンクするのは苦手だ。

 そしてここのレアボスである〈ブモル〉のユニークスキルの対策も考えると、もう1人タンクが欲しかったが故の人選だな。 


 ということで、俺はラクリッテを今回のパーティに誘ったのだ。

 避けタンクのパメラも良いのだが、今回は集団戦、パメラは相性的に厳しいのでラクリッテを選んだ形だな。


 また、俺は盾タンクの上級職は早急に欲しいと思っている。

【ラクシル】は本当に強いからな~。〈上級転職ランクアップ〉後も楽しみだ。ラクリッテは次の〈上級転職チケット〉候補の1人でもある。


 つまり、ラクリッテは俺たちの次に上級ダンジョンを攻略する2パーティ目の候補でもある、ということだ。

 今のところ、ここにニーコとタバサ先輩を入れ替えた、ラクリッテ、リカ、リーナ、シズ、タバサ先輩のパーティを目論んでいたりする。

 ただこれは〈上級転職チケット〉の数で今後変更するかもしれないけれどな。


 そして攻略が終わり次第、ニーコを連れてきて周回に移行するのだ。ふはははは!


「ふおお!? なんか今すっごい寒気がしたのだよ!?」


 視界の端でニーコがビククッと震えていたのだが、俺はそれに気がつかないのだった。




 40層を攻略して翌日、朝から40層にショートカットしてまた〈グレーターデーモン〉を屠る。ってまた〈木箱〉かよ! いらんわ!!


 そのままモンスターもウェーブ数も上がった40層以降をガンガン突き進んでいく。現在48層、残り1層だな!


「ふう。みんな回復が終わったわね。次に行きましょうか?」


「賛成ですわ。ただ撃っているだけなのであまり疲労感が無いですわね」


「ふっふっふ。これが効率を求めた結果というわけなのだよ」


 リーナが少し困った顔で今の状況に困惑中というのを伝えてきたので、俺は胸を張って〈ダン活〉プレイヤーの知識を自慢した。


「ダンジョンとは効率重視! 嘘だ。本来なら楽しむこと重視である。しかし、このダンジョンでは話が別だ! 楽しむ要素が著しく欠如しているために、殲滅無双してやるのがこのダンジョンの正しい楽しみ方なのである!」


「なのである、じゃないわよ」


「ゼフィルスさんはいつも通りの平常運転ですわね」


 うむ。シエラとリーナから羨望の目で見つめられてしまった。

 シエラがジト目ではないのできっと褒められているのだろう。


 そんな感じでわいわい楽しみながら最後の49層も殲滅無双して、俺たちは最奥に到着。早い。まだお昼前である。

 ふっふっふ、このときのために〈エデン〉にある全ての〈笛〉を持ってきたのだよ。

 俺たちはそのままレアボス周回に突入するのだった。




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