第525話 第一ブロック〈拠点落とし〉開始!




 第一ブロック〈クラス対抗戦〉が開始された。

 その直後、俺たち〈1組〉はシェリアとラナ、シエラを拠点に残して他全員が外へと飛び出していた。全員で打ち合わせどおりに動く。


 何事も初動が大事。

〈拠点落とし〉は競争が少ない分〈城取り〉よりかは初動に熱を上げなくても良いのだが、大事であるのには変わりない。


 防衛担当は防衛ラインの構築を早速始める。

 俺たちの拠点があるのは北西付近の端に近い部分で、山脈とアリーナの角に囲まれている環境にある。防衛に適した地形だ。

 ここに侵入するための通路は2箇所。南と東、いずれも道幅が1マスしかない細く限定された通路しかないため防衛がしやすい。


 ラナ、シエラ、シェリアは遊撃と拠点防衛だ、さすがに拠点を空にするわけにはいかないからな。



 そして俺たち攻撃担当は、まず東へ向けて駆けだしていた。


「カルア、探知頼む!」


「ん。『ソニャー』!」


 まず俺たちがすべき事は相手の拠点がどこにあるかを把握することだ。

〈1組〉はどこのクラスよりも早く拠点の位置を選ぶことが出来たが、その分他の拠点の位置は分からず、スタートダッシュに差が出る。


 故に探知持ちの運用が重要だ。


 問題なのが、探知持ちはクラスに少ないという点だな。

〈天下一大星〉の4人は純戦闘職だし、筋肉は論外だ。筋肉探知? そんな言葉は存在しない。

 他5人の女子もほとんど純戦闘職だ、攻撃スキルばっかり取っていたため探知系は持っていなかった。


 探知で戦力になりそうなのは【ハードレンジャー】のミュー、【スターエージェント】のカルア、【バトラー】のセレスタン、【戦場メイド】のシズ、【女忍者】のパメラ、【魔弓士】のユウカの計6人だ。


 防衛に半数は残しておきたかったのでミューとシズ、ユウカには残ってもらい、攻撃担当にはカルア、セレスタン、パメラの3人が同行している。


「ん、あっち、反応あり、大勢。でもあっちも、少し反応あるかも」


 カルアは山脈に向けて指を刺す、大きな反応を捉えたようだ。そして東のほうにも少し反応があるという。東のほうは斥候か何かかな? まだ試合は始まったばかり、人がいるという事は、近くに拠点があるということでもある。


 俺はすぐに振り分けを決めた。


「よし、二手に分かれよう。セレスタン、〈マッチョーズ〉、そっちは任せてもいいか?」


「お任せください。では我々は東を担当いたします」


「んじゃ、俺は南だな。セレスタン、〈マッチョーズ〉、任せたぞ」


「この筋肉に誓って任務をこなそう」


「お、おう。頼むな。〈天下一大星〉は俺と一緒に南だ」


「ハッ、腕が鳴るな!」


 みんな気合いは十分なようだ。

 拠点を把握するのがメインだが、別に一当てしても構わない。

 しかし、退場するのだけはダメだ。〈拠点落とし〉に敗者復活のルールは無いからな。

 一応釘を刺しておこう。


「別に対人戦を仕掛けても良いが、負けることは許されない、肝に銘じとけよ」


「任せておけ! この筋肉で全てを蹴散らしてくる!」


〈マッチョーズ〉リーダーが自分の筋肉を唸らせる。大丈夫か? いや、大丈夫だな。筋肉だし。(?)


 ちなみに〈マッチョーズ〉たちは現在ちゃんと服を着ている。

 いやちゃんとかは少し自信無いが、しかし裸族はダメだ。とても他の女子たちには見せられない。故に、戦闘が起こるまで装備を羽織るよう厳命しておいた。

 そして今の〈マッチョーズ〉5人は、揃って裸の上から毛皮を羽織り、外しやすいよう下には腰蓑こしみののような物を付けていた。どこの蛮族だろうか? 

 本当に同級生、どころかクラスメイトなのかと疑ったのは内緒だ。


 セレスタンと〈マッチョーズ〉5人、計6名はそのまま東に向かい、残りの〈天下一大星〉4名と〈エデン〉6名は山脈を回りこむように南へと向かう。


「ん。あそこ」


「ずいぶん近いところにあるな!」


 すると早速拠点を1つ発見する。

 なんと俺たちの拠点が背にしている山脈、その反対側に拠点があったのだ。

 直線距離にしたらむっちゃくちゃ近い距離である。勇気あるな、どこのクラスだろう?


「どうするゼフィルス。やるか!?」


 サターンが確認してくるのに俺は軽く頷いた。


「まだ防衛ラインの構築も済んでいない。準備が全然だな。よし、一当てしてみるか」


 俺は即断する。

 相手がどこのクラスかは知らないが、見たところ準備が全然なっていない。

 何しろ拠点の位置がハッキリ露見してしまっているのだ。

 こんなにあっさり判明している時点で準備不足が否めない。


 俺たち〈1組〉以外、つまり他のクラスは相手の拠点の位置を少なからず把握している。

 しかし、逆に数字が若い〈1組〉や〈2組〉からはその拠点の位置が分からないのだ。

 これを活用しなくてどうする。

 数字が大きいクラスは、拠点をいかに見つからないように隠蔽するかが重要となるのだ。

 こんなにあっさり見つかってはいけない。攻撃してくれ、襲ってくれと言っているに等しい。


 まあ、相手は初心者だからな。仕方ない部分もある。


 さすがにこんな初っぱなに落とすのは可哀想だし、一当てするくらいで去るつもりだ。

 スタートダッシュの時間も貴重だからな。他の拠点の場所把握もしなくてはいけない。あまりここで時間を掛けてはいられないのでヒットアンドアウェイで立ち去ろう。


「狙いは防衛モンスター! 点だけいただいてから南へ向かうぞ! 〈天下一大星〉は前へ出ろ!」


「「「「おう!」」」」


 走りながら指示を出すと、サターンたちが前に出る。

 前にヘルク、その後ろにジーロン、トマ、最後にサターンという陣形をすぐに構築する。

 この辺は俺が鍛えまくったからな。さすがに早い。


「うはぁ。みんな気合い入ってるねぇ。久しぶりのチームだけど回復と結界は任せてね!」


 ミサトがのんきにそんなことを言って付いていく。


 目の前の拠点ではやっと俺たちに気がついたのか、学生たちが慌てたように走り回っていた。


 ふふふ、リアル〈拠点落とし〉で〈クラス対抗戦〉。そしていよいよ初バトルだ。

 たぎってきたー!



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 後書き

 近況ノートに添付で図を貼り付けました!こちらからどうぞ↓

 https://kakuyomu.jp/users/432301/news/16816927860207136986


 明日は〈1組〉が攻め込んでいるクラス視点からお送りする予定です。



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