第365話 三段階目ツリーの試運転! 『ビーム』ですわ!




「『ターゲット補足』! 『デルタカノン』ですわ!」


 リーナのスキルが発動する。

 『ターゲット補足』は次に使う〈スキル〉に命中率アップと、命中した敵にデバフを付与をするスキルだ。

 狙った敵が回避スキルを使用しても命中することがあるし、命中すると回避力低下のデバフを敵に付与する優秀なスキルである。

 これを三段階目ツリーで出現したスキル、『デルタカノン』に乗せて撃つと、螺旋状に放たれた3つの魔砲撃が途中で散り、それぞれが別のシルバーオークに命中する。


「プギャー」


「プギャー!」


「プギャーッ!」


「おっと『アピール』!」


 三段階目ツリーのスキルだけあって命中したシルバーオークはどれも大ダメージを受けた模様だ。

 一応ヘイトを稼ぎなおしておく。


「次ですわ! 『遠距離収束砲』! あ、これチャージが長いですわ!? まだ出ないのかしら? 『ドカーンッ』キャー!」


 次にリーナが使ったのは高威力の『遠距離収束砲』だ。

 これはチャージして撃つので少し時間が掛かるが、威力は非常に高い。その分反動も強いので撃ったリーナがひっくり返ったようだ。

 く、シルバーオークが邪魔でひっくり返ったリーナが見れない!


「リーナさん大丈夫!?」


「ほほほ、お恥ずかしいところを見せてしまいましたわ。つ、次こそ平気ですわ!」


 シルバーオークが邪魔で振り向けないが、ミサトがひっくり返ったリーナに手を貸したようだ。

 リーナは笑って誤魔化す気のようだな。

 ちなみにリーナのハプニングの裏で3体ほどシルバーオークが『遠距離収束砲』の直撃を受けてエフェクトに還ったが、俺以外誰も見ていなかった。

 断末魔の叫びは「プギャー」だった。


 その後もミサトのダメージ返しのバリアである『ニードルバリア』でさらに1体が、リーナの『四連散弾魔砲』により2体がエフェクトに還って俺の受け持ちが全てはけた。

 次のオークの出現条件は12体全てのオークが撃破されることなので、パメラの方がはけるまで俺は待機だな。その間にパメラとメルトを観察する。


「『軽業』デース! 避けまくりなのデース!」


 パメラの『軽業』は回避力上昇スキルだ。これに加え『暗闇の術』で相手を暗闇状態にすれば、ほぼパメラに攻撃を当てることができなくなる。あのエクストラダンジョンのボス〈ボスプビィ〉戦を思い出す光景だ。

 現在のパメラも完全にシルバーオークを手玉に取っていた。



「さあさあメルトさん、どんどん魔法を試すデース!」


「助かる。『クイックマジック』! 『ダウンレジスト』! 『イレース』! 『ライトニングスタン』! 『フリズドスロウ』! 『フレアバースト』! 『シャイニングフラッシュ』! 『ダークネスドレイン』! 『ホーリーブレイク』!」


 おお、メルトが『クイックマジック』で回転率を上げて魔法を連打しまくっている。

 次々飛んでいくカラフルな軌道が結構綺麗だ。


 『ダウンレジスト』は状態異常の耐性低下、『イレース』は属性攻撃の耐性低下デバフだな。

 そこからは各属性に何かしらの状態異常かデバフの付いた魔法を連発するか。

 何体かエフェクトに還ってしまったオークもいたが、残りは〈麻痺〉状態になったり、〈鈍足〉状態になったり、〈盲目〉状態になったりと苦しんでる。

 プギャープギャー言ってる。


「大技で締めるぞ、パメラよ下がれ。『マジックブースト』!」


「退避デース!」


「ユニークスキル『アポカリプス』!」


『マジックブースト』は自身の魔法に対して、発動が遅くなる代わりにダメージをアップさせるバフ魔法だ。

 ユニークを使う場合ももちろん適用される。


 そして【賢者】のユニークスキルの『アポカリプス』。

 単純な高威力の魔法だ。


 メルトが唱えて数拍ののち、それは発動した。メルトの持つ杖から赤い光の極太ビームが放たれたと思ったら、動けずにプギィーと叫んでいるシルバーオークの集団に着弾。

 ドッゴーン! という爆発音と強烈な赤い光に残り3体のシルバーオークが飲まれた。

 プギャーすら聞こえなかった圧倒的な火力。

 数瞬の後、爆発地には何も残っていなかった。

 全てのオークがエフェクトに還ってしまったのだ。断末魔の叫びも許さず。

 完全なオーバーキルだった。


 まあ、これは覚えたばかりの魔法の使い勝手を試す場なので問題無い。


「……威力が大きすぎてどれくらいのダメージが入るか分からんな」


 事を起こした張本人のメルトが冷静にコメントする。

 まあ、ボス以外にはちょっと勿体ないよな。このユニークスキルは。


「『アポカリプス』はボス専用にした方が良いんじゃないか?」


「そのようだ。この塔にはもっと強いモンスターは出ないのか?」


「残念ながら〈ランク4〉だとシルバーオークが一番強いな。メルトたちは初級上位ショッコーをクリアしていないから〈ランク5〉には入ダンできないしな」


「そうか。威力が高すぎるというのも困ったものだな」


 言葉とは裏腹にあまり困った顔をしていないメルト。

 どうやらユニークスキル『アポカリプス』に大変満足したらしい。

 と、こっそりミサトが教えてくれた。


 無表情のようにしか見えないがミサトにはあれでメルトの喜怒哀楽が分かるらしい。

 さすが、長い付き合いなだけある。


「さあ皆さん、次が来ますわよ。準備してくださいまし」


 リーナの声と共に奥の扉が開き、またぞろぞろとオークの団体さんがお着きになられた。

 おっと、いけない。すぐに熱烈な歓迎で出迎えなければ。


「やあやあやあ、シルバーオークたちよく来てくれた。存分に楽しんでいってほしい『アピール』!」


「『ビーム』ですわ!」


 俺はオークの団体に『アピール』を行ない歓迎すると、速攻でリーナの『ビーム』が飛んでいった。

 一部のオークに直撃しプギャーと響く。


 こうしてリーナたちはしばらくオークを相手に新しい〈スキル〉〈魔法〉を練習していったのだった。




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