第439話 〈エデン〉昇格者をここで発表します! 拍手!
俺がサブメンバーのレギュラー入り発表宣言を行なうと場はざわめきに包まれた。
みんな、とうとう来たか、といった雰囲気だ。
来ましたよ。ええ、来ましたよ。
セレスタンから集計の結果が届きました。
今回のレギュラー入りは〈エデン〉メンバー全員の採点により決定する形となっている。
今までの練習風景、ダンジョンでの活躍、装備、思想、覚悟、そして今回のギルドバトル。
全てを念頭に置いて採点をする方針だ。
日数は少なかったが、ダンジョンで〈アークアルカディア〉と〈エデン〉が合同で攻略していたのはこういった目論見が入っていた。
テスト勉強も含め、なるべく合同で行動していたしな。
この集計で規定値を超えていたサブメンバーは〈エデン〉への昇格を果たす。
超えられなかったサブメンバーは次の昇格試験までまた頑張ろう。
そう、今一度壇上でみんなに伝えた。
またざわめきが大きくなったな。
うむ、みんなドキドキして発表を待っている様子だ。
俺も内心ドッキドキです。プレッシャーで。
ざわめきが落ち着くのを待ってから、口を開く。
「まず伝えておく、もしこの機会に昇格しなくても落ち込まないでほしい。〈エデン〉は下部を見捨てない。今後も一緒にダンジョンで活躍したり、共に生産したりといった関係は変わりないと思ってくれ」
ゲームの時と比べ、リアルでは下部
なんか協力ゲームをしている感覚なのだ。
正直言って、〈エデン〉の上限人数が増えたようなものと言っても過言ではない。
つまり〈アークアルカディア〉もメンバーのようなものだ。見捨てるわけがない。
それを伝えておく。
「ではお待たせした。結果を発表する。まず集計点、第一位から」
ごくり。
そんな喉を鳴らす音がどこからか聞こえた。
「ダンジョンではモンスターに対し勇敢に戦い、敵に怯むことなく優秀な戦果を残し、やる気と覚悟を示した。また、新しきメンバーたちが集まりできたばかりの〈アークアルカディア〉を献身的に支え、大きく貢献した。先のギルドバトルでは誰よりも先頭に立ち、メンバーたちに指示を出し、〈エデン〉に対してすばらしい立ち回りを見せた。それらが高評価となり、高得点を出したアイギス先輩を第一位とする。アイギス先輩、おめでとう」
俺の発表に、一斉に拍手が沸いた。
アイギス先輩がカチューシャ型の兜を外して胸に抱え、立ち上がってみんなに頭を下げた。
「あ、ありがとうございます。これからは〈エデン〉でより一層高みを目指すべく努力し続けます!」
第一位はアイギス先輩だった。
正直、順当な結果だろう。
この迷宮学園で俺たちより1年先輩なのは伊達ではなく、一年生のメンバーたちとは立ち振る舞いと意識がかなり異なるからな。
LV上げも2回目ということで慣れた様子だし、やる気もある。
何しろカンストまでいったLVをリセットし、〈転職〉しなおしたほどなのだ。
【ナイト】のままでは今後の人生が厳しいことは目に見えていたとはいえ、相当な覚悟を決めたことは明らかだった。
〈エデン〉、〈アークアルカディア〉を通し、唯一の2年生。
最初の昇格者はアイギス先輩だった。
少し落ち着いたところで次に移る。
「続いて第二位を発表する! ギルドバトルでは周りを常に見ながら歌で味方を支援し、仲間を支え、戦闘にも大きく貢献した。ダンジョンでは仲間が負傷すればヒーラーの役割もこなし、危険が迫れば援護をし、毎度冷静に適切なバフを掛けて戦闘を有利に進めた貢献度が大きく評価され、ノエルを第二位とし、〈エデン〉に昇格するものとする。ノエル、おめでとう」
「ありがとうございます~!」
さすが、目立つことに慣れているためか拍手の雨もなんのその、落ち着いた動作で手を振って応えるノエル。
この動じなさが戦闘でかなり活きていたのだと話に聞いた。
ノエルはラクリッテがいると冷静沈着になれる。
いつでも冷静でいられるため、常に慌てず対処できるのだそうだ。
なんかすごいな、その理由。
ギルドバトルでは最後の場面、レグラム、ラクリッテがリカを押さえるのを全力で支援回復しつつ隙を見ながら巨城も攻撃しており、実は〈東巨城〉を三割削っていた大部分はノエルの功績だったりする。
格上を相手にするレグラムとラクリッテを支援回復しつつ、巨城アタックにも貢献したのに加え、普段のダンジョンでもバフのスキル回しが上手いと評判なノエルだ、二位なのも納得の成績だな。
「さて、では第三位だ! ギルドバトルではノエル、ラクリッテ、カイリに指示を出し、司令塔の役割を果たし、落ち着きのあるリーダーとしてメンバーを引っ張り、ウィークポイントである〈東巨城〉を攻め続けた。正直、あそこで〈東巨城〉が落ちていれば負けていたのは〈エデン〉のほうだったからな。リカが押さえてくれなければ危なかった。そのギルドバトルの戦略に対する理解が深い事が大きく評価され、レグラムを第三位とし、〈エデン〉に昇格するものとする。レグラム、おめでとう」
「――これからも精進する。礼を言わせてほしい。ありがとう」
拍手を受け取るレグラムの表情は、少し複雑そうだ。
三位だったからかな?
減点理由は、〈東巨城〉を落とせば勝てると分かっていたのにリカを相手にするのをこだわりすぎたこと、だな。
正直、あの場面はリカをラクリッテに任せつつレグラムは〈東巨城〉の攻撃に加わるべきだった。ミサトが〈援軍〉に来た時点でその作戦は使えなくなったので、惜しかったんだよな。経験不足だ。
それがマイナスポイントとなり、少しの差でノエルに負けたのだ。
精進あるのみである。
「では第四位を発表する! 頼れるタンクであり、ダンジョンではその大きな盾で前線を支え、ボスの猛攻を全て防ぎきり、スキル、魔法の扱いが非常に上手い。自分の役割の理解が深く、行動も伴っているため安心感と頼りがいがあるというのが大きく評価され、ラクリッテを第四位とし、ギリギリではあったが、〈エデン〉に昇格するものとする。ラクリッテ、おめでとう!」
「わわ! 私が、四位、ですか!? あ、ありがとうございます。ありがとうございます!」
ビックリという表現がこれほど似合うのも珍しいという行動で直立してペコペコ頭を下げまくるラクリッテ。
アイギス先輩が嬉しさ全開だとしたら、ラクリッテは驚き全開という感じだった。
ラクリッテが四位というのは、これも大きく納得の理由だ。
実は〈エデン〉は盾が不足していた。タンクはその多くが盾持ち主流という中、〈エデン〉ではそのポジションにシエラしかいない。
そこに優秀な盾職がいたら、もうかなり注目されるのは当然の帰結。
もちろん、ラクリッテが非常に優秀だというのが前提だけどな。
ラクリッテは俺の〈育成論〉授業の第一期生(最初から参加していた50名の1人)だったこともあり、
しっかりと敵を抑えてくれるため他のメンバーの評価が非常に高かったのだ。
さらにみんなも頼れるタンクに仕上げるために色々教えまくったのも大きい。
テンパり癖こそあるものの、戦闘中は指示に忠実に従い、コミュニケーション不足を補う立ち回りをするのが最も評価されたな。
今回のギルドバトルは活躍こそあまりできなかったが、ポジションはタンクだし、まだ1年生なんだ、ギルドバトルでの理解はそれなりにある言動をしていたし、これから育てていけば問題無いレベルである。
纏めると、ラクリッテはギルドバトルの評価を補って余りあるダンジョンでの高評価が認められ第四位はラクリッテとなったわけだな。しかし、レグラムとはかなり点差が開いてのギリの昇格だった。
ラクリッテが目をバッテンにしてペコペコ頭を下げてお礼を告げ、みんなは拍手でそれを祝った。
なんだかホッコリする光景だった。
「ね、ねえゼフィルス君? ギリギリでラクリッテちゃん昇格ってことは、私たちは?」
恐る恐ると聞いてきたのは【魔剣士】のサチ。私たちというのは仲良し三人娘とカイリのことだろう。まだ誰も呼ばれていない中、ラクリッテがギリの昇格を言い渡されたのだ。
とても気になると思う。
「あー、とてもいいづらいことではあるが……」
「「「「ごくり」」」」
「昇格したのはこの4人となる。他のサブメンバーは、残念ながら規定値に届かなかった」
「「「「ガーン!」」」」
仲良し三人娘たちとカイリは残念な結果になった。
4人とも背景に雷が落ちたかのようにガーンして沈む。
うむ、仲良し三人娘はやはり自身の
ギルドバトルの時の別行動は、ちょっといただけなかった。
また、カイリは少し仕方ない部分がある。
【シーカー】の本領は〈三ツリ〉から発揮されるので〈二ツリ〉の今では厳しいのだ。
もう少し〈アークアルカディア〉で修業してほしい。
こうして〈アークアルカディア〉昇格試験は終了し、〈エデン〉には新たに4人の仲間が増えることになったのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます