第505話 試運転は終了したけど…、帰り道が分からない。
エステルの試運転がある程度終わった後、カルアも上級職になった
「―――」
「プビィ……? ―――プギャ!?」
その辺を跋扈していた〈ソードブルオーク〉が何かに気がつき辺りをキョロキョロしたかと思うと、いきなり悲鳴を上げてエフェクトに消えた。
「……ぶい」
無音で隣に着地したカルアが俺に向けてVサインをキメる。
今の〈ソードブルオーク〉が気づかれないままやられたのはカルアの仕業だった。
「……カルアは隠密性もそうだが、暗殺力がむちゃくちゃついたな!」
「静かに後ろから、高速で駆けて斬る。そのまま去る」
「気が付いたときには斬られている。切り捨て御免、無念なり~てな」
「無念なり……」
そういうのもアサシン的なものもかっこいい!
シエラやエステルとは別のロマンを感じるぜ。
どうやらカルアも【スターエージェント】を気に入ったみたいだ。ついでに無念なりのフレーズも。
気に入らないはずが無いな!
カルアの新しい
【スターキャット】の時は斥候系、探知系が主で、罠突破スキルなどで罠を無視することが可能だった。
しかし、【スターエージェント】はそこに『悪路走破』、『無音走り』、『音無し斬り』、『格下は敵じゃない』などが加わり、上級の過酷な環境下でも超スピードで行動可能な他、敵に気が付かれない隠密性を持ち、ザコ敵であれば相手が気が付かない間に斬り捨てることも可能だ。
ちなみに、最後の『格下は敵じゃない』はエンカウントをカットするパッシブスキルだな。
格下のダンジョンなどに行ったとき、エンカウントが
リアルではモンスターに気が付かれる前に格下へ攻撃すると、確殺補正が乗るらしい。
そう変わるのか。あ、暗殺っぽい。
また、スピードも健在でAGI特化構成に加え回避性能が上昇し、敵の攻撃はかなり当たり難くなっている。移動速度だけじゃなく、攻撃速度も上がっているのでエステルとの勝負は手数の差でカルアが勝ったみたいだな。
「カルア。もう一度お願いします」
「ん。受けてたつ」
「今度こそ、装備の性能を引き出して見せます」
どうやらエステルの心に火が付いたみたいだ。珍しい。
二人ともいい刺激になっているみたいだな。
そうしてもう何度か、どっちが多く狩れるかよーいドンがされ、結局7:3でカルアが勝利する結果に終わった。
「うーんまだまだですね。もう少しいける気がしたのですが」
「ま、
「ん、ぶい」
「はい。ゼフィルス殿、ありがとうございます。――カルアも、またやりましょう」
とりあえず、カルアとエステルの勝負はここまでのようだ。
またやろうと約束を取り付けているところからすると、エステルはこれを気に入ったらしいな。
「よし、一通り試したし、今日は戻るか」
「ん」
「うん。帰ったら早速錬金するね!」
「そうですね。……それはそうと、ラナ様とシエラ殿はどこでしょう?」
エステルの発言にカルアが「ん~」と首をかしげた。
どうやら分からないらしい。結構ジグザグに走ってきたからな。
エステルも、今更ながらキョロキョロと辺りを見渡していた。
しかし、ここは初めて来たところだしな分からないだろう。最終的にエステルが助けを求めてきた。
「ぜ、ゼフィルス殿。申し訳ありません」
「ま、次から気をつけてくれ」
護衛なんだから、という言葉は飲み込む。そういえば連れ出したの俺だった。
とりあえずそれは気がつかなかったことにしよう。
しかし、すぐに教えるのもなんだ……。確かに俺なら地図は頭に入っているし、今どこにいるのかも分かるし、なんならラナやシエラと別れた場所も分かるし戻れるが、俺がいなかったとき同じことが起こると心配だ。
そんな時に使うアイテムがあるので、ちょうど良い機会だからご紹介したいと思う。
「そういう時はあれを使うといい。――ハンナ、〈
「あ、了解だよゼフィルス君。えっと――あったあった、はい!」
「これは?」
ハンナが取り出した物を見てエステルがきょとんとする。
「こいつの名は、〈
「私が〈猫ダン〉で開けた〈金箱〉の中に入っていたんです」
ハンナの言うとおり、こいつを引いたのはハンナだったな。
普段はハンナが採取などをする時に使っているらしい。
〈
「こいつを使ってシエラの持つ〈月猫の指輪〉を探知する。一度触れて登録したものは探知可能なんだ」
こんなこともあろうかとシエラの〈月猫の指輪〉は一度この〈
ちなみに〈
盗むモンスターはダンジョン内にランダムに根城を作り、そこに装備やアイテムを溜め込むので一度盗まれて逃げられると取り返すことが難しい。
まあ、逃げるスピードはかなり遅いので知っていれば逃がすことはまずありえないが。
だが、万が一盗まれたときはこの〈
閑話休題。
「んじゃ、早速起動してみるか――〈月猫の指輪〉を探してくれ」
ゲームの時は選択式だったが、リアルでは音声入力だ。俺の言葉に〈
「か、可愛いですね」
「ん、可愛い」
「可愛いです」
見慣れていなかったエステルが目をキラキラさせ、カルアは触りたそうに〈
『にゃーん……。にゃーん……』
「お、見つけた。あっちだな」
〈
とりあえず触ったり使ってみたそうなエステルとカルアにかわりばんこに使わせてあげながら、俺たちはシエラたちと合流するために歩き出したのだった。
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