第725話 激突! ボス二体を撃破せよ!『完全魅了盾』!
〈徘徊型ボス参戦現象〉は中級上位ダンジョンからたまに発生するようになる、とっても危険な現象だ。
徘徊型ボスは下層を徘徊する特性を持っている。
例えば中級下位ダンジョンでは全30層で構成されているために10層ごとに上層、中層、下層と分類され、徘徊型は下層である21層~29層までしか動けない。
そのため〈徘徊型ボス参戦現象〉は起こらない。フィールドボスが10層と20層にしかいないからだ。
しかし中級上位ダンジョンだと下層の認識が変わり、下層は31層~49層が範囲となっているのだ。
ちなみに1層~10層が上層、11層~30層までが中層扱い。
そのため、たまにこんな感じで〈徘徊型ボス参戦現象〉が発生することがある。
これ、テストにも出た。
「まさか、〈徘徊型ボス参戦現象〉ですか!?」
「シエラはそのまま〈光の中精霊〉を! 俺が〈闇の中精霊〉のタゲを取る! ラナは即魔払いとバフを!」
「了解したわ! 『挑発』!」
「分かったわ! 『病魔払いの大加護』! 『耐魔の大加護』!」
「『アピール』! 『ヘイトスラッシュ』!」
「――――!」
まずは近くに居た俺が〈闇の中精霊〉のタゲを取ることにし、それぞれに指示を出す。
〈徘徊型ボス参戦現象〉の最大の特徴はボスが2体になることだ。
何それ酷い。
しかし、ちゃんと救いは用意してある。ただ2体に増えるだけだと難易度がとんでもない事になってしまうため、この〈徘徊型ボス参戦現象〉が起こったとき、ボスたちの弱体化が起こるのである。
これはプレイヤー側が2パーティ以上でボスに挑む時と同じく、ハンディが発生するためだ。その辺、難易度調整はされている。
俺も今攻撃を受けたかぎり、なんとなくだが単体の時の〈闇の中精霊〉のダメージより少ない印象を受けた。どうやらしっかりリアルでも弱体化はされているようである。これも授業で習ったけどな。
だから、持ち直して対抗さえできれば勝利の可能性は無くは無いのだ。
対処法は単純で、2体ボスが一緒にいるから戦況が混乱するのだから引き離してしまえばいい、となる。
しかし今回、問題が二つある。
一つ目は〈光の中精霊〉も〈闇の中精霊〉も魔法使い型であまり動かないところだな。引き離すことができない。
そしてもう一つの問題だが、これが厄介で〈闇の中精霊〉は〈光の中精霊〉と仲が良いんだ。意外性抜群!
それこそ、〈徘徊型ボス参戦現象〉中の〈光の中精霊〉を攻撃すると、たまに〈闇の中精霊〉からヘイト関係なく攻撃されるほどに。
ゲーム〈ダン活〉では〈光の中精霊〉戦の最中に〈闇の中精霊〉が現れると「光を助けに来たのか!?」「このツンデレ闇娘!」とよく言われていたものだ。
〈闇の中精霊〉の見た目が、よくあるツンデレライバルキャラっぽいビジュアルなのがなんとも妄想を加速させるのだ。
ごほんごほん。話が脱線したが、つまり〈光の中精霊〉を攻撃すると〈闇の中精霊〉から狙われることがある、ということだな。こんな風に。
「はぐっ!?」
「エステル! 『浄化の祈り』! 『大回復の祝福』! ちょっとゼフィルス、エステルに攻撃が来てるわ!」
俺がヘイトを取っているにもかかわらず〈闇の中精霊〉が黒の杖を振りエステルに〈鈍足〉の状態異常を掛けた。耐性バフを運悪く貫通したか!
すぐにラナが癒やし、対処する。
しかし、ラナに作戦を説明したいがいかんせんラナと俺が離れすぎている。
合流して〈闇の中精霊〉の対処法を話し合いたくても話せない状態だ。
急に出てきた徘徊型ボス、そしてフィールドボスの2体を相手にシエラと俺以外は浮き足立っていた。
対策はある。あるが、話をする時間が無いな。
しかし、やらなくては〈光の中精霊〉は自己回復まで使えるのだから下手に時間を掛けると消耗が酷くなるだろう。
だからこそエステルとカルアは〈光の中精霊〉を先に撃破すべく頑張っているのだが、〈闇の中精霊〉の攻撃が俺を抜けるせいで思うように進まない。
ダメだな、俺じゃ〈闇の中精霊〉を止めきれないか!
「シエラ、作戦変更、俺と担当をスイッチしてくれ!」
「! ヘイトはどうするのよ!」
「カリスマで一気に奪う! シエラは〈闇の中精霊〉のタゲを強制的に奪ってくれ! 『カリスマ』!」
「――わかったわ!」
俺はシエラに指示を出し、全体挑発スキル『カリスマ』を発動しながら〈光の中精霊〉の下へ走った。代わりにシエラがこっちへ走ってくる。
シエラと担当をチェンジし、俺が〈光の中精霊〉をシエラが〈闇の中精霊〉を担当する事にスイッチする。
「『ヘイトスラッシュ』!」
「――――!」
俺はヘイトを稼ぐ斬撃スキルで〈光の中精霊〉に切り込んだ。さすがにシエラが稼いだヘイトをこの程度で上回る事は出来ないが、
「『カリスマ』!」
俺の切り札である『カリスマ』、『クールタイム軽減』のコンボがあれば近いうちにタゲは奪える。後は〈光の中精霊〉がシエラを追いかけないようここで足止めするだけだ。
「頼むぜシエラ!」
「これをボスで使うのは〈マザーマッシュ〉戦以来かしら――『完全魅了盾』!」
「――――!?」
シエラは空中に浮かぶ4つの小盾を〈闇の中精霊〉へ発射。〈闇の中精霊〉に命中するとタゲが強制的にシエラの方へ向く。
これは【盾姫】のユニークスキル。敵のヘイト関係なくタゲを強制的に奪う強スキルだ。
さっきからヘイトを一番稼いでいた俺、〈光の中精霊〉を攻撃するカルアとエステルにランダム的に攻撃していた〈闇の中精霊〉のタゲがシエラに固定される。
もうエステルやカルアを狙う事は出来ない。
『完全魅了盾』はLV5なので40秒間タゲの固定が可能だ。シエラはその間にどんどんヘイトを稼いでいく。
「位置は、ギリギリ使えるわね『挑発』! 『シールドスマイト』! 『マテリアルシールド』!」
シエラはこれまで〈光の中精霊〉と一定の距離を保つ戦法をしてきたが、〈闇の中精霊〉には近距離での接近戦で対応する。それこそ盾が命中する位置に居るため〈光の中精霊〉とは少し距離があり、『挑発』スキルをギリギリ〈光の中精霊〉に届かせないで〈闇の中精霊〉だけに当てていた。
有効範囲を完全に把握している素晴らしい手腕だ。
全体挑発をかけると〈光の中精霊〉のヘイトまで稼いでしまうため、シエラは『挑発』と『シールドスマイト』だけでヘイトを稼いでいく。
逆に俺は全体挑発を使っても良いから〈光の中精霊〉のタゲをシエラから奪うのを優先した。〈闇の中精霊〉のタゲは強制的にシエラになっているからこそできる技だ。
「シエラが〈闇の中精霊〉を引きつけている間に〈光の中精霊〉を倒すぞ! 『
「ヤー! 『64フォース』! 『デルタストリーム』! 『スターブーストトルネード』! 『スターバースト・レインエッジ』!」
「わかりました! 『騎槍突撃』! 『
「行くわよ! 『大聖光の四宝剣』! 『聖光の耀剣』!」
「――――!」
この40秒がチャンスだと言わんばかりにガンガン攻める。
途中〈光の中精霊〉のタゲが俺に向いたがお構いなしで攻撃しまくる。俺は『
しかし残念ながら〈光の中精霊〉は自己回復で耐えきり、〈闇の中精霊〉に掛けた『完全魅了盾』の効果が切れた。
俺は〈闇の中精霊〉のタゲも奪ってしまっているが、ラナに回復を密にしてもらい、耐える構えだ。
俺はカルアとエステルに〈光の中精霊〉への攻撃を中止し、〈闇の中精霊〉へ攻撃するよう指示を出す。
「〈闇の中精霊〉は〈光の中精霊〉に攻撃すると手を出してくる! だからシエラが強制タゲを取っていない時間は攻撃しないこと!」
〈光の中精霊〉に攻撃しなければ〈闇の中精霊〉からの攻撃は来ない。
強制タゲの効果が切れたら攻撃しなければ〈闇の中精霊〉から攻撃される心配は無いのだ。〈光の中精霊〉も自己回復をしたばかりでクールタイムに突入している。この期間に回復はされないだろう。
ちなみに『完全魅了盾』のクールタイムは3分だ。俺の『
俺はその間〈光の中精霊〉と〈闇の中精霊〉の攻撃をいなし続け、クールタイムが開けるまでの間回避に徹した。
そうしているとシエラも無事〈闇の中精霊〉からタゲを取れたらしく、安定して攻撃を受けきり始める。これで俺の負担が軽減された! そろそろ攻め時だ!
「――――!」
「カルア、エステル、そろそろ『完全魅了盾』のクールタイムが終わるぞ! 攻撃スキルのクールタイムは大丈夫か!」
「ん、本気出す」
「お任せください。ちゃんと考えております」
「まずは〈光の中精霊〉から倒すぞ! 戻って来い!」
「ヤー」
「はい!」
「クールタイムが開けたわ! 行くわよ――『完全魅了盾』!」
「おっしゃ、これで倒す! ――『
「『32スターストーム』! 『デルタストリーム』! 『スターブーストトルネード』!」
「行きます。『姫騎士覚醒』!」
「とどめよ! 『大聖光の四宝剣』! 『聖光の耀剣』!」
シエラの『完全魅了盾』がヒットし、〈闇の中精霊〉のタゲがシエラに固定された瞬間。
俺たちはダメージ覚悟でなりふり構わずに総攻撃を〈光の中精霊〉へ叩きつけ、最後はエステルの『姫騎士覚醒』からのスキル連打によりそのHPはゼロになり、〈光の中精霊〉が、まずエフェクトの海に沈んで消えたのだった。
そして残った〈闇の中精霊〉も単体であれば恐るるに足りず。シエラがタゲを取っているので余裕の勝負だ。
さっきはよくもやってくれたなという鬱憤を込めて攻撃し、HPが少なくなってからは逃げる動作をしたものの、勇者からは逃げられない。
そうしてそのままHPを削りきって〈闇の中精霊〉も撃破したのだった。
――――――――――――
後書きでお知らせ失礼いたします!
〈ダン活〉小説の第3巻の発売まで1週間をきりました!
また、ブックウォーカー様では本日の日付が変わり次第先行配信となります!
どうか、どうかお手にとっていただけると作者は大変嬉しいです!
〈ダン活〉3巻をよろしくお願いいたします!
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