第612話 打ち上げ開催! クラス対抗戦お疲れ様でした!




「ふはははは。ジーロンたちは情けないな。誰一人倒せなかったとは!」


「ふふ。ふふふ、そもそもあなたが通路を破壊しなければ」


「くっ、サターンめ、調子に乗ってやがるぜ」


「俺様を差し置いていい気にならないでもらおうか」


 ジョッキに新しいジュースを注ぎ、サターンたち〈天下一大星〉のいる場所に来ると、サターンが盛大にニヤけ、上から目線でジーロンたちを煽っていた。

 いつもの光景だ。


「よう、サターンたち、盛り上がってるなぁ」


「おうゼフィルスよ。分かるか? ふははははは!」


「ふふ、その高笑いが憎たらしいです」


 高笑いするサターンが上機嫌だ。

 その代わりジーロンたちは怒りマークを浮かべてサターンを見ている。


「ははは。ゼフィルスには感謝しているのだ。途中で退場したとはいえ1人で8人を倒せたのは大戦果だ。しかも連合の旗印であった〈51組〉リーダーを守る部隊をほぼ蹴散らした。あそこでジーロンが〈51組〉リーダーを討ち取れていれば最高の結果だったのだがな。情けないジーロンだ」


「! ふふふ、僕は誰かさんが要塞の道を破壊したせいで〈51組〉リーダーを討ち取るチャンスを逃したのですが?」


 腰に手をやり胸を張るサターンとそれに目をつり上げて抗議するジーロン。


 俺は後で知ったのだが、どうやらサターンは要塞攻略時、トマとヘルクがやられ、奇襲が失敗に終わるかというところで例の自爆を発動。リーナを守り、要塞を守る貴重な戦力を8人も討ち倒し、大きな戦果をあげたらしい。


 そこで「後は任せたぜ」とジーロンがリーナを討ち取っていたら完璧だったが、まあサターンだ。敵と一緒に要塞まで崩してしまい、ジーロンとリーナを分断してしまったらしい。

 おかげでジーロンは困惑している間に討ち取られ、こうしてサターンに引きつった表情で抗議しているというわけだ。しかし、情けなくも討ち取られた事実は否定できないためか、抗議の声を大きくできない様子。


 とはいえサターンの貢献は大きい事実は変わりない、そうして鼻が伸びきったサターンという状態が完成したわけだな。

 初戦での失態をサターンは挽回できたようだ。ジーロンは災難だったが……。


「ゼフィルスよ、最初あれを勧められたときはどうしてやろうかと思ったものだが、我はゼフィルスを信じていたぞ。ふははははは!」


「ま、役に立てたならよかったよ」


 こっちも在庫処分できたしな。まさか本当にあれを使うとは、しかも使って大戦果をあげるとは予想外すぎるぞサターンよ。


 俺はジーロンたちのこいつをなんとかしろという視線を軽くスルーして他のクラスメイトたちを巡るために去ったのだった。




「セレスタンとアランもお疲れ様だったな」


「いえ。僕が未熟なばっかりに4人も退場させてしまいました。反省すべき点です」


「はっはっは、なにセレスタンよ気にするな! 全ては我らの筋肉が鍛え足りなかっただけのこと、この機会にもう一度筋肉を鍛え直すさ!」


 セレスタンが率いる攻撃部隊(周りからは〈微笑みの筋肉部隊〉と言われているがなぜかは不明)は6人中4人が退場するという大きな被害を負っていた。先遣隊として危険な場所に多く挑んだためこの結果は仕方ない。


 しかし、攻撃部隊の副官としてセレスタンには自責の念があるらしい。いや、【筋肉戦士ネタジョブ】5人を引き連れた部隊を率いたにしては十分すぎる戦果なのだが? そう慰めたいがこの世界では【筋肉戦士】は優良職。優良職を5人も引き連れて4人退場というのは指揮官が悪かったのでは? と思われても仕方の無いことらしい。マジか。そんな解釈あるの? ねぇよ!


「セレスタンに責任は一切無い。セレスタンは最善を尽くしてくれたよ」


「ありがとうございます、ゼフィルス様」


 とりあえず、俺の素直な気持ちを伝えておく。今度はもっとバランスの良い部隊を率いらせてあげるからな。


 あと、視界の端で早速自身の筋肉について議論(?)している4人組がいたが、これは見なかったことにする。あそこには加わりたくない。筋肉よりステータス上げろよ!




「カルア、お疲れ様」


「ん、ゼフィルス、お疲れ様」


「おお? ゼフィルスか、クラスメイトを労っているのか?」


「ああ。リカもお疲れ様だ」


「うむ、ゼフィルスもお疲れ様」


 次に来たのはカルアとリカの所。

 カルアはジュースをちびちび飲んでいた。


「ゼフィルス、カレー、無い」


「教室でカレーは勘弁してやれ」


「無念……」


「後でたんと食わせてやるからな」


「ん、大好き」


 さすがに教室の祝勝会でカレーは匂いが勝ちすぎる。

 あとでたんと食わせてあげると約束した。

 初戦から決勝まで、カルアの斥候には助けられたからな。ご褒美に美味いものをご馳走してやろう。


 しかし、ここまでカレー大好きだとカレーに釣られて何かやらかしそうでちょっと心配。


「カルアはもう少しカレーに耐性を付ける必要があるかもな」


「うむ。しかし、どうやるのだ? カレーを抜きにしたらカルアが可哀想だぞ?」


「!?」


 リカも俺の考えに賛成のようだ。カルアはそんな俺たちを信じられないと言わんばかりの目で見ていた。


「大丈夫だ。カレー抜きとは言わないから」


「ん、信じてるから」


 お、おう。カルアの目が珍しくマジだった。

 いつもは眠たげな目をしているのに。この話題はあまり触れないほうがいいかもな。


 次は、シズたちのところへ行くか。




「みんな、お疲れ様」


「あ、ゼフィルス君! お疲れ様ー」


「ゼフィルス君来たー! お疲れー!」


「ゼフィルス君、優勝おめでとう。それとお疲れ様」


「ゼフィルスさんデース! 駆けつけ一杯、お酌するデース!」


「ゼフィルス殿も、お疲れ様です」


 サチ、エミ、ユウカ、パメラ、シズがいる所にお邪魔すると、テンション上げ上げな仲良し三人娘に囲まれて労われた。さらにはパメラからも新しいジュースを注がれる。

 ちょっと気分が良かった。

 ちなみにシズだけはいつものテンションだ。


 みんなの健闘を褒めて労いの言葉を送る。


 話を聞くとどうやら今回、大きな戦果を上げたシズに仲良し三人娘たちが寄ってきてキャピっていたらしい。

 シズは凄かったからなぁ。【戦場メイド】は〈城取り〉や〈拠点落とし〉ととても相性が良いのだ。それがピタリと嵌まった形だな。


 俺もたくさん労う。リーナの〈竜の箱庭〉に対抗しカルアを救出できたのはシズしかいなかった。

 さらにサターンたちを要塞に侵入させたり奇襲したり防衛したり爆破したり、そして最後は〈5組〉の幹部級メンバーを討ち取っての拠点まで落とした。週明けの授賞式では何かしらの賞が与えられるだろうと注目されている。


「シズはすごく良かったな。今後も頼む!」


「はい。おまかせくださいゼフィルス殿。ゼフィルス殿もくれぐれもラナ様を泣かせないよう、もし泣かせましたら、その場で討ち取りますから」


「え?」


 あれ? そんな話だったっけ?

 しかし、確かに〈城取り〉〈拠点落とし〉で惨敗したらラナが泣きそう。え? 敗北イコール討ち取られるの俺?


 まあいい。だって俺負けないからな!

 一瞬、驚いたが俺は自信を持って宣言する。


「任せろシズ。俺に敗北は無い! 今後もずっと勝ち続けるさ!」


「……頼りにしていますよ」


 うむ。

 さて、次は、シエラだ。




「お疲れ~」


「ゼフィルス。あなたもお疲れ様」


「あ、じゃあ私たち向こうのお菓子選んできますね~」


「ではまた~。ほらミューちゃんも行くよ~」


「にゅ~」


「ふう、まったくあの子たちは」


 シエラの所にはクラスメイトの女子が集まって居たのだが、俺が顔を出すとなぜかシエラを残し他のテーブルにあるお菓子巡りに旅立っていった。ミューはされるがままだな。引きずられていった。


 そうしてシエラと俺、二人だけが残される。

 そういえばもうすぐ祝勝会も終わりの時間だな。珍しいお菓子もたくさんあるためパクつきに行ったのだろう。シエラは静かにお茶を楽しむタイプだからな。


 シエラにも試合中の感謝と労いの言葉を贈る。


「シエラも最初から最後まで、皆を守ってくれてありがとうな。要塞攻めや最後の〈8組〉との会戦であれだけ被害が少なかったのはシエラのおかげだ」


 いやほんと。最後〈8組〉がユニークスキル合戦し始めたときはもう少し被害が出てもおかしくはないと思ったが、シエラが抑えてくれたおかげでこっちの被害は〈8組〉に比べてかなり少なかった。

 あの状況であれだけの被害で済んだのはシエラの活躍が大きい。


「要塞攻めの時もシエラが全力で守ってくれたから最後まで足並みを揃える事が出来た。助かったよ」


 第四要塞の要塞攻めではあまり目立たなかったが、実際はシエラの活躍は非常に大きいものだった。おかげで安心して少数精鋭で拠点を落としに行くことができた。

 俺は滑らかに賛辞の言葉を贈りまくった。


「やっぱシエラは最高だ。あの自在盾がむっちゃかっこいいんだよ。あのときだって――」


「んもう十分よ。わかった、ゼフィルスが感謝しているのは十分伝わったから、その辺でいいわ」


 なんだか気分が乗ってきてさらに言葉を紡ごうとした所で顔を赤くしたシエラに止められてしまったのは残念だった。

 しかし、俺の気持ちは伝わったようだ。良かった良かった。


 なぜか話が弾んでいる様子を、お菓子を取りに行った女子たちがチラチラ見てはこそこそ話していたのだが、あれはなんだったのだろう?




 そんな感じに決勝を振り返りつつ対策を話し合い、勝利の余韻に浸りつつみんなと労いあった。


 これまでの初戦、準決勝戦、決勝戦の賞品のうち、食べ物飲み物系は全部食べ尽くしたな。残りは今分配する雰囲気じゃないのでまた後日にすることにした。


 祝勝会は最後まで盛り上がりながら進み、楽しい一時を過ごした。


 いやあ、楽しい。

 ゲーム時代も楽しかったがリアルではまた違った楽しさがあって天井知らずだ。

 あの頃には無かった肌で感じる祝勝会。


 5日間のクラス対抗戦、みんなお疲れ様でした!




 第十一章  -完-


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