第347話 会場に到着。めぼしい物をチェックしよう。
「こちらがシングルオークションの会場でございます」
「ご苦労様セレスタン」
セレスタンの案内に礼を言って、とある会場に俺たちは足を踏み入れていた。
「なんだか劇場みたいな作りね。この札は何かしら?」
「ラナ殿下、これで買値を告げるのよ。正式名称は私も知らないのだけど」
ラナが会場に入った瞬間から目新しさにいたるところに興味を示し、シエラが知る限りの情報を伝えている。
「ん、ここ。なんか暗い」
「暗いと言うか、空気が張り詰めているというか感じか? これがオークションの雰囲気なのか」
直感持ちのカルアが会場の雰囲気に猫耳がペタンとし、リカもこの空気がなれない様子だ。
確かに、こういう会場ってリアルでは初めて来たが、独特な緊張感があるな。
今回のオークションは、シングルオークション形式だ。
以前訪れたオークションは、所謂ネトオクに近いものだったが、こちらはリアルタイムで行なう競売だな。
静かな熱気ともつかない、独特の雰囲気があった。
今日一緒に来ているのは俺を含めて6名。
俺、セレスタン、ラナ、シエラ、カルア、リカだ。
目的は中級ダンジョン以降で活躍する装備品。主に防具だ。
本来ならギルドメンバー個別で装備は調える手筈なのだが、相手におまかせだと進行しないことがあるというのが今回発覚した。
ゲームでは全ての装備はプレイヤーの一存で揃えていた。
しかし、リアルだと防具類は相手におまかせだ。カルアみたいに防具は必要ないと言い張る子が出た場合など、ダンジョン攻略に支障をきたす場合がある。
ということで、今回は俺たちが介入した形だ。
今後はギルドの方針なんかで防具や武器の更新についても記載しとかなきゃいかんな。
あとでセレスタンたちと相談しておこう。防具は個人で買うには、かなりお高いからな。
以前ハンナが装備を調えていた時も、なんか支払いの時すごく切なそうにしていたし。本来なら16歳の少女にあの額の買い物を任せるというのが酷なのかもしれない。
また、今回はカルアの防具探しが主だが、他にもこれから中級ダンジョンを攻略していくのに
ギルドからの貸与品として、その辺をサポートしていこうと案を出したところ、シエラとセレスタン、リーナから賛成の支持がもらえた形だ。
そして今に至る。
ちなみにリーナは「用事があるので一緒に行けませんわ」と言ってとても名残惜しそうに去っていった。何か書類の束を持って。
確かあれは〈天下一大星〉と取り決めを行なったときの書類だったと思う。サターンたちはこれからあれに同意の印を押さなくてはいけないのか。強く生きてほしいな。
「ゼフィルス様、本日出品される予定の一覧です。こちらをどうぞ。また、席はこちらになります」
「ありがとうセレスタン」
少し遠い目をしていたところ、セレスタンの一言で現実に引き戻される。
6人で横一列の席に座り、一覧表を拝見した。
すると、横に座っていたラナが首を捻って話しかけてくる。
「ねぇゼフィルス。何がどういう物か分からないんだけど?」
「一覧表だからなぁ。まあ順番に司会者が説明してくれるだろ」
一覧表には名称と簡単な説明しか書いていなかった。
むしろ名称が書いていない物まである。第一品目からして「名称秘匿」となっていた。こういうのはサプライズ的な良い物であることが多いので楽しみなのだ。
まあ、それを除いても予備知識が無ければ、何がどんな物か分からんだろうな。
「あなたは当たり前のように分かるのね」
「勇者だからな」
「はぁ……」
シエラの横目にそう答える。いつもの返しにシエラがため息を吐いた。
「それで、何かめぼしい物はあったのかしら?」
「シリーズ装備の単品が何点かあるが、これはそろってこそ真価を発揮する装備だからなぁ。シリーズ効果が付けば強いんだが、単品じゃいらない。というかドロップ品は微妙なものばかりだな」
詳しく読んでみるとドロップ品は
シリーズ装備の単品か、〈銀箱〉産の装備ばかり。まあ〈金箱〉産は本来数が少ないし、ドロップしたら自分たちで使いたいよな。でも〈金箱〉産の装備を期待していた側からすればちょっとどころじゃなく期待はずれだった。
「めぼしい物は生産ギルドの出品物だな。こっちは全種類揃っているし性能も高い。その分いいお値段がするが、狙い目はこの辺だな」
生産ギルドの出品物はセットになっていることが多い。というかセットしか売らない。
さらに生産職が手を入れた装備というのはドロップ品より能力が高い傾向にある。
狙うとしたらどこかの生産ギルドが出品したセット装備だろうな。
いくつかの候補にペンで丸を書く。
お! この装備セットの作製ギルド〈ワッペンシールステッカー〉じゃないか! さすがマリー先輩たちのギルド。良い物を出品している。これも丸だ。
そうだ。あとでマリー先輩の
俺は狙い目の装備セットの価格を書き、またオークションでどのくらいまでその装備にQPを出せるのかを記入してシエラに渡す。
「とりあえずこんな感じだな」
「……ほんと、あなたはなんでもできるわね」
「シエラ、私にも見せて」
シエラに渡した一覧表をラナも一緒になって読むが、ラナは首を捻るだけだった。うん、知ってた。
「ゼフィルス様、そろそろお時間です」
「あ、ゼフィルス。札は私が上げたいわ! どれを上げればいいか指示を頂戴!」
「あいよ~」
ラナめ。オークションを楽しみまくっていやがる。
俺にもやらせてね?
ドキドキと緊張とワクワクが心を占める中、ついにブザーが鳴り、ステージの上で司会者が前に出た。
シングルオークション、開始だな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます