第332話 金曜日は臨時講師。上級生にも〈育成論〉を。
金曜日。
今日は臨時講師の日だ。
先週はダンジョン週間でお休みだったためなんだか久しぶりに感じる。
前回、もう2週間前か。
確か人数がドドンと増えたために教室に入りきらなくなって講堂で授業を行ったんだった。
そして〈転職〉についてをテーマに語ったと思う。
ちょっと爆弾過ぎてあちこちで波紋を呼んだというのも聞いた。
メルトが在籍していたBランクギルド〈金色ビースト〉のように先走って無計画に〈転職〉をした者が現れているというのも聞いている。そこは少し問題だな。
学園長にはさっさと〈転職〉制度の新しい制度を作ってほしいものだが、まあさすがにまだ〈転職〉がどういう影響を及ぼすのかなど不明な点が多い。
制度確立にはまだまだ時間が掛かるだろう。俺も手伝って貢献したいと思う。
さて、今日の授業だが、俺の仕事は〈育成論〉を教えること。
〈転職〉するのは良いが、〈育成論〉を知らなければ勿体ない。そう勿体ないのだ。
せっかく高位職になるという切望を叶えたというのに、弱ければ、育成に失敗すればなんの意味も無い。
〈ダン活〉の、とあるプレイヤーはこう言った。
「
ゲーム〈ダン活〉時代の有名な格言だ。攻略サイトの上にデカデカと書いてあった。
そんなわけで、俺は〈育成論〉と、計画的な〈転職〉のやり方についても、今日は教えていきたいと思う。
後は、今日から新しく2年生と3年生の受け入れも開始した。
そしてお偉いさん方の受け入れはお断りした。
俺が教えるのはあくまで学園の中だ。学園の学生達に向けて、少しでも全体の水準を引き上げ、楽しく
学園外のことは学園長に任せてあるので俺が関わることはしない。
そのために学園の教員を15名まで参加可とした。外のことは彼らが持ち帰って何とかするだろう。
聞いた話では、この15席を取り合って教員の間で色々あったらしい。
何があったんだろうか?
また、2年生と3年生の受け入れを開始したのは〈転職〉の正しい知識を広めてほしいためだな。
〈転職〉の対象となるのは、当り前だが上級生だ。
1年生はすでに『モンスターの撃破』条件をクリアしているため、今〈竜の像〉に行ってもそうそう新しい
つまり〈転職〉はしない。関係ない。
しかし上級生は別だ。
高位職の
そりゃ〈転職〉したいという人は多いだろう。
しかし無計画に〈転職〉してしまえば以前の「〈転職〉したら詰む」状態だ。
自己責任ではあるが、話が違うとこちらに突っかかられても敵わないのでしっかりとした知識を伝えるため、こうして上級生も招くことにした。
問題なのは講堂がかなり狭くなってしまったところだな。
「調べてみましたが、1年生150名、2年生75名、3年生75名。教員15名でした」
「セレスタンは本当にどこからその情報を持ってくるんだ?」
まあ募集人数、つまり枠は決まっていたからそれを見ればいいだけなのだが、セレスタンだとそれも確認せず、ぱっと見で講堂全体の人数を把握してそうで怖い。
いや、優秀なのは良い事なのだが。
ともかく合計300人強。前回よりもさらに多い。
これ、毎週増えていくやつじゃないよな?
一応メルト
さすがにこれ以上の受け入れは難しい。あとで学園長にもそう言っておこう。
俺は一度深く息を吐き、身体の中の空気を入れ換えると気を引き締めて講堂に入室した。
「授業を始める。まずは前回の〈育成論〉のおさらいだ。例とする資料もいくつか持参してある。まずはこれを見て欲しい」
上級生は今日から参加なので、前回の復習もかねて最初から〈育成論〉を説明する。
第一回目から参加している子たちには退屈かもしれないが、〈育成論〉とは何度聞いてもいいものだ。常に新しい発見がある。見えていなかった可能性がある。
同じ説明のはずなのに、2回目、3回目の説明を改めて受けた時インスピレーションが起こることがあるのだ。
一応前回、前々回とは別の資料も持参したので退屈はごまかせると信じたい。
「同じ【ソードマン】でも、スピード型のAに育てた場合とパワー型のBに育てた場合ではメインとなる『スキル』運用が異なる。それぞれに長所があり、短所がある。そこら辺は自分の好みも関わってくるが、自分のパーティの構成と役割を念頭に入れて組むべき点だ。あとパーティは常に変動する。特定の
〈育成論〉の考え方を色々な視点で教えると300人が一斉にメモを取る。
俺は様々なパターンを想定し、説明していく。
中級ダンジョン以降はギルド単位での攻略になる。
パーティは常に入れ替わるため、基本どんなパーティにも合わせられるステータスの方がギルドとしてもありがたいのだ。
自分だけが強くても〈ダン活〉は攻略できない。その辺の考え方をよく教えていく。
「失敗例の一つを見せよう。このステータスを見て欲しい。この人は個人で強かった。〈初心者ダンジョン〉でも
時には失敗したステータスを見せ、なんで失敗したかなどを説明していく。
この失敗例は結構多く、高位職に目立つやっちまったプレイとしてリアル〈ダン活〉でよくおきていることだった。
強いというのも考えものだな。
変に強いから途中まで他の手助けを必要とせずにやってこれてしまった。その
たとえ多少弱くなってもパーティ単位で行動出来るようにステータスを作る、それが上へ行く考え方だ。
その後の質問の時間ではほぼ全員が手を上げた時は困った。
一人目から「〈エデン〉に加入するにはどうすればいいですか」なんて質問をするもんだからもっと困った。
あの上級生は【錬金術師】とのことだけど、うちにはハンナが居るからな。
熱意がやたら凄かったけど、「〈エデン〉は今枠がいっぱいで募集はしていないんだ」と言ってお茶を濁した。
膝から崩れ落ちていたが大丈夫だろうか?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます