第435話 初の巨城攻略戦。〈北巨城〉はどちらの手に。
巨城を削り始めたところで〈北巨城〉に続々とお互いのメンバーが集まってきた。
〈エデン〉ではミサト、リカ、シエラが、〈アークアルカディア〉ではユウカとレグラムがまず追いつき巨城を攻撃し始める。
それに少し遅れる形でエミ、ノエル、ラクリッテ、カイリが到着し〈北巨城〉を攻撃し始めた。
〈ジャストタイムアタック〉が無い以上、こうなってしまうとどちらが先に先取できるかは天のみが知る世界だな。
遅れて到着したエミたちが遅れを取り戻そうと全力で挑む。
「遅れを取り戻すよー! 『魔装武装』! 『魔本・フリズドジャベリン』! 『魔本・スノーストーム』!」
「バフを掛けるね~『アクティブエール』! 『マジカルエール』! 『テンポアップエール』!」
「う、うちも行きます! 『マインドフレアシールド』! たぁー!」
「スピードなら、私だって! 『魔装武装』! 『魔弓・パワーショット』! 『魔弓・ブラインドアロー』! 『魔弓・狙撃』! 『魔弓・光の四矢』!」
「私は攻撃スキルが無いから罠を仕掛ける。少し離れるから、『スルーウォーク』! レグラム、あなたが一番火力あるんだ、頼んだよ! 『罠設置』!」
「任せるがいい。『雷武功』! 『ソードフォース』! 『プレシャスソード』! 『雷鳴剣』!」
エミがまず魔本から〈氷属性〉系の中級魔法。3つの氷ランスを放つ『魔本・フリズドジャベリン』、そして相手を吹雪の竜巻で攻撃する『魔本・スノーストーム』を発動する。
それに反応しノエルがバフを全体に掛けた。
それぞれ攻撃力、魔法力、素早さを上げる
同じマスにいれば全員にバフが掛かる。
続くのはラクリッテ。
両手盾しか持たない彼女は攻撃手段が乏しい。しかし攻撃魔法も1つだが持っている。
『マインドフレアシールド』は両手盾に幻の炎を纏わせる魔法だ。ちゃんと熱いらしい。
本来なら受けで使い、突っ込んできた相手を燃やしてダメージを与える魔法だが、これを使ってアタックを仕掛けると相手にダメージを与えられる。
受身な【ラクシル】の数少ない攻勢もできる魔法だな。
巨城はデバフが効かないので『カース』系も『パープル』系も意味が無く、防衛モンスターも片付いているので挑発系の『カチカチ』や『ポンポコポン』も意味は無い。ラクリッテが使える有効なスキルが少ないのが辛いところだ。
やっと三人集まって本気が出せたのかユウカがスキルを回転させ始める。
威力の高い一撃の矢を放つ『魔弓・パワーショット』、本来なら相手を盲目にする攻撃『魔弓・ブラインドアロー』、命中率と遠距離攻撃に補正が掛かる『魔弓・狙撃』、そして先ほども放っていた『魔弓・光の四矢』を次々と放っていった。
非常に攻撃力が高い。やっぱ【魔装】系は3人揃ってこそだよな。
カイリは探索特化の【シーカー】なため攻撃スキルはほぼ皆無だ。
そのためハンナからもらった爆発系の〈罠〉アイテムを持参し、設置スピードが上がる『罠設置』で巨城にペタペタ爆弾をくっつけていく。ちゃんと移動系の『スルーウォーク』でみんなから少し離れての設置だ。考えたな。
最後はレグラム。〈姫職〉と並ぶ能力を持つ〈彦職〉の一角、【花形彦】の所有者だ。
〈姫職〉はかなりオールマイティになんでも覚える傾向があるのに対し、〈彦職〉は特化型の傾向が強い。
その中でも【花形彦】は近接アタッカーを得意とし剣をメイン武器に使う。むしろ剣以外を装備出来ないほどの特化型だ。
覚えるスキルも自己バフ、範囲バフ、近接攻撃、属性攻撃、デバフ攻撃、自己回復と、かなり攻撃寄りに尖っている。
今使ったのは自己バフの『雷武功』。自身に〈雷属性〉を付与し攻撃力を上げるバフだ。
そこからは素早く敵に接近して四連続で斬る『ソードフォース』。〈光属性〉も付与して一閃する『プレシャスソード』と繋げ、雷が鳴ったかと思うほどの大技、『雷鳴剣』の一撃で大ダメージを稼いでいるな。
良いスキル回しだ。パッシブで威力を上げる『貴族の剣技LV10』があるのでダメージがかなりデカい。
そしてスキルを発動する度に出るキラキラエフェクトが無駄に光ってカッコイイ。
あのシンボル、ちょっと欲しくなってきたぞ。
しかし、これで〈アークアルカディア〉は6人が加わり、人数で〈エデン〉を上回った。
それに対し〈エデン〉は、レベルが高いが純粋な高火力アタッカーは連れてきていないし〈二ツリ〉までしか〈スキル〉〈魔法〉を許可していないため、火力という点ではいつものギルドバトルの半分以下だ。
そこまでして〈アークアルカディア〉の火力は〈エデン〉を超えた。
〈北巨城〉がどちらの手に渡るか、本当に分からなくなったな。
そして〈北巨城〉のHPが減っていき、とうとう落ちる時が来た。
運命の時だ、カイリが爆弾を爆発させ、〈アークアルカディア〉が一気に攻勢に出る。決めに来たか、巨城のHPがガクンガクンと大きく削れ、〈エデン〉も一気に攻撃を放つ。そして、巨城のHPはゼロへ、判定は。
―――白!
「む、白に渡ったか!」
「やられたわ。ゼフィルス」
「おう、すぐに次の巨城へ行くぞ!」
「承知した!」
「了解デース!」
「ありゃりゃ、大変だー」
〈北巨城〉はなんと〈アークアルカディア〉の手に渡った。
先取されたな。
まあ、普通にお互いのギルドが削り合えばこういうこともあるのが普通だ。
いや、しかし、久しぶりに巨城を差し込まれた。なんだか懐かしいな。
なにげに
〈アークアルカディア〉の面々が一拍遅れてワッと歓喜するのを横目に、俺は2手目の指示を送る。
さて、〈アークアルカディア〉が一歩リードしたこの局面、負けている〈エデン〉はどう動くべきか。
これもちゃんと事前にメンバーへ通達してあった。
今の局面は俺たち〈エデン〉がEランク試験を受けた時の先生組の状態に酷似している。
ここから〈東巨城〉だけを取り、小城マスを集めに行ったとして、人数負けしているのだからこれでは勝てないだろう。
対人戦もこちらから仕掛けるのはダメということになっているしな。
そうなると次の勝つため行動は〈西巨城〉と〈東巨城〉を両方先取する事だ。
そうなれば逆転、勝負は複雑になる。
というわけで〈エデン〉の次の選択は二手に分かれての巨城の先取だ。
相手側にある〈西巨城〉にはAGIの高い俺とパメラが向かう。
シエラ、リカ、ミサトは〈東巨城〉だ。
さて、〈アークアルカディア〉はどうでるかな?
歓喜に震えている場合じゃないぞ?
「しまった! ゼフィルスさんが〈西巨城〉に向かっています!」
「大変! すぐ追いかけなくちゃ!」
歓喜に固まった〈アークアルカディア〉だったがアイギス先輩がいち早く気がついた。
さすが経験者だ。
アイギスの視線を追ったサチが叫ぶ。
「う、魔装が切れてるよ! 『魔装武装』! 『魔本・スピードブースト』!」
「すぐに追いかけよう。大丈夫だ、ゼフィルス君たちは保護期間で一度中央へ迂回しなければならない。今からなら追いつけるよ」
すぐにバフを掛け直そうとしたエミだったが、魔装状態が終わっている事に気がつき再度『魔装武装』を掛け直して単体バフをサチに掛ける。これで少し出遅れたな。
冷静に状況を分析するのは仲良し三人娘の最後の一人ユウカ、彼女は弓使いなので状況判断に
ユウカの言うとおり、俺たちは白の保護期間があるため西に進むためには一度南へくだり、保護期間が切れているマスを踏んでから〈西巨城〉に向かわなければならない。端的に言って遠回りしなければならないためショートカットできる〈アークアルカディア〉は追いつくことができるだろう。いやギリギリか?
〈アークアルカディア〉の選択肢は2つある。
〈西巨城〉へ8人全員で行くか、〈エデン〉みたく人数を分けて〈東巨城〉も狙うかである。
ただし、〈東巨城〉を狙うためには俺たち同様、一度南に下り、保護期間を迂回しなければならない。
さて、どう出るかな?
「〈エデン〉が二手に分かれたよ!」
「わ、私たちは足遅いから〈西巨城〉へ行った方がいいです!」
「ラクリッテ君の言うとおりだね。〈西巨城〉へ行こう! レグラム、付いてきてくれるかい」
「当然だ、つゆ払いは任せるがいい」
ノエル、ラクリッテ、カイリ、レグラムは〈西巨城〉に来る様子だ。
意外にもテンパりグセのあるラクリッテが意見を主張していた。これは高評価だな。
「私たちも〈西巨城〉に行きます! 〈西巨城〉だけは渡してはいけません!」
おお、アイギス先輩がリーダーをして仲良し三人娘も一緒に〈西巨城〉に来るみたいだ。
つまり8人全員で〈西巨城〉に来るようだな。
悪くない。
〈西巨城〉まで取られたらいよいよ〈エデン〉の勝利が危うくなる。
〈エデン〉は2人に対し、〈アークアルカディア〉は8人が〈西巨城〉へ向かう。
さて、〈西巨城〉はどちらの手に渡るのかな?
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