第384話 宝箱回〈銀箱〉編! チュウチュウダンの宝箱!
「〈銀箱〉開けたい人~?」
「「「は~い!」」」
「ハンナはともかくなんでBチームのラナが手を挙げてんだ!」
「ノリよ! ここで乗らない私じゃ無いわ! 宝箱と聞いてつい手が挙がったのよ」
「ノリか!」
フィールドボス〈猫侍のニャブシ〉との戦闘後、ドロップしたのは〈銀箱〉だった。
〈木箱〉じゃないだけ当たりだな。
しかし、フィールドボスは周回できない。周回できないので今日宝箱を開けることができる人数は限られる。悩ましい。
いつも通り、まずは立候補を募ることにしたわけだが。
そこでなぜか戦闘に参加していないラナとハンナまで手を挙げよった。
ハンナは採取と錬金で貢献しているので候補には入るかもしれないが、ラナはもちろん対象外である。開けるのは自分で倒したボスの箱にしなさい。
まあ、ラナも分かっている。仲間に入りたかっただけみたいなのですぐ引いた。
うん、ノリって大事だよな。
宝箱は人のテンションを上げ上げにするのだ。なんかノっちゃうんだよね。
「それで今回は誰が開けるのよ。ハンナにはチャンスはあげてよね」
「ゼフィルス君、私最近、宝箱全然開けてないの!」
「なんか迫力あるなハンナ!?」
ハンナが声を張る。
宝箱に魅了された人がここにも!
いや、禁断症状の類いか?
だが、そう簡単に宝箱を譲るわけにはいかない。
「いや、しかしだ、待ってほしい。事は高度な問題だ。だって宝箱だぞ? 宝箱なんだぞ? 俺たちがボスを倒し、苦労の末に手に入れた宝箱だ。これを開けるのはやはりAチームであるべきかもしれないぞ?」
別に苦労はしていない。ボス戦楽しかった。
でもそんな事は
俺だって宝箱を開けたい! しかも初めての中級中位ダンジョン宝箱である。記念だ!
これはそう簡単には譲れないだろう。
「ゼフィルス君、私は?」
「…………ふぅ」
「ねえ、答えてよゼフィルス君?」
やばい。ハンナの目が徐々に据わっていく!?
何か、何か考えなくては!
ハンナは戦闘班チームに入っていない。
〈『ゲスト』の腕輪〉を着けた採取錬金担当だ。
つまりボス戦は不可能。〈『ゲスト』の腕輪〉が壊れるからな。
ということはどうあっても宝箱にありつけないということを意味している。
それではハンナが納得しないだろう。それに〈エデン〉らしくない。
〈エデン〉では『楽しめ』をモットーに宝箱は皆で開けようと決めている。
宝箱回が一番楽しいからな。
ということで、どこかでハンナにも宝箱を開けさせてあげたい。
ああ、宝箱が1つしかないとか罪深い。
どうするか……。
「あ、じゃあ隠し扉や行き止まりの宝箱はどうだ? アレならハンナを優先できるぞ?」
「あ、それはいいかも」
おお、
よし、これからハンナが一緒の時はなるべく宝箱が湧きやすい行き止まりもチェックしておこう。〈金箱〉はほとんど出ないけど、そこは了承してもらおう。
それと隠し扉のチェックも多めに取るか。次の隠し扉はどこだっけ。
さて、とりあえず問題が片付いたところで本題だ。
「Aチームで〈銀箱〉開けたい人~?」
「ルルです! ルルが開けたいのです! シェリアお姉ちゃんと!」
「ん、だったら一緒にリカと開けたい」
〈エデン〉は平等がモットー、再び開けたい人を募ると2人ヒットした。
ルルとカルアだ。
ルルはシェリアと、カルアはリカと、それぞれ共同作業で開けたいと申し出てくれる。
と、尊い。
ラナとハンナにも見習ってほしい。
さっきの問題、ハンナと俺で一緒に宝箱を開ければ解決したんじゃと一瞬だけ考えが
シエラがあなたも見習うべきじゃないかしら的なジト目を送ってきている気がするが、これも気のせいに違いない。
結局じゃんけんで決めることになったが、ここでまさかの超展開が起こった。
代表でルル、カルア、俺が前に出たが、まさかの俺が敗北。
一撃だった。
あ、ああ、あああ、あそこでチョキを出していれば!
そして勝った二人だが、ここでルールを変更。
ルルとシェリア、カルアとリカのチームで勝ち抜きじゃんけんで決めることとなった。
先鋒はルルとカルア。
いつもほんわかしている2人だが、今回は真剣度が違う。
「シェリアお姉ちゃんと宝箱を開けたいのです。勝たせてもらうのですよ!」
「ん。負けない!」
なんか不思議な展開になった。
さすが宝箱争奪戦だ。ノリがすごい。
この2人がこんなに勝ちに拘るとは。
それぞれの後ろに構えるシェリアとリカが顔を赤くして照れている。
と、尊い。
「「じゃんけん~~!」」
そしてとうとう始まったじゃんけん。
勝負の展開は!?
「「ポイッ!」」
ルルがチョキ、カルアがグー。
結果、カルアの勝ち。
「しぇ、シェリアお姉ちゃーん!」
「よしよし。ルルはよく頑張りました。お姉ちゃんがなでなでしてあげます」
「負けちゃったのですー」
じゃんけんに負けたルルがシェリアの胸に飛び込んだ。
それをだらしなく顔を緩ませたシェリアがいい子いい子して慰めている。
なんだこの光景は。す、凄く尊いぞ! す、スクショはないのか!?
「ぶい。勝った」
「あ、ああ。さすがはカルアだ。その、次も頑張れ」
「ん。次も勝つ」
勝ったチームではカルアが珍しく勝利のブイをしていた。記念に一枚とりたい。
リカも照れながら応援して送り出していた。
さて、唐突に始まったじゃんけん勝ち抜き戦。先鋒ルルが負け、大将シェリアが前に出る。
「ルルの
「ん。これで宝はこっちの物」
「勝った気でいるのは早いですよ。お姉ちゃんパワーを見せて上げます」
「ん。楽しみ」
ただのじゃんけんなのにこの場違いな雰囲気はなんだろうか? へたをすればボス戦より真剣だ。
いや、宝争奪戦だからこれが普通なのか? よく分からなくなってきたぜ。
あと、シェリアが何故かルルのお姉ちゃんという言葉を強調している。
なるほど、これで勝てばお姉ちゃんとしての地位は
ちょっと羨ましいと思うのは内緒。
「行きますよ」
「ん」
「「じゃんけん~~ポイッ!!」」
シェリアがパー、カルアがチョキ。
結果、カルアの勝ち。
「かひゅん」
「シェリアお姉ちゃんしっかりー!?」
「ごめんなさいルル……、お姉ちゃん力不足でした……」
「ううん、大丈夫なのです。ルル我慢できるのですよ」
「ああ、ルル~!」
シェリアの野望破れる。
多分、欲を出しすぎたせいだ。世の中欲深いものが負ける。ゲームでは常識。
しかし、ルルとの仲は深まったようだ。シェリアが感極まってルルをヒシッと抱きしめている。
うん、めでたしめでたし?
「リカ、勝った」
「すごいなカルアは」
「うん、リカと開けたかったから」
「そ、そうか。うん。楽しみだな」
「ん。開けに行こう?」
「そうだな」
勝ったカルアとリカ。
カルアのナチュラルなセリフにリカが照れている光景が微笑ましい。
そのまま2人は〈銀箱〉の前に腰を下げた。
右側をカルアが持ち、左側をリカが支えて。視線を合わせた後、阿吽の呼吸で宝箱を開く。
「「せーの」」
それをメンバー全員でそーっと覗き込む。
宝箱を開ける瞬間はいつもドキドキするな。
できれば俺が開けたかったが、そこだけは残念。
「これは、
「と、
リカとカルアが取り出したのは、白一色で神聖なイメージを抱かせる
そして全員の視線が俺に向く。それは、『これは何?』と聞いているかのようだ。
ふふふ、お答えしよう。
「それは、〈猫球の足袋〉だな。
「ん。猫の、肉球?」
言われてカルアが
「そ。猫の肉球の足袋下駄だから〈猫球の足袋〉。装備すると足音を消し、気配を隠せる効果がある足装備だな。ちなみに
――――――――――
・足装備 〈猫球の足袋〉
〈防御力27、魔防力16、雷属性耐性10%上昇、火属性耐性10%低下〉
〈『猫の足LV4』『HP+40』〉
――――――――――
初めて属性弱点を持つ装備が出たな。
雷属性を受けるとダメージを10%カットしてくれるが、火属性で攻撃を受けるとダメージが10%上がってしまう。火属性を使う敵には注意が必要だ。しかし、雷属性しか出てこないダンジョンなら活躍が見込めるだろう。
スキル『猫の足』は斥候系が持っている『忍び足』などと同じ効果で、歩いても音が鳴らず気配を察知されにくい効果がある。
HPが40も上昇するのも地味に心強い。
そうみんなに説明すると、リカが困った顔をした。
「気配が消えてしまうのは困るな。私は装備できなさそうだ」
リカはタンクだからな。逆に注目を集めなくちゃいけないポジションだ。
「ん、肉球可愛い……でも〈爆速スターブーツ〉があるから無理。残念」
カルアの足装備は〈金箱〉産。
非常に強力な装備なので交換するに見合わない。
そのためカルアも装備はしないようだ。
話し合いの結果、これはハンナが装備することに決まった。
敵に気がつかれず採取したいハンナにぴったりだろう。あとHPも上がるのがかなり良い。
そのまま俺たちは、今日の目標地点たる20層へ進むのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます