第682話 どっちが天使でどっちが悪魔? 悪魔っ娘美女?
「私が【天使】に就くわ!」
「私が【天使】になります」
やっぱり2人は【天使】を希望した。
まあ【悪魔】って、ちょっとイメージがなぁ。でも強いんだぞ?
意見がぶつかってしまった双子姉妹が向かい合う。
「姉さま、ここは私に任せてください。しっかりと天使を全うしてみせます。だから悪魔は任せました」
「いくらフィナちゃんの言うことだからといってこれだけは譲れないわ! 天使は私がなる! むしろ私が天使よ!」
「フ」
「あ! 笑った! フィナちゃん今笑った! お姉ちゃんに向けてなんて――」
「笑わせないでください」
「笑わせないでください!?」
「姉さまの方が悪魔の素質があります。この前だって私のプリンを勝手に――」
「わーわー! なんてこと言うの!? それ今持ち出したらダメなやつ!?」
おお、姉妹の間でどっちが天使にふさわしいか対決が始まった。
妹のフィナリナが優勢のようだ。プリン、食べられちゃったらしいな。表情こそ変わらないが妹ちゃんの額に怒りマークが見えるようだ。
「姉さま、ここは可愛い妹に任せてください。それで上手くいきます」
「私と同じ顔でしょう!? わ、私だって出来るはずだよぉ……」
どうやら話は平行線のようだな。妹が結構押しているが。姉は諦めない。いや、意外と追い込まれているかもしれないが。
と、そこで姉のエリサがこっちに向いた。
「あの、2人とも【天使】という選択肢はないのでしょうか?」
さっきの勢いはどこへやら、やや腰が引けた
分が悪いと思ったのだろう、なんとか自分も【天使】になれる道を模索してきた。
「残念だが」
俺は首を振るしかない。
【天使】2人でも別に良いんだけど、それだと当初の目的が果たせないしなぁ。
〈天魔のぬいぐるみ〉も苦労して二つ目を手に入れたので、【天使】と【悪魔】、両方が欲しいところ。
しかし、無理矢理いやいやしている
そう俺が悩んでいるのが伝わったのだろう。
妹ちゃんは姉の肩をガシッと捕まえるとそのまま部屋の隅っこに連れて行って姉を説得し始めた。
「姉さま、いいのですか? これは最後のチャンスなのですよ? 教官は自分に合った
「う、う~。やっぱりそうよね」
「私たちが高位職に就くにはもう教官を頼るしかありません。〈転職〉も今日から始まり、私たちの番まで残り3時間。もう私たちには後がありません」
「あ、悪魔か~……私に似合うかしら……」
「……姉さま、でも本当に嫌なら……、別に断っても構いませんよ」
「へ?」
「私たちは双子姉妹です。確かに先ほどは押し付けあう形になってしまいましたが姉さまに嫌な思いはしてほしくはありません。姉さまが嫌なら私も一緒に辞退します」
「え、えええ!?」
「だからよく考えて決めましょう。でも忘れないでください。私はいつも一緒です。中位職のままになってもです」
「ふぃ、フィナちゃん~~~!!」
姉のエリサが妹のフィナリナに抱きついて感涙していた。
フィナリナも抱きしめ返して、頭と背中をナデナデしている。
なんか感動的なシーンだなぁ。
「でもそれならフィナちゃんが【悪魔】に就くでもいい気が――」
「嫌です。私は【天使】を希望します」
「フィナちゃん~~~!?」
おかしいな。さきほどと同じ姿に見えるのに感動的なシーンが掻き消えてしまったぞ?
面白い姉妹だ。
まあ、どうしても嫌だというのなら仕方ない。
少し説得してみて、ダメなら諦めようと思う。【ヒーロー】系でも十分強いしな。
そうなると今回【悪魔】は諦めなくてはいけないが、その時は仕方ない。
ということで部屋の隅に蹲って内緒話、にしては丸聞こえだったが、している姉妹、その姉に話しかける。
「エリサ、あ、呼び方はエリサでいいか?」
「あ、はい。構いませんですことよ、いえ、なんでしょうか!?」
突然声を掛けられたエリサがビクッと震え、言葉遣いが乱れた。
妹のフィナリナが背中をさすって応援する。
「姉さま、ファイトです」
「う、うん! やったるわ」
「そう気張らなくていいぞ、もう少し力を抜いて普通に話してくれた方がやりやすいかな」
「そ、そう? こんな感じでいい?」
「おう、そんな感じでいい」
俺は面接官であると同時にギルドマスターで有り、先生でもある。しかしエリサたちは生徒ではあるが先輩だ。
もうややこしいので普通に話してくれた方がやりやすいという判断だな。
俺も彼女たちのことは先輩呼びしてないし。見た目的に先輩という気がしないというのもある。
「じゃあ、話を続けるとして、エリサは【悪魔】に就くのを悩んでいるんじゃないかと思ってな」
「そ、それは」
「まあ、確かにイメージがマイナスだからな、一生残る
俺は優しく語り掛ける。
悪魔になりたいかと言われて即イエスと答えるなんて人はよほどの人物だろう。
そう考えれば嫌だという気持ちもよく分かる。
しかし、別に〈ダン活〉の【悪魔】は
「でも【悪魔】は強いぞ。まず強い。それは俺が保証しよう。見た目も悪魔に変わるわけではないし、ただ強くなる。高位職の中でもかなり上位の強さであることは間違いない」
「……」
「【悪魔】は前衛から後衛、武器の装備も様々で、デバフ系と非常に相性がいいんだ。でもそれだけではなくって、ちゃんとアタッカーもタンクも、そしてヒーラーもこなせる優良職だ。特に眷属の召喚や状態異常攻撃が強い。タンクしながら攻撃したりデバフで弱らせたりして、これがマジ強い。さらに即死攻撃もある、ボス以外は一撃確殺なんてやばいぞ。タンクして攻撃を受け止めたらその相手が光に還ったなんてかっこいいだろ?」
【悪魔】のスキルは大半が闇属性。
その戦闘スタイルは千差万別だ。自分に合うスタイルがきっと見つかる、それが悪魔の魅力。
「アタッカーが強い【悪魔】系もあるな。自己バフの上昇値がやばくてな。何かを犠牲にする代わりにステータスに大補正をかけたり、クセはあるが強力なステータスで無双できて楽しいぞ。大火力攻撃もあるしな。ヒーラータイプは結構特殊だ。普通に味方を回復することもできるし、ダークヒールって言って相手のHPを削るヒールを放つことが出来たり、相手のHPやMPをドレインして回復し、相手を削り倒すような
俺の話が終わるまで、双子姉妹は目をぱちくりしながら聞いていたが、俺の問いに姉のエリサが反応した。
「その、高位職でも強いほうなの?」
その問いに俺は心の中でガッツポーズを取る。上手く気を引けたぞ!
「そうだ。ダメージ上昇、付与系アップ、状態異常の貫通攻撃、受けるダメージの減少、どれを取っても強いな」
「それを獲得したら、ギルドバトルでも勝てるようになるかしら?」
「もちろんだ。対人戦でもかなり強いからな。対策されてないなら一方的に勝つ方法もあるし」
「【天使】より強い?」
「うーんそれはどっこいどっこいかな。タイプが違うからな」
「そうなの?」
俺はもう一押し必要だと思って畳み掛ける。
「エリサ、どうだ【悪魔】にならないか? そしてエリサが〈エデン〉に昇格してくれるととても嬉しいんだ」
「え、ええ!? えっと私が〈エデン〉に昇格すると嬉しいの?」
「姉さまだけずるいです」
「もちろんフィナリナもだ。2人とも〈エデン〉に昇格してくれるととても嬉しい」
俺がそう言うと、フィナリナはすまし顔で明後日の方を向き、エリサは見るからに頬を赤らめてニヨニヨしだした。フィナリナもよく見れば少し照れているのが表情から分かる。
「私が必要なのね?」
「ああ、エリサが必要だ」
俺はエリサの目を見て頷いた。
「はう。ご主人様と呼ばせてもらってもいい?」
「どうぞどうぞ」
「ちょっと、姉さま?」
フィナリナが姉にもの言いたげな目を向けるが、それくらい【悪魔】に就いてもらえるなら安いものである。
何の問題もない。
「その【悪魔】に就いたら身体が成長するとかはあるかしら?」
これは予想外な問いが来た。
「えーっと、それは分からないが、悪魔は確かにグラマラスが多い――」
「私、【悪魔】に就くわ! そして〈エデン〉に昇格するわ!」
「姉さまが悪魔に魂を売りました」
気がついたら片手の拳をグッと握ったポーズでエリサが宣言していた。
いや、本当に成長するかはわからないぞ、そういうイメージがあるだけだ、というか「子爵」って成長するのかな? そう思ったが口には出さず、せっかくのやる気に水を差す事もないので歓迎する事にした。
「私、悪魔っ娘美女になる!」
「よく言ってくれた! 一緒に頑張ろう!」
俺もその小さい肩に手を置いて歓迎したのだった。
美女? 美少女の間違いではないか? と思っても口には出さない。
「うん! 頑張るわ!」
こうしてエリサは俺の説得で【悪魔】に就くことに決め、無事にギルドに加入することになったのだった。
「……姉さまが前向きになったのなら、良かったですね」
フィナリナも【天使】として加入することになった。
よしっ、早速発現条件を満たしに行くとしよう!
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