第683話 天使と悪魔のジョブ決定!




【天使】系、【悪魔】系の職業ジョブは強い。

 攻撃、防御、支援、回復、どれを取っても強力なスキルと魔法を覚え、ランキングの上位にくる強さの職業ジョブが大半だった。


 俺もメンバーには「天使」と「悪魔」をよく入れたものだ。

 貴族系のカテゴリーは人数制限が入り「騎士爵」以外は各2名までという決まりがあったのに対し、「天使」と「悪魔」はそれぞれ1名ずつまでしか加入させられないと言えばどれだけこのカテゴリーが強いかわかるだろうか?


 さて、そうしてカテゴリーの強さを語ったところで問題だ。


 どの職業ジョブに就かせようか?


「今〈エデン〉が一番欲しいのはヒーラーなんだ、次点でタンク。【天使】は全ての職業ジョブに回復魔法が搭載されているから割と自由に決められるぞ。【悪魔】の場合はデバフ系なので回復系を司る職業ジョブに就いてくれると嬉しい」


「私、ヒーラーやってみたいわ!」


「私はタンクも希望します」


 聞いてみると姉のエリサは【悪魔】ヒーラーで問題なし、しかし妹のフィナリナはまさかのタンクを希望のようだ。もちろんヒーラー兼任。


 先の面接でタンクは確保できているとはいえまだ最低限の人数だ。一応、今後も見てヒーラーだけではなく盾タンクもゲットしておきたい。しかし、


「ね、ねえゼフィルス君、フィナちゃん大丈夫かな? あの身体でタンクなんて出来るの?」


 ほら、ミサトも心配そうにしてるぞ。ビジュアル的にな、うん。


「ミサトの懸念も尤もだが、天使系は盾の適性がとても高いからな。あの姿でも……一応問題ないぞ。ルルなんかダメージ受けても全然効いてなさそうに見えるだろ?」


「それはそうだけど……」


 タンクにはビジュアル的問題がある。

 ルルだって最初はビジュアル的にやばかったからな。すぐにかっこよくなったが。


「まあ安心しろって。さっきも言ったが天使は盾の適性がとても高い。天使タンクは盾の性能を上げるスキルで防御力を増し増しにして受けるスタイルだ。または盾で受け流し、剣で攻撃に転ずる戦士タイプだな。回復が使えるために長く生き残る強力なタンクだ」


 スタンダードだからこそとてもかっこよく、そして使いやすい、純粋に盾タンクとしても強かったため天使タンクを使う人は多かった。

 タンクなのに自己回復も出来るのでマジ強いのなんの。

 やっぱりタンクで回復できるって強いわ~。〈ダン活〉にはタンクで回復できる職業ジョブはほんの一握りだったからな。


 そう語るとフィナリナの少し閉じ気味のまぶたがピクリと動いた気がした。

 そうしてこっちを向いて言う。


「それ、やってみたいです。教官」


「興味出ちゃったか」


 確かに、聞いただけでかっこいいと分かるからな。やってみたい気持ちも分かる。

「子爵」ならルルみたいにかっこよく敵に突撃するスタイルを好むはずだしな。

 また幼女突撃隊が増えてしまうのか。いいじゃないか。いや、彼女たちは幼女というよりも少女か? 難しいところだな。


 しかし【悪魔】タンクじゃなくてよかった。


 悪魔は盾を持たない。

 これは古今東西の決まりごと。だから【悪魔】系には盾の適性自体無いのだ。

 故にタンクも自然と魔法タンクになる。一部そのまま肉体受けタンクもあるがエリサにはやらせないよ? 完全に肉壁だからビジュアル的にルルのときよりきついと思われる。


「でもゼフィルス君、フィナちゃんはいいとしてエリサちゃんは? 悪魔ってヒーラーってイメージ湧かないんだけど?」


「普通のヒールでは無いな。悪魔流の回復は色々やりかたがあるぞ~。さてエリサ」


「はい!」


「良い返事だ。エリサにはデバッファー&ヒーラーになってもらうとして、他に希望はあるか? バッファーも出来るしアタッカーも行ける。あと物理か魔法、どちらを選ぶかだな」


「物理ヒーラー……。う~ん、私悪魔について全然知らないしね、なんかこう、可愛く相手を悩殺しちゃうみたいな感じはないかな?」


「姉さま、私たちの体で悩殺は無理ですよ」


「フィナちゃんは夢の無い事を言うなぁ! ちょっとくらい夢見たっていいじゃない! 私悪魔っになるのよ?」


「姉さまの悪魔のイメージがよく分かりました」


 フィナリナの閉じ気味の目がさらに閉じて、物言いたげな目で姉を見つめていた。


 悪魔っ娘、可愛く悩殺系の夢のある職業ジョブ。実はあるんだなぁそれが。


「よし、エリサ、ならこんな系統の職業ジョブはどうだ?」


 俺はエリサに近づいてこそこそ話す。


「それ夢の意味違くない!?」


 最初はツッコミを入れていたエリサだったが、次第にキラキラした目をしだした。


「――でもいいわ。とてもいいわねそれ! 決めたわ、全モンスターをエリサちゃんの魅力で魅了してやるのよ!」


 うむうむ。俺も決めてくれて嬉しいぞ。

 やっぱり女の子の悪魔と言えば薄着で悩殺と相場が決まっている。

 そんな需要にお応えして、〈ダン活〉にもしっかりそういうスキルや魔法は存在した。

 まあ〈ダン活〉は年齢制限B(12歳以上)が対象のゲームなのでそこら辺かなりソフトではあるが、想像するだけなら自由なのだ。


 悪魔っ娘に『どこを癒やしますか~』とか言われたらHPとは別のことを考えてしまうこともある。つまりそういうことだ。実際はHPを癒します。


 そうして少しずつ彼女たちの要望を聞きながらポジションと職業ジョブを決めていく。


「私は前衛を希望したいです。タンクですから」


「私は後衛希望ね! 魔法タイプよ!」


 妹のフィナリナは前衛希望の物理系だな。

 姉のエリサは後衛希望の魔法系。

 いい感じにバランスが取れている。


 さすがに俺みたいに物理も魔法もとなるとステータスが厳しいので、物理か魔法、どちらかに絞ってスタイルを決めるのが非常に重要だ。天使と悪魔は物理と魔法、両方得意だからな。


「よし、方針は決まりだ。そうなると目指す職業ジョブ系も自然と決まってくる。まずはエリサから」


「はい! お願いいたします!」


 ビシッと敬礼のポーズで身構えるエリサ、彼女からは少し遊び心が見えるな。嫌いじゃないぜ。俺も遊び心満載です! エリサとは仲良くなれる気がした。


「エリサが就く職業ジョブは、上級職も加味して【ナイトメア】。高位職、高の上に位置する【悪魔】系の職業ジョブだ」


【ナイトメア】はその名の通り夢を操る職業ジョブだ。

 状態異常の親和性が非常に高く、特に〈睡眠〉〈魅了〉〈混乱〉などを得意とし、高い貫通性能を持っているため耐性のある相手でも状態異常にしてしまう強みを持つ。


 さらには〈睡眠〉状態の時、普通は一度でも外部からの衝撃があれば起きるのだが、【ナイトメア】には眠ったまま相手のHPを削る魔法が存在する。眠ったが最後、そのまま永遠に眠ってしまうのだ。恐ろしい。


 ヒーラーの適性も高く、メインヒーラーとしても活躍が可能だ。

 エリサはヒーラー&デバッファー、たまにアタッカーだな。

 いい夢を見させてあげられるだろう。(夢の意味が違う)


「【ナイトメア】……、【ナイトメア】……。うん。頑張るわ!」


 エリサは何度も繰り返していたが、やがて俺を見つめなおして頷いた。

 そこには先ほどまで【悪魔】系に対して落ち込んでいた様子はない。とてもやる気にみちていた。

 10歳の見た目とは思えない切り替えのよさだった。ちょっとかっこいい。やる気になってくれてよかったよ。

「子爵」の子ってなんでこんなにかっこいいのだろうな?


「次は私です。教官」


「おっと、そうだった。フィナリナ」


「教官、私の事はどうかフィナと呼んでください。そっちの方が嬉しいです」


「そうか? よし、フィナ。これからフィナの就く職業ジョブを告げるぞ」


「ドキドキ」


「なんで姉さまがドキドキしているのですか。あと口でドキドキ言うのはあざといです」


「フィナちゃんが辛らつすぎるわ!」


「続けるぞー。フィナに就いてほしいのは【天使】系高位職、高の上、【アークエンジェル】だ!」


「【アークエンジェル】……」


【アークエンジェル】は【天使】系の万能職業ジョブだ。

 どんな方向性にも育成出来、さらにどの適性値も非常に高い。

 単体で無類の強さを発揮する天使系の最強職業ジョブであるため非常に人気が高かった。まあ人気の理由はユニークスキル『大天使フォーム』という変身能力が大きかったのだがな。フィナの大天使姿が今から楽しみでならない!


 2人からはすでに職業ジョブを育成するときのアドバイスを任されている。

 超強くしてやんよ!


 よし。早速これから発現条件をクリアしにいくぞ!


 それから2時間、俺は付きっ切りで2人の発現条件を満たしてやり、〈天魔のぬいぐるみ〉を使った。

 ルルには悪いが〈天魔のぬいぐるみ〉は一度使用すると消えてしまう仕様。

 エリサとフィナがそれぞれ〈天魔のぬいぐるみ〉を使用すると、光の粒子となり彼女たちの身体に吸い込まれて消えてしまう。


 その代わりエリサには「悪魔」が、フィナには「天使」のカテゴリーが無事に付いた。

 そうして準備を終えると〈転職制度〉を受ける彼女たちを見送り、そしてその1時間後。


 無事エリサが【ナイトメア】に、フィナが【アークエンジェル】に〈転職〉したのだった。


 なおその日、研究員数十名がアスリート走りで俺へ訪問してきたが、丁重にお帰りいただいたのは別の話。




 ―――――――――――

 後書き失礼します。

 ルルについての救済はちゃんとありますのでご安心ください。


 ちなみに「天使」「悪魔」は「王族」と同じく高位職、高の中、以上の職業ジョブしかありません。そのため加入制限は各1名。(ゲーム時)




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