第575話 ムテキンニクと要塞を襲う光の宝剣!
「ぬう! 我らの筋肉でも壊れないか! その出来、見事である! しかし、我らの筋肉はこんなものではない! 皆の者! もう一度だ!」
「「「「応!!」」」」
第四要塞の向こう側がパニックになっているころ、そんなことはお構い無しに自分たちの〈筋肉ビルドローラー〉を受け止めた要塞を睨みつける〈マッチョーズ〉たちは、五人十脚の態勢のまま20歩ほどバックした。なんともシュールな光景。
しかし、どんな練習を積んだのか、あの態勢でバックしても倒れない〈マッチョーズ〉。
そして、再度突撃の姿勢に移る。
それを見たリャアナ、青くなった顔色がさらに血の気が引いて白くなる。
「と、止めなさい! なんとしても止めなさい!! 第四要塞が破壊されれば拠点が危険だわ! 打って出てでも止めるのよ!!」
「筋肉ビルドローラーを相手に!?」
「轢かれちゃうよ!?」
「そうよ! 筋肉ビルドローラーをなんとしても止めるの!」
「骨は拾ってあげるから! 男子は急いで!」
「いやいやいや!? く……くそう! こうなりゃ
まるで特攻を命じられたと感じた男子が首を横に振るうが、さすがに裸族マッチョの相手を女子に任せるのはただ被害が増すだけだと思いなおし、自棄になって特攻を選択する。
「うおおりゃぁ!!」
〈筋肉ビルドローラー〉に轢かれないよう側面から切り込んだ。しかし、
「ふん!」
五人十脚の端にいたマッチョが気合をいれ、
当然剣は筋肉を傷つけることも出来ずに弾かれた。
「うおわああ!?」
弾かれた剣士がたたらを踏みながら下がった。
先頭の剣士を追うようにして要塞から飛び降りてきた男子たちが今の光景を見て動きが鈍る。
「みんな! 今こそ我らの筋肉を魅せるときだ!」
「そうだ! 俺たちはこのときを待っていた!」
「見よ! そして知るのだ! 筋肉の偉大さを!」
状況を見て戦法を変えたギルマスの指示で筋肉たちが筋肉合体を解除する。
そしてアランを中心に筋肉たちが集まった。
「これぞ筋肉の美の骨頂! 受けよ秘技――」
「「「「「――〈集団・マッスルポーズ〉!!」」」」」
五人の筋肉たちがボディビルダーのようなポーズを取って筋肉を盛り上げ、敵を威嚇した。
「ぐおお!?」
「な、なんだ身体が動かん!?」
「こ、怖い!!」
「ひいぃぃぃぃ!?」
筋肉集団による筋肉威嚇だ。
男子たちは誰もが身を
信じられるか? これスキルの力じゃないんだぜ?
人はあまりに盛り上がった筋肉を見せつけられると、恐怖に身が竦むのだ。
「ふん!!」
「ひいぃぃ!?」
筋肉が盛り上がるたび男子の悲鳴が飛ぶ。
数は要塞組が圧倒的有利なはずだが、戦況は完全に〈マッチョーズ〉たちが押していた。
誰もあの筋肉に飛び込めない。
飛び込めばどうなるか分からない。
飛び込んだが最後、もみくちゃにされる光景が頭をよぎるのだ。
そして、おそらくトラウマを植えつけられて戻ってくるだろう。
いや、戻れないかもしれない。
筋肉たちが残した数々の逸話は、噂を聞いただけで半信半疑だった一年生にもしっかり身をもって分からされていた。
そして
―――ドォォォォッン!! ドドドンッ!!
「きゃあぁぁぁ!?」
「な、いったい何!? 何あの光の剣!?」
「どこから来たの!?」
「大変! 1人巻き込まれて退場したわ!」
「増援!? 『索敵』!」
要塞のHPがガクッと減る。
急に四つの宝剣が要塞に突き刺さり、唖然とする女子たち。
すぐにどこから攻撃されたのか索敵するが、反応はまったく無かった。
「リャアナ隊長! 索敵に引っかかりません! 増援、発見できません!」
「そんなことあるわけ無いでしょ!?」
宝剣によって受けたダメージを見るに、威力の減退がされて無い事は明らか、身を隠していたとしても、マス内にいるはずだった。なのにスキルでも目視でも発見できない。
混乱している間に戦況はどんどん進む。
要塞と〈マッチョーズ〉、二つのことに目を引かれ、下の男子たちが慌てだしたのだ。
「おい、どうすればいいんだ!?」
「俺ならすぐに動けます! 〈マッチョーズ〉ですか!? 要塞を撃った者に行けばいいですか!?」
「索敵担当は何をしていたんだ!」
混乱が場を渦巻く中、セレスタンが陰から迫る。
「目を惹かれる気持ちは理解できますが、がら空きです。――『ストレートパンチ』!」
「な!? ぶぎゃらばぁぁ!?」
セレスタンの『ストレートパンチ』を受けて男子の1人が吹っ飛び、要塞の壁に当たってダウンした。
〈マッチョーズ〉が先行したあと、身を潜ませながら追随していたセレスタンが、混乱して動けなくなった男子を強襲したのだ。
これにより、ギリギリで勇気を振り絞って筋肉に拮抗していた男子たちはさらに混乱に拍車がかかってしまう。ゼフィルスの指示を、セレスタンは忠実に全うした。
「うわああ!?」
「た、助けてくれー! 筋肉が怖いよぉぉ!!」
「――『手刀』! まだまだでございます――『ノッキング』!」
「!! し、痺れレレレ!?」
「みんなお、おちつけ! 冷静に、みんな冷静に対処を!?」
「冷静に混乱を収めようと行動するとは見事です。しかし、ご自分の身が疎かになっているかと――『バトラー・オブ・フィスト』!」
「ぎゃあああ!?」
セレスタンが敵集団に突撃してかき乱す。
さすがに退場させるには相手の数が多すぎて難しいが、目的はそれではない。
セレスタンを迎撃しようと全ての目が筋肉から離れたとき、恐怖の掛け声が響く。
「筋肉!」
――ガシャン。
「筋肉!」
――ガシャン。
「「「「「〈筋肉ビルドローラー〉!!」」」」」
今度は筋肉たち全ての叫びが響き渡り、同時にギョッとした男子たちが振り向いた。
しかし、その時はすでに手遅れ。
再び発動した〈筋肉ビルドローラー〉が要塞へ向かって加速する。
「ま、待て待て待て待て本当に待って!?」
「ここには倒れている者がいるんだぞ!?」
「とにかく止めろ! 守れ!」
セレスタンによって〈気絶〉や〈麻痺〉にされ倒れている者もいた。要塞と筋肉の直線上に。
このままでは〈筋肉ビルドローラー〉に轢かれてしまうと全力で筋肉たちに遠距離攻撃を連打する男子。要塞からは女子たちも迎撃に攻撃を放つが、それでも筋肉は止まらない。
10歩で最高速までいった〈マッチョーズ〉は五人六脚のまま要塞まで突っ走る。
「ひぃ、もう無理だー」
結局筋肉を止められなかった男子たちが緊急離脱で〈筋肉ビルドローラー〉の進路から安全地帯にダイブするように飛び退く。
「あー!?」
そして逃げ遅れた者は轢かれた。そして3名ほど退場していった。
「ダメ!? みんな、衝撃に備えて、どこかに掴まってぇぇぇ!!」
リャアナが叫び、自分も手すりに飛びついた直後、〈マッチョーズ〉が第四要塞に激突。
――ドッッッゴーン!!
再び衝撃。
さらにどこからともなく光の宝剣と、光の宝樹が要塞を襲う。
要塞のHPが5割を切った。
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