第611話 クラス対抗戦閉会! 次は祝勝会、打ち上げだ!
クラス対抗戦、〈戦闘課1年生〉の部。決勝戦終了。
終了と同時にあれやこれやと準備が進められ、そのまま表彰式が行なわれることになった。
第五アリーナでは、すでに山々は消え、元の平地に戻っていた。
中央には特設ステージが用意され、いつの間に現れたのか学園長ヴァンダムド・ファグナー公爵が中央に立ち、脇に数人の先生方が並んでいた。
試合が終了して、まだ10分も経っていないのだが、会場の熱が冷めないうちに早々にやろうという判断なのかな?
ぞくぞくと〈戦闘課1年生〉の学生が集まって来る。
とはいえ開会式の時のように全員を集めることはせず、決勝戦に出場したクラス以外はクラスの代表が出れば良いみたいだ。もちろん出たければ任意で参加可能らしい。
記念に参加する学生も多いらしく、会場内には計500人程の1年生が集まっていた。
ちなみに各クラスの代表はこのために決勝戦を見学しなければならないとか。なるほど、だからこうして迅速に事が運ぶわけだな。
先生方に促され、列を作って丁寧に並ぶ。
「これより、〈戦闘課1年生〉の表彰式を始める!」
学園長の声がマイクから会場全体に響き、表彰式が始まった。
「第一ブロック出場者、前へ」
クラス数が多すぎるのでブロックごと呼ばれる形らしい。代表者がステージを上り、学園長の前へと進む。
そこで賛辞が行なわれ、会場から拍手を浴びた。
ちなみに賞品はブロックが終わった時点で前もって貰っているのでここでは賛辞だけだ。
よく戦い、よく健闘したでしょう。そして1位と2位だけは表彰状をもらえる。
俺はしっかり背筋を伸ばし、勇者顔を作って受け取った。振り向くと会場中から拍手喝采が降り注いだ。やべえ、とても気分がいい!
次に貰った〈99組〉代表は、なぜかプルプル震えていたが、緊張だろうか?
そのまま初戦の第一六ブロックまで終わり、続いて準決勝の表彰に移る。
こちらでは先ほどの比ではないほどの拍手が送られた。賞品はもう受け取っているので1位と2位へ表彰状を渡す。
さて最後だ。
「最後に、決勝戦ブロックの表彰を行なう! 決勝戦出場者は前へ」
―――――わあああぁぁぁぁぁぁ。
会場のボルテージがまた一段と上がったぞ。待ちわびたと言わんばかりの拍手だ!
決勝戦ブロックに残ったクラスは本当に優秀なクラスだ。
準決勝までは、なんだか偶然勝ってしまったんだが? もありえたが、決勝まで残るクラスに偶然は無い。
そのため決勝戦出場クラスは注目の的で、本当に丁寧に祝われた。
呼ばれたクラスはステージ前にクラスメイト全員が出てきて観客席に向かい手を振ったりお辞儀をしたりしてアピールする。
大企業や各機関もこの学生たちが次代を引っ張る可能性がある若者であると分かっているため真剣に見定めている、気がする。学生たちも精一杯のアピールだ。
最下位の〈10組〉より順番にクラスが呼ばれていき、3位の〈3組〉には銅メダルならぬ銅のトロフィーが贈られた。
2位の〈8組〉も銀のトロフィーと表彰状が送られ、最後に俺たちのクラスが呼ばれる。
「決勝戦優勝、〈1組〉!」
瞬間、それまでの拍手や歓声が何倍もの大きさに膨れあがり爆発した。
すごい盛り上がりだ! ゲーム時代ではまず味わえなかった生の歓声、生の熱気。
そんな拍手と歓声が支配する空間を、肩で風を切りながら歩き学園長の下まで進む。
学園長の前に立つと、ありがたい学園長から表彰の言葉が、言葉が――あれ? 歓声でよく聞こえないぞ?
「〈1組〉は―――を達成し――優秀――1位を――――。国立ダ――――探索支援学園・本校、学園長ヴァンダムド・ファグナー。おめでとう、〈1組〉」
「……ありがとうございます!」
最初の方がよく聞こえなかったが俺は元気よくお礼を言った。大丈夫! 問題は無い!
振り向き、いただいた表彰状と金色に輝くトロフィーをじゃーんと高らかに掲げてみんなに見えるようにすると拍手の雨が再び降り注いだ! とても気分がいい!
優勝賞品は後で〈1組〉の教室に届けられることとなる。そうしたら分配だな。
こうして簡単にだが、表彰も終わり、俺たちのクラス対抗戦も幕を閉じたのだった。
さて、次は打ち上げだな!
そうしてクラス対抗戦の最終日が過ぎていき、最後に学園長のありがたい閉会のお言葉が放送で流れた夜。
俺たち〈1組〉は再び教室に集合していた。
「みんなジョッキは持ったな以下略! 昨日もやったが今日もやるぞ祝勝会! 〈1組〉優勝おめでとう! かんぱーい!!」
「「「かんぱーい!」」」
テンション高らか過ぎる俺の挨拶に誰一人として置いていかれる事も無く乾杯の音頭は取られた。さすが〈1組〉のクラスメイトだぜ。あの戦いについてこられるだけはある。
まずはグビッと1杯だ!
今日のジュースは特別! なんとあの高級アップルジュース〈芳醇な100%リンゴジュース〉である。とある偉い人が優勝祝いにって賞品に入れてくれたらしい。マジで感謝だ。
相変わらず目が覚めるほどの美味さ!
「美味し~い!」
見ろ、ラナがとっても緩んだ良い笑顔で美味しい言ってるぞ。
それを見守るエステルも表情が蕩けている。
蕩ける気持ちも分かるぜ。ラナのその緩んだ表情は本気で美味しくて幸せと思っていることが伝わってくるんだ。このラナの表情を見つめるだけでジュースの味がさらに美味しくなった気がする。
と、そこでラナと目があった。瞬間、沸騰するように赤くなるラナ。
「ちょ、ちょっとゼフィルス何見てるのよ、恥ずかしいじゃない!」
「あ、気付いちゃったか」
「ゼフィルス殿もまだまだですね。見つめるにしてもそんなガッツリ見てはいけませんよ」
なぜかエステルが
いったいエステルは何を目指しているのだろうか。ちょっと気になるぞ。
でもラナをいつまでも見つめていたい気持ちはなんとなく分かる。
「ゼフィルス君、これ美味しいね! おかわりは無いの?」
そこに話しかけてきたのはミサトだ。
最後の最後で退場してしまったミサトだが悲壮感などは皆無で、この祝勝会を心から楽しんでいる様子だった。
しかし、おかわり? そんな贅沢はない。
「残念ながらおかわりは無いな。というかおかわりがあったら大変なことになりそうだったから全部使い切った」
「むう、残念。もうちょっと味わって飲めばよかったよ~」
ミサトのジョッキはすでに空だった。乾杯のテンションから一気に飲んでしまったらしい。おかわりが無いと聞いて残念そうにしていた。後ラナも。
大丈夫だ。これから少しは余裕が出来るし、〈エデン〉で取りに行くことも出来るだろう。
こっちには〈オカリナ〉があるのだ。ふっふっふ、このジュースを乱獲してやるぜ!
ということでミサトやリンゴジュースを飲み終わった人にはその辺のジュースを注いでやり、決勝戦の話題で盛り上がった。
「それにしてもラナ様を狙うとは、メルト殿とは一度しっかり話さなくてはいけませんね」
「まあまあ、間に合ったんだしいいじゃないか。ボコボコにしたの見てたぞ?」
「ええ。やってやりました」
最後の会戦の話だ。
メルトは後方の回復役、ラナを倒そうと伏兵を仕掛けていた。
まあ、その狙いはとても正解だ。ラナさえいれば俺たちが会戦で負ける可能性はかなり低い。メルトがまずラナを倒しに行くのは当然の行動だった。
俺だって同じ状況ならラナを狙いに行く。
だからこそラナの元へ行かせないよう、抜けさせないように色々と配置やタイミングをセッティングしていたというのに、まさか拠点をがら空きにしての伏兵配置とは。
メルトの度胸に恐れ入る。
まあ、ラナを守るシズが奮闘している間にエステルが間に合い、伏兵3人を見事にボッコボコにして全員退場させちゃったがな。エステルの強さを垣間見たぜ。
結局ラナは倒せず、メルトたちも全滅して終了してしまったが狙いは良かった。
さすがはメルトだぜ。あとでしっかり反省会をしよう。
あとエステルの話し合いが本当に話だけなのか物理なのかは知らない。
ガンバレメルト。
そうやって先ほどの試合を全て振り返る。
良い試合だった。
全員が〈戦闘課〉所属だったのにこんなに濃い〈拠点落とし〉が味わえるとは思っていなかった。俺は大満足である。
祝勝会はまだまだ始まったばかりだ。語りたいこともいっぱいある。
次はあの高笑いしているサターンたちの下へ行ってみるかな?
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