第503話 上級職の試運転、ラナ編とエステルの装備。
「『守護の
ラナが唱えた魔法が全体の防御力を底上げする。
『大加護』系。これは以前ラナが使っていた『加護』の上位バフにあたる。
バフで全体に強化を乗せる事が出来る、バッファーの基本魔法。
しかし、この『大加護』は【大聖女】に就いたことで新しく獲得した魔法ではない。
なんと以前の『加護』系魔法が進化して『大加護』となっているんだ。
これは【大聖女】のスキルの一つ、『大いなる加護の恵み』というパッシブスキルの効果で、〈『大いなる加護の恵み』のLV以下の『加護』は『大加護』に変化する〉という特殊な能力によって引き起こされたものだ。
これにより、ラナの『加護』系は全てLV1だったこともあり、『大いなる加護の恵みLV1』の効果だけで全ての『加護』系が『大加護』へと変化している。
ちなみに『加護』系のLVを上昇させて『大いなる加護の恵み』のLVを超えてしまうと、『大加護』からまた『加護』へ戻ってしまうので注意が必要だ。
こういう下級職の〈スキル〉〈魔法〉を変化させる系統のスキルを〈系統進化スキル〉と呼んでおり、実は【大聖女】だけでは無くそれなりの上級職が持っている上級スキルだったりする。
正直この『大いなる加護の恵み』は大変助かる。
普通の『加護』系だとLV1ではあまり強いバフは掛からない。
しかし『大加護』は『加護』の約倍近いパワーアップが可能なのだ。
各『加護』系のLVを上げるためにSPを使うより、『大いなる加護の恵みLV1』を獲得した方が何倍もSPの節約になる。ということでこれらはLV1でストップだ。
ちなみにこのスキルは全部がLV10の時が一番ヤバいのだが、全部LV10にするとSPが60も掛かるのでスルーします。やるなら【光輪の聖女】か【クイーン】だな。【大聖女】は他に振りたい魔法がたくさんあるので、断念です。
ラナの強化された『守護の大加護』で防御力が増したシエラ。今回はアタッカーをラナが担当することもあり、シエラは攻撃に参加しない。防御の構えだ。
「ヘイトを稼ぐわね。――『シールドフォース』!」
シエラの『シールドフォース』は四段階目ツリー、強力な全体挑発スキル。
浮かぶ四つの小盾から炎のようなエフェクトがボゥボゥと溢れ、〈アーチャーブルオーク〉がシエラに注目した。
「プガァ!」
スキル『無属の二矢』がシエラに向かうが、シエラはなんのスキルも発動していない小盾を前に出して防御する動きを見せた。
四つの小盾のうち、二つが無事に『無属の二矢』をインターセプトした。
スキル矢の威力によって弾かれる二つの小盾だが、すぐにシエラの前に復帰する。
この自在盾はこのようにスキル無しのインターセプトでも使う事が可能だ。
完全に〈アーチャーブルオーク〉が俺たちから目を逸らしたタイミングでラナが攻撃魔法を発動する。
「『聖魔の大加護』! は使う必要は無かったかしらね。――いくわ、これが【大聖女】の実力よ! 『大聖光の四宝剣』!」
ラナが唱えた瞬間、空中に大きな光の剣が四本現れた。
大きさはラナの三倍くらい。十字姿に神々しい聖なる光を放っていた。
これは単体攻撃魔法の一歩先、ランダム四連続攻撃魔法。今までラナは単発かエリア攻撃しか持っていなかったが、これによりランダムではあるものの、複数の敵に攻撃出来るようになったのだ。
光の剣の切っ先が、〈アーチャーブルオーク〉の方へ向く。
「――いっけー!!」
「プビィ!?」
「プビィ―――っ!!」
四本の光の剣が二本ずつ〈アーチャーブルオーク〉に突き刺さると盛大に光が弾け、大ダメージを与えて〈アーチャーブルオーク〉のHPがゼロとなり、そのままエフェクトに還った。ワンパンだった。
いくら上層とはいえ相手は二体だったのに。
凄まじい威力である。
「ふふん、ふふふん! いいわ、これ、凄く気持ちいいわね!」
「おう! むちゃくちゃかっこよかったな!」
ラナはこの魔法、気に入ったみたいだ。
派手だったし、ワンパンだったしな。
手を挙げるラナにハイタッチ、これはハイタッチ案件だ!
「イエーイっ!」
その後もシエラとラナでガンガン敵を倒していった。
ラナもシエラも熱心に自分の新しい〈スキル〉〈魔法〉を使いこなそうと奮闘している。
正直強さ的にこの第1層では二人で十分に感じたので、俺、エステル、カルア、ハンナは他の場所で狩りをすることにした。
端的に言えば二手に分かれて練習することにした。
エステルたちもスキル使ってみたいだろうしな。このままでは二人が満足するまで出番がありそうにない。
「私も早く新しい『上級錬金』してみたいなぁ」
ハンナも上級スキルが使いたくて仕方ないようだ。しかし、今日のエステルは〈馬車〉ではなく〈戦車〉装備なのでダンジョンでの錬金は危険だ。
残念だが帰ってからだな。
「それにハンナのスキルは上級素材でこそ耀くからなぁ。まだしばらく待ってもらうことになる。とは言っても能力的にはかなり上がっているだろ?」
「うん! でも早く使ってみたい!」
「うむ、気持ちは分からんでもない。とりあえずこの階層の素材採取を進めていてくれ。後で良い感じの中級上位級レシピを渡すから、腕試ししてくれ」
「いいの!? やったー!」
とりあえずハンナはこれでよし。
「じゃ、続いてエステル行こうか!」
「お願いします!」
振り返ると、そこには〈蒼き歯車〉を装備したエステルがいた。
足のくるぶし辺りに円盤形の車輪が一つずつ付いており、外部装着型のローラースケート? という感じでとてもかっこいい見た目をしている。これが〈
ローラースケートは俺もやったことがあるが慣れるまで意外と大変だった記憶が強いが、エステルは【戦車姫】に就いた影響だろうか? さっきの覚束なかった足取りとは打って変わり、ほぼ初めてで、しかも整地された専用の道ではないのにも関わらず普通に動けるようになっていた。
マジかよ。
確かに、シエラも
ちなみにこの〈蒼き歯車〉はただの車輪ではない。
自動走行が可能な車輪なのだ。セグウェイに近いか? アイテムの〈セグ改〉とは違い、こっちは装備だけどな。
まあ、ローラースケートのように足で蹴って推力を得ながらの戦闘は少しダサい。自動に動くからこそそこにロマンが生まれるのだ! 自動走行最高!
ということで早速エステルに試してもらいましょう!
「武器を装備しても動けそうかエステル?」
「はい。なんとか。しかし不思議ですね。先ほどはまったく乗りこなせる気がしなかったのですが、今はなぜかどうやって動いたら良いのかが分かります」
「
エステルはすでに〈蒼き歯車〉を装備したまま自分の身長ほどもある両手槍を振り回してもバランスが崩れないほどになっていた。
これなら、一度戦闘を体験させても大丈夫だろう。タンクは俺がやるし。
というわけで、俺もカルアに指示をだす。
「カルア、探知を頼む。できれば二体以下の構成で頼むな」
「ん。『ソニャー』――! あっち、一体」
「お、さんきゅ。ちょうど良いな。行くか!」
俺たちはカルアが指さした方向へ向かって歩き出した。
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