第554話 準決勝戦終了。決勝戦進出クラスが決まったよ!
試合のブザーが鳴り、試合終了の知らせが飛ぶ。
意外な結末にメルトは腕を組んで頷いていた。
「あー。なるほど、そうなったか……」
その言葉にレグラムも頷く。
「試合終了の時間から見て、そろそろ他のクラスへの配慮はいいだろうと判断したのか?」
動かないと思われた〈1組〉が動き、〈18組〉を落としての決着。
最後は〈10組〉と〈18組〉が争う形になると予想していた2人には意外な展開であったが、考えてみれば納得の行く答えでもあった。
〈1組〉が動かなかったのは他のクラスが活躍する場を設けるため。
そして〈10組〉〈18組〉が大きく動き〈6組〉と30分も戦ったのだ。活躍の機会はあった。配慮は十分だろう。十分かな? 多分十分だ。うん。
「それに、ゼフィルスがこのまま終わるはずがなかったな」
「そう言われてみればそうだったな。このまま〈10組〉と〈18組〉が争い、決着がつけば、点で〈1組〉を超えてしまう可能性もあった。さすがにゼフィルスがこのまま終わるわけがないか」
2人の脳裏には目を輝かせて〈拠点落とし〉を楽しんでいるゼフィルスの姿が映っていた。
ゼフィルスは言うだろう。「楽しむのなら1位を取らないとな!」と。そんな姿がハッキリ見えた。まだ加入して日の浅いレグラムですら脳裏に浮かぶのだからその考えに間違いはない。
「展開的には窮地に陥った〈6組〉が〈1組〉に助けを求めた形になったが、絶対ゼフィルスは様子を窺っていたに違いない」
「違いないな」
メルトの言うとおり、後半の展開はこのままでは敗北すると悟った〈6組〉が〈1組〉に救援を求めるという展開になった。
これは普通受けないだろう。勝ち抜けが決まっているクラスがわざわざ隙を作る行動をするわけがない。が、あくまで普通なら、である。まあゼフィルスだし。
これを活躍の機会と見た〈1組〉は即座に動いた。楽しむ気マンマンというのがメルトとレグラムには透けて見えていた。
そうして〈18組〉の拠点を急ぎ強襲。なぜ〈18組〉を選んだのかは、おそらく〈18組〉の方が〈1組〉の拠点に近かったからだろう。〈10組〉の拠点は結構遠い位置にあった。
どちらか一クラスが退場すれば〈6組〉が巻き返すことは可能(?)、という狙いだったのだろうが、すでに厳しい状況に追い込まれていた〈6組〉が先に退場。
そして狙っていたわけではなかったのだろうが、〈4組〉を落とした〈6組〉、それを落とした〈18組〉、計三クラス分の点数を〈1組〉が全部持っていってしまった。
それがあの2400点を超える点数だ。
ちなみに、前回を超える形で学園歴代でも最高点だったとか。再びレコードに刻まれていた。
また〈10組〉の95点は全て防衛モンスターで稼いだ分である。30分も〈6組〉を攻め立てていればそのくらいは貯まるのだ。
ここで〈1組〉が手を出さず、〈18組〉か〈10組〉がどちらかを落としてしまうと、防衛モンスター次第では〈1組〉の点を超え、1位になってしまう可能性があった。それを許すゼフィルスではなかったようだ。
「さて、第一七ブロックも終わったし、次は第一八ブロックか」
「俺たちの試合だな、とはいえまだ開始予定まで3時間近くあるが、メルト、どうする?」
「じゃあ、第七アリーナでバトル中の第一九ブロックを見に行こう。リーナの戦法も気になるし、他のどこが勝ち上がってくるのかも気になる」
「ですね。決勝で私たちと対決するかもしれませんし」
「あ、あんまり強いクラスは来ないでほしいです」
メルト、レグラム、ノエル、ラクリッテが、次の試合の感想を言い。
勝ち抜いた〈エデン〉メンバーと合流してそのまま第七アリーナへ移動。第十九ブロックを観戦しにいったのだった。
ちなみに一年生の準決勝は午前中は第六アリーナで第一七ブロックが、第七アリーナで第一九ブロックが試合をしている。
午後には第六アリーナで第一八ブロックが、第七アリーナで第二十ブロックの試合が行なわれた。
そうして本日の試合も終了。
決勝の進出クラスが発表される。
第一七ブロック。
一位〈1組〉、二位〈10組〉。
第一八ブロック。
一位〈8組〉、二位〈9組〉。
第一九ブロック。
一位〈51組〉、二位〈12組〉。
第二十ブロック。
一位〈5組〉、二位〈3組〉。
準決勝戦はこうした結果に終了し、
決勝戦で戦うクラスの進出が決まったのだった。
決勝戦ブロック〈戦闘課1年〉。
〈1組〉〈3組〉〈5組〉〈8組〉〈9組〉〈10組〉〈12組〉〈51組〉。
◇ ◇ ◇
木曜日の午後、俺は第六アリーナの特大スクリーンに表示された決勝戦ブロックの表を見ていた。
いや、俺だけじゃないな。この観客席にいる人たちすべてが注目していた。
ざわめき、時々喧騒や歓声が聞こえてくる観客席。誰もが俺のようにワクワクを隠せないようだな。
実況席からも先ほどから熱いトークが止まない。よくあれだけしゃべれるなと感心する。
だがあのテンションの高さには共感するものがあるな。
「いやぁ。勝ちあがってきたなぁ。メルトたちもリーナも。むっちゃ楽しみだ!」
俺がしみじみと、いやニコニコとしながら言うと、隣にいるシエラが横目で見てくる。
「相変わらずあなたは楽しそうね」
「おう! せっかくのお祭り――もといクラス対抗戦だもんな、楽しまなきゃ損だぜ」
お祭りはー! わっしょいわっしょい楽しむんじゃい!
「準決勝もいやあ楽しかったぜ。この気持ち、分かってくれるか?」
「それが楽しめるのはゼフィルスだけよ、っと言いたいけど、私も楽しかったわよ!」
「だろう?」
シエラと反対の席にいるラナが共感してくれるので俺も笑顔で頷いた。
席の後ろからもはしゃいだ声が聞こえてくる。
「やっぱり〈8組〉が1位だったね」
「うん。さすがノエルっちとラクっちのいるクラスだよね」
「メルト君にレグラム君もいるからねあのクラスは。絶対1位で抜けてくると思ってた」
後ろの席にいる仲良しサチ、エミ、ユウカもわいわいはしゃいで楽しんでいるようだ。
見ろシエラ、強敵が勝ち上がってきたのにわいわいしているだろう? 俺だけじゃないんだ。
そんな俺のどうだという視線に、シエラはジト目で返してくる。
「もう、その〈8組〉も今回は敵なのだけど?」
「いいじゃないか。こういうのも面白いぞ?」
きっと楽しい決勝戦になる。
俺が良い笑顔で告げるとシエラが仕方ないというようにため息を吐いた。
あと、強敵と言えば〈8組〉だけでは無い。リーナの〈51組〉も忘れてはいけないだろう。
「しかし、リーナのクラスはビックリだったな」
「……本当ね。あれが〈竜の箱庭〉を使った戦術なのね?」
「ゼフィルス、あれ本当に貸して良かったの? 凄く強いわよ?」
俺たちの試合の後、メルトたちと共に見に行った一九ブロックで、リーナのクラスは〈竜の箱庭〉を使っての圧倒的とも言える戦術を披露していた。
結局試合は2時間50分で〈決着〉(残り1時間9分21秒)。
〈51組〉が1620点。〈12組〉が866点で終わっていた。他のクラスは全て退場だ。中位職クラスのまさかの大活躍に会場は大盛り上がりだった。
ちなみにリーナは準決勝戦で〈竜の箱庭〉を初披露したらしく、その力を見て、なんだか凄く焦っている者たちもいた。あれは決勝で当たる人たちだったのかな?
しかも、〈51組〉はまだまだ余力を残している様子だ。決勝戦にはまだ何か隠し球があると見ていいだろう。何しろリーナが相手だ。〈1組〉に勝つ作戦をしっかり考えてくるだろう。
「問題無い。ちゃーんと〈竜の箱庭〉対策は考えてあるさ」
俺はそう言って胸を張る。リーナが〈1組〉対策を考えているように俺だってリーナ対策を考えている。
ああ、明日は決勝戦。
楽しみだな~。
―――――――――――
後書き失礼いたします!
応援コメントではブックウォーカー様の電子書籍先行配信のご購入報告をたくさんいただきました! ありがとうございます!
この場を借りて深くお礼申し上げます!
これからも書籍化活動も含め、執筆を頑張っていきます!
さて、ようやく章の前半が終わりました。
おかしいな。当初20万文字くらいを想定していたのに今の時点で15万文字近い……。決勝は初戦の倍くらいの文字数になる予定だったのにこれはいったい……?
加筆で文字数が倍になっていく不思議を体験中。
とりあえず後半も頑張ります! 明日からはクラス対抗戦最終日!
最初は謎の〈12組〉から! 期待していてください。
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