第九章 〈エデン〉昇格試験と夏休み企画!

第430話 これからやるべきこと。助っ人を雇おうか。




「全員いるうちにやっておくべきことをまとめておいた」


〈エデン〉〈アークアルカディア〉のメンバーが全員出席するギルドの一室で、俺はいつも通り〈幸猫様〉の前でギルドメンバーに通達する。


 夏休みまで残り4日。


〈エデン〉〈アークアルカディア〉共に夏休みに入れば少なからず帰省するメンバーが出る。

 つまり夏休み期間はこのように全員で集まれる機会は中々無いと言える。

 だからこそ全員が集まれるうちにやっておくべき事はやってしまおうという話だ。


 誰しも、自分が知らないうちに何かしらイベントが進行していたらイヤだろう。


 故に俺はシエラとセレスタンと共にやることリストを作成。

 ここでみんなに発表した。


「まず初めに〈アークアルカディア〉から〈エデン〉への昇格試験を行なう」


 俺の言葉に〈アークアルカディア〉の面々に緊張が走った。

 動じていないのは、ずっと下部組織ギルドでいい宣言をしたニーコとアルル、あとレグラムとアイギス先輩もか。

 次第に、少しざわめく。


「ついにこの時が来たんですねぇ」


「が、頑張ります。ぜ、全力を出します!」


【歌姫】のノエルが感激したように言い、【ラクシル】のラクリッテが気合を入れる。


「レグラムさんはずいぶん落ち着いていますね。自信がおありですか?」


「当然だな。アイギス先輩も緊張しているようには見えないが?」


「私は1人だけ2年生なので情けない姿を見せないよう気を張っているだけですよ」


 レグラムとアイギス先輩はいつの間にか仲良さそうに雑談している。

 いや、あれは共に切磋琢磨する友的な仲だろうか?

 それにしてもアイギス先輩は、何やら吹っ切れたようなさっぱりとした表情だ。

 前に見たときは落ち込んでいて、ブルーな感じだったはずだが、エステルはアイギス先輩を慰めることに成功したらしい。


「とうとう来たわよ! 〈エデン〉の昇格試験!」


「負けられないよね!」


「私たちの良いところをゼフィルス君に一杯アピールしよう!」


 こっちの仲良し三人娘も気合は十分なようだ。


「カイリ君、頑張りたまえ。ぼくも陰ながら応援させてもらうよ」


「頑張りやカイリはん。うちも楽しく観戦、じゃなかった……。応援させてもらうわぁ」


「全然応援に聞こえないよ2人とも? もっと堂々と応援してほしいな?」


 支援、生産組のニーコとアルルは完全にイベント観戦モードの様子だ。

【シーカー】のカイリだけ挑む形だが、戦闘職たちとの温度差が激しすぎて一番動揺している。


 ざわめきが少し落ち着いたタイミングで話を進める。


「試験は水曜日の放課後だ。試験内容は当日説明する。場所は後でチャットを送るが、ここまでで何か質問がある人?」


「は、はい!」


「はいラクリッテ、どうぞ」


「あ、ありがとうございます! あの、持ち物はなにを持っていけば良いですか?」


「ああっとそうだった。最低限装備一式は持ってくるように。これはギルドの試験なのでダンジョンやギルドバトルを想定して、持ち物は各自、自分に必要だと思う物を持ってきてほしい。他に質問はあるか?」


 それからぱらぱらと質問があがるので答えていった。

〈アークアルカディア〉のメンバーたちが本気で昇格したいんだとひしひし伝わってくるな。


〈アークアルカディア〉メンバーの昇格試験について、すでに〈エデン〉メンバーには通達してあるのでそちらからは特に質問は上がらなかった。

 話が終わったところで次の議題に移る。


「次はセレスタンからだ、内容は外部ギルドからの〈助っ人〉制度の利用についてだな。セレスタン、頼む」


「承りました」


 俺が振ると、セレスタンが立ち上がり、俺の隣に来て話し出す。


「ギルドの管理、経理からです。現在〈エデン〉の資産や装備、アイテム、素材などが他の同ランクギルドを大きく上回っており、我々の管理能力を超えつつあります」


 いきなりとんでもない内容に〈エデン〉〈アークアルカディア〉の面々が大きくざわめく。

 うん。まあそうだよね。そんなこと言われても困る。


 直訳すると、「君たちが狩りすぎ稼ぎすぎで管理が追いつかない」と言われているのだ。

 ダンジョンで狩りすぎて困るとか、さすがはリアルだ。

 ゲームなら経理とか、ギルドの運営とか、その他もろもろとか、もっと簡単で単純だったからな。報酬を受け取るのは全部プレイヤーだし、何をドロップして今自分が何個の素材を持っているのかとかいちいち数えたり管理したりしない。分配もしない。給料制度も無い。


 まあ、そこはリアルの弊害ということだ。

 今はセレスタンとシエラを筆頭に経理なんかを行なっていたが、彼ら彼女らには他にもやるべきことが多くある。

 要は手が足りていないのだ。

 セレスタンの話は続く。


「そこで維持管理について外部から〈助っ人〉を呼ぶことにいたしました」


 前からDランクになったら経理を雇おうという話をしていたが、〈エデン〉もDランクになったし、実行することにした。


 ここで〈助っ人〉制度について話そう。

 簡単に言えば外部委託のことである。


〈ダン活〉では他のギルドから人員を一時的に雇ったり、他のギルドに自分のギルドメンバーを一時的に参加させたりできる〈助っ人〉制度というものがあった。

 これは依頼という形なのでQPが動く。

〈助っ人〉とは幅が広く、ダンジョンの助っ人から生産、採集、調査、インテリア、商人などなど様々なものあった。


 これは〈ダン活〉にあるとんでもなく多い職業ジョブを、プレイヤーたちに体験してもらおうという開発陣のいきはからいだ。

 つまりQPを払ってお試しキャンペーン、みたいなものである。

 試してみて気に入った職業ジョブがあったら使ってみてね、というわけだ。


 ゲーム1周目で全ての職業ジョブを使うなんてできないからな。

 それに、中位職や低位職は次第に使われなくなっていくので、使って使ってお願いします、という涙ぐましい努力も感じる。

 おかげで俺もゲーム時代はたくさんお世話になった。新たな発見も山盛りだった。


 というわけで、今回はリアルでもこの〈助っ人〉制度を利用して、他のギルドから管理や経理が出来る人を雇おう、という話である。




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