第490話 夏休み明けの始業式。新たな制度のご案内。
月曜日、夏休みが明けて、今日から久しぶりに学業が始まる。
また、昨日から上級職の発現条件のクリアを開始した。
まずはシエラの〈上級姫職〉からだな。
昨日は、開始したのが食事後という遅い時間だったこともあり途中で切り上げたが、今日の放課後にでも〈
ということで、今日はササッと学業をこなしてしまおう。始業式だけなのですぐ終わるはずだ。
今日も朝からハンナがやってきて、一緒に朝食を食べて、一緒に貴族舎を出る。
分かれ道でハンナに手を振って見送り、俺は夏祭りぶりの〈戦闘課1年生〉の校舎へと到着した。
「やっべぇ。元に戻ってるぜ」
一昨日の夏祭り終わりまでは確かに祭り版デコレーションされていた〈戦闘課1年生〉の校舎と校庭。それが何事もなかったかのように元に戻っていた。
うーむ。【クラフトマン】が優秀。
そんなことを考えていると俺に近づいてくる人影に気がついた。
「おはようございます。ゼフィルス様」
「おはようセレスタン。昨日ぶりだな」
セレスタンだった。
本当にこういうときスッと出てくるよなセレスタン。
どこかにスタンバっているのか? いや、さすがにそれはないか。
「今日は何かあったっけ?」
「今日は始業式とロングホームルームですね。一度教室に集合したのち体育館に向かうと思われます。また、今日のロングホームルームでは何か重要な連絡があるとのことです」
「そうなのか? 早く終わってほしいなぁ」
リアル〈上級姫職〉が俺を待ってる。
「午前中には終わると思いますよ」
「そうか! それなら安心だな!」
夏休みが明けたら始業式で半ドン。これ常識。
セレスタンに確認も取れたし、午後は〈
セレスタンと二人で教室に入ると、すでに半数以上のクラスメイトがいた。
それなりに早い時間のはずだが、やはり久しぶりの学園ということで早めに出てきた子が多い様子だ。挨拶をしながら教室に入った。
「おはよう~」
「おはようゼフィルス!」
「ゼフィルス、おはよう」
「おはようございます」
挨拶しながら教室に入るとそれに気がついたラナ、シエラ、エステルが挨拶を返してくれる。
なんだか最近のラナって少し素直になったよな。挨拶だってちゃんと返してくれるし。
いや、成長した、という表現のほうが正しいか? すべては夏休みの影響か。
他のみんなにも挨拶をしたあと自分の席に着こうとすると、どんよりとした四人組が俺の眼に入ってきた。
「ようサターンたち、久しぶりだな」
とりあえず声を掛けてみる。
「ゼフィルスか……」
「どうしたんだそんな落ち込んだ顔をして。あ、分かったぜ、夏休みが終わったからブルーになってるんだろ?」
「終わったか……。そうだな、確かに終わった……」
「ふふ、夏休みですか。それって美味しいのですか?」
「腕周りの筋肉が、目標値に届かなかった」
「勉強は筋肉を弱らせるんだ」
おっと、どうしたんだ。いつもの覇気が感じられない。
こいつらは俺がひょいっと顔を出せばすぐに絡んでくるというのに。
「ゼフィルス様、少々よろしいでしょうか?」
「ん?」
セレスタンに呼ばれて教室の隅に行くと、セレスタンがどんより四人組の訳を教えてくれた。
どうやら、期末試験で赤点を取って補習漬けの夏休みを過ごしたらしい。
いや、補習って言っても10日程度だろう? と思ったのだが、サターンたちは実家が近いらしく帰省組だったようだ。
学園に戻ってきて補習漬けとなり、夏休み中はろくにダンジョンに入れなかったらしい。
さらに、これは知らなかったのだが、どうも補習組は夏休みの宿題もプレゼントされていたらしい。
ちなみに俺たちには夏休みの宿題なんてなかった。
これが、赤点者との差。夏休みの宿題は……ヤバス。
「とりあえず、ドンマイとでも声を掛けておこう」
「……それがよろしいかと思います」
そういうことになった。
とりあえずドンマイと言っておいたら、彼らのこめかみに血管が浮かんで震え始めたので元気は戻ったようだ。
ちなみに〈マッチョーズ〉も同じ感じで補習があったようだが、こちらは脳の筋肉を育てて解決したらしい。……よく分からなかった。
そうやって久しぶりのクラスメイトたちに挨拶しているとすぐに時間は過ぎていき、チャイムが鳴ってフィリス先生とラダベナ先生がやって来た。
「はーい、みなさん久しぶりです。おはようございます」
「おはようボーイズアンドガールズ。夏休みは楽しかったかい?」
フィリス先生は相変わらずの美人さんだった。いや少し大人っぽくなったかも。
ラダベナ先生は変わらずの様子だ。
「今日は始業式なので体育館に行きますよー。その後はロングホームルームを行なって今日は終了。明日から通常授業ね。夏休みボケしていると思うけど、みんな頑張ってね」
フィリス先生に頑張ってと言われると頑張りたくなるから不思議です。
おっし頑張るぞー。
その後、学生睡眠導入機とも言い換えられる先生方のありがたいお話を体育館で聞き、続いてこれからの行事について、ロングホームルームで連絡があった。
「さて、みなさんにお知らせがあります。国が進めていた〈転職〉制度がある程度形になったそうで、近々発表があるみたい」
ざわ、っと。
それを聞いたクラスメイトたちがざわめいた。
しかし、自分たちはすでに高位職に就いている。
自分たちが関わることの低い制度だろうということですぐに静かになった。
しかし、注目度の高い話題に、みんなフィリス先生の話の続きに耳を傾ける。
「その〈転職〉制度に伴って、学園でも高位職への〈転職者〉が増えると思われるのよ。そこで学園はこの〈転職〉制度を推し進めると同時に、本来1年に1回だったクラス替えを、今年は臨時で10月にもう一度決行することに決めました」
ざわめきが大きくなった。とんでもない重要事項だった。
――クラス替え。
1年に1度の学園の大きなイベント。
しかし、それが今年にかぎり、2度あるとのことだ。思い切ったな学園。
確かに〈転職〉すれば、その系統が同じルートの高位職なら良いが、まったく別のルート、例えば〈戦闘課〉適性の【剣士】から、〈支援課〉適性の【シーカー】に乗り換えなんてことが起こると、それが一人二人なら
クラス替えは何組になれるかで今後の人生すら左右するとも言われている大事な行事。
大きなイベントだ。
俺の前の席の四人が土気色になって呆けているが、とりあえず置いておこう。
しかし、これだけでも大きな話だったのにも関わらず、フィリス先生の話には続きがあった。
「また、その前に本来は10月に行なわれるはずだったクラスバトル祭、―――――〈クラス対抗戦〉を来週に行なうことに決定しました」
――――――――――
後書き失礼します。
プレゼント企画最終日! 今日も+3話更新します!
本日シエラの〈
また、『ゼフィルスが隠し持っている〈上級転職チケット〉は使わないの?』
というご質問がとても多かったのでこの場を借りて、裏話を説明します。
このゼフィルスが持っている〈上級転職チケット〉はギルドの共有財産ではなく、あくまでゼフィルス私物、個人資産という位置づけになります。
そして第481話で申し上げたとおり〈上級転職チケット〉のお値段は100億ミールするかもとのこと。
このお値段がネックで気軽に使えなくなってしまいました。
もしこれを気軽に使ってしまうと、使った相手はゼフィルスに対して100億ミール級の恩ができてしまいます。もう恩を返すには嫁になるしかないレベルの価値。
まさか〈上級転職チケット〉の正体は嫁チケットだった!?!? (作者混乱中)
まあそんな所なので、誰に使うのかは、すでに決めてありますが、最低限ゼフィルスに対して100億ミールの価値を返せる人になりますね。嫁にくるのは無しで。
あれ? ちょっと話しすぎた?
こほんこほん。では次の話は10:30からです。
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