第645話 上級職ランクアップ! ヘカテリーナ編!
続いてはリーナの番だな。
「次はリーナ、いいか?」
「もちろんですわ。ゼフィルスさんのお好きなようになさってくださいませ」
「いや、ちゃんとリーナの意見も聞くぞ? 俺が変な
「ゼフィルスさんがそんな事するはずがありませんわ。元々【大尉】に就いていた所をゼフィルスさんに【姫軍師】にしていただけたのですよ? わたくしはゼフィルスさんを信じております」
リーナの信頼が厚い!
おおう……、なんだろう、ちょっとドキドキする。
「む、私の時と反応が違うのは気のせいか?」
「思いにハートが籠もっているかどうかですよリカ殿」
「は、ハートか。よく分からないな」
「まあまあ、私たちは大人しく見守りましょう。上級職へ到る大事な儀式ですから」
「……そうだな」
なんかリカとシズがこっちを見てひそひそと内緒話をしていた。
リーナは少し頬を上気させながらも真っ直ぐ俺を見つめている。その目には強い信頼が見えるようだ。じゃあ、その信頼に応えないといけないよな。
「では早速だが、リーナに就いてほしいのは【
「【姫総帥】! 聞いたことがありますわ!」
俺の紹介にリーナが目を見開いて驚いた。
どうやら期待には応えられたらしいな。
能力的には【姫軍師】の完全上位互換。加えて陣を張るエリア魔法が使えるようになり、多くの種類のバフや、デバフも使えるようになる。相手の索敵や隠蔽などを破る対斥候スキルを保持するほか、看破系から妨害系、さらには全体移動速度上昇スキルなど、ギルドバトルで非常に有用なスキルを覚える集団戦指揮の最高峰の
特にユニークスキルがとんでもない。まあ、これはまた今度説明する。
「【姫総帥】。わたくしの家系でもほんの数例しか記録にない本当に最上級と呼ばれている
「ご存じなのです」
俺に知らないものはねぇ!
ばっちり【姫総帥】取りに行くわ!
「リーナは【姫総帥】でいいか?」
「もちろんですわ。異存などあるわけがございません。それにせっかくゼフィルスさんがわたくしのために選んでくださった
「お、おう。もちろんリーナの性格も加味して最も良いと思う
「ゼフィルスさん……ありがとうございます!」
「お、おお?」
俺が片目を瞑って親指を立てるポーズでキメると、リーナが感極まったのか笑顔いっぱいで抱きついてきた。
背中に手を回されふんわりと、そしてギュとされる。
瞬間、――『直感』が発動!
おお!? なんだかすごい柔らかいものが!? す、すごい重量感!
さらに、――『超反応』が発動!
思わずリーナの背中にも手を回し、なんだかお互いがギュっと抱き合う形になった!?
くっ、ここで動揺したら格好悪いぞ! 堂々とするんだと自分に活を入れる。
と、そこでこっちをジッと見つめる二つの視線に気がついた。
「これが、ハートなのか」
「熱いですね。こっちまで熱波がひしひし伝わってくるようです。これは後でラナ様にも報告しなければなりませんね」
「お、おいシズ、ちょっと待ってもらおうか?」
なんだか不穏なセリフが聞こえたので
これは見逃してはいけない気がしたのだ。
「あ、あら? リカさん、シズさん、見てましたの?」
「その、ばっちり」
「やだ、わたくしったら、はしたないですわ!」
リカが肯定しシズが頷くと、リーナがバッと手を離して下がった。ああ、ちょっと残念。
しかし、俺に背を向けて赤らめた顔を覆うリーナは、とても可愛かった。
その後はなんとかシズに釘を刺し、ラナへの報告は阻止することに成功した。
「そんなに慌てなくとも、次の〈
とのことだった。ふう。
もちろんシズには強力な上級職をプレゼントするぜ! でもその前に、リーナだ。
「リーナ、そろそろ次にいっても大丈夫か?」
「は、はい。その、ゼフィルスさん、いきなり抱きついてしまってすみません。わたくし、感情が高まってしまってつい……失礼いたしました」
「もちろんわかってるさ。テンションが上がるとよく起こるよな。そういうときはいつでも飛び込んできな。俺の胸でよければいつだって貸すぜ」
「も、もうゼフィルスさんってば、そんな事言って、本気にしますわよ?」
よし、ふざけるのもここまでにしておこう。なんだかシズの視線が怪しい気がするのだ。
「こほん。ではこれより発現条件の達成を行なう。とは言ってもほとんど達成してるからリーナは〈
【姫総帥】の発現条件で難しいのが特殊条件の①と②の達成だった。
しかしリーナはすでに①である〈40人以上規模の複数パーティを指揮し、『全軍一斉攻撃ですわ』を使用する〉という条件をあのクラス対抗戦でクリアしている。本来ならAランクギルドになって40人のギルドメンバーを揃えてからダンジョンでクリアする条件なのだが、こういう抜け道もあるのだ。
これがゲーム〈ダン活〉時代は結構見つからなかった。
〈複数のパーティを〉というのがネックでギルドバトルでは40人を揃える事は出来ても複数のパーティを1マスに揃える事が難しかった。複数のパーティを揃えてもバラバラに動くNPC 40人に『全軍一斉攻撃ですわ』を掛けることが難しく、条件が不明瞭だったのだ。
リアルではリーナの言うことを聞く忠実なパーティだったのでむちゃくちゃ簡単だったけどな。これもリアルとの差か。
もう一つの条件②だが、これもギルドバトル関係だ。〈ギルドバトルで
それで地図100%と言うのはもちろんそのままの意味だ。地図の完成度が100%になったということを意味する。
実はサターンたちとギルドバトル〈決闘戦〉をした日のことだが、時間終了まで数分というところでサターンたちを〈敗者のお部屋〉に送りほぼ決着がついたので、時間終了までフィールドのマッピングに精をだし、〈竜の箱庭〉完成度100%を達成していたりする。条件達成のために有効活用させてもらった。
サターンたちにはちょっとだけ感謝だな。
おそらく、リアルでは特殊条件②の達成が難しいんじゃなかろうか? ギルドバトル限定というのがネックそうだ。ゲームでは学園を舞台にしていたのでまったく問題無かったが、リアルでは卒業があるからな。卒業したらもちろんギルドは脱退だ、そういう関係の就職をしないと二度とギルドバトルをしなくなってしまうだろう。
条件が満たせるのが子どものうちとなると【姫総帥】が数例しか無いというのも分かるな。
「じゃあリーナ、準備はいいか?」
「はい。お願いいたします!」
リーナには〈
「【姫総帥】には〈天廊〉が必要だったのですね」
ワールドカップトロフィーに近く中心が螺旋階段のような形をしている〈
それを両手で受け取ったリーナがマジマジとそれを見つめながら言う。
この〈天廊〉はさっき言った【後陣の姫大名】や【姫総帥】など、指揮する立場の上級職に使われることが多いアイテムだ。
大体ゲーム1周につき1個くらい使う。しかし、何があるか分からないので俺は3つ確保しておいた。今のところリーナ以外に使う予定は無いけどな。
俺はリーナの言葉に頷く。
「それで条件は揃ったはずだ。使ってみてくれ」
「はい!」
リーナが〈天廊の宝玉〉を使うと、その輝きが増していき、そして粒子を撒き散らすようにして消失し、その粒子がリーナに纏わり付くようにして消えていった。
何度見てもこの幻想的な光景は良いものだ。
さらには続きがある。
「では【姫総帥】を取得しますわ!」
リーナが〈竜の像〉に手を置くとジョブ一覧が表示される。
当然のように【姫総帥】の文字が光り輝いていた。
リーナが迷わずそれをポチッと押しながら宣言するとズームアップされ、次に起こるのは〈上級姫職〉の演出だ。
エフェクトが溢れ、リーナを包み込み、幻想的な空間を演出する。
「あ、あわわ!? なんだか身体がふわふわしていますわ」
「大丈夫だ。しばらくしたら収まるからそのまま身を任せておくといい」
「うう、なんだか恥ずかしいですわね」
「いや、リーナは今すっごいキレイだぞ」
「私もそう思う。これが先ほど私もなったのだと思うと少し恥ずかしいが」
「はい。私もきれいだと思いますよ」
「みなさんまで」
どうやらリーナはこの演出が少し恥ずかしいようだ。
みんな見入っているからかな?
だが、本当にキレイなんだ。
それに〈ダン活〉プレイヤーとしては〈上級姫職〉の演出は何が何でも見なくてはいけないイベント。見逃すなんてとんでもない!
俺はしっかり目に焼き付けた。
次第にエフェクトが収まる。
「はふ、やっと終わりましたわ」
「お疲れ様リーナ。そしておめでとう、今日からリーナは【姫総帥】だ」
「あ、――はい!」
「リーナにはこれからも世話になるな。おめでとう」
「リーナ殿が味方であればこれほど心強いことはありません。〈
「ありがとうございますわ!」
リーナをみんなで祝う。
これで二人目の〈
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