第319話 エクストラも終わり、ダンジョン週間も終わる。




 エクストラダンジョンは21時を過ぎたあたりで帰還した。

 いつもなら夕食までには帰るのだが、今日はダンジョンで夕食を食べたからな、その分長く居座ってしまった。


 個人的には日付が変わるギリギリまでダンジョンに居たいのだが、女の子もいるし。

 高校生は22時帰宅が原則なのはこの世界でも変わらない。

 本気で捕まるのは24時からだが。


 というわけで、名残惜しくも帰還した。

 しかし初のギルド遠征の成果はかなり上々だ。メンバー総出でかき集めたことにより、なんだコレってくらいゲットできたからな。

 〈サンダージャベリン号〉に設置してある『空間収納倉庫アイテムボックスLV3』が一杯になるってどういうことだ?

 夕方まではまだ半分も埋まっていなかったのに夕食を食い終わった頃からみんなの顔が変わったぞ。俺もだが。

 あれは美味かった。みんなが本気になるほどに。


「とりあえずこれだけあればしばらくは持つわね!」


 ラナが『空間収納倉庫アイテムボックス』をパカリと開いてそう言った。

 完全に同意だが、あまり開けないでくれ。なんか溢れそうで怖い。というかもう入れようとするな。本当に溢れるぞ。


「ラナ様、そろそろ馬車を仕舞いますので出てきていただけますか?」


「わかったわ」


 馬車からラナが出ると中を入念に確認してエステルが〈空間収納鞄アイテムバッグ〉に入れる。

 コンロなんかも全部片付けてあるのでこれで準備完了だ。

 俺は転移門の前で全員に振り返る。


「今日もお疲れ様! また明日ギルド部屋で会おう! 解散!」


「「「「お疲れ様 (でした)~」」」」


 エクストラダンジョン遠征はこうして終わった。




 しかし、ちょっと採りすぎた。


 食材は〈からくり馬車2号〉の『空間収納倉庫アイテムボックスLV2』に移して保管しておこう、2号はしばらく出番は無いだろうしな。

 ただ〈サンダージャベリン号〉の『空間収納倉庫アイテムボックスLV3』は3分の1が食材で埋まってしまったな。

 これを売るか、自分たちで食べるかはまた後で相談しよう。


 ゲーム時代は結構良い値段で売れたため、食材は全部売り払っていたので収納倉庫を圧迫することも無かった。この3分の1はしばらくこのままかもしれない。

 リアルは倉庫問題があるな。

 QP使ってギルド部屋設置型の『空間収納倉庫アイテムボックス』をとり付けてもらうか? あれすごいQP取られるが今は結構潤沢にあるし、案外悪くない案かもしれない。

 一応検討しておこう。


 あと忘れてはいけない重要なことがある。


 もちろん〈幸猫様〉へのお供えだ。

 今回はすごいぞ。

 〈食材と畜産ダンジョン〉の〈ボスモーギュ〉からドロップする〈モーギュのミスジ肉〉を〈金箱〉産の〈お肉ブラスター〉でハンナが超美味しく焼き上げた〈最高のミスジ焼肉〉だ。

 俺も食べたが、思わず目と口からビームが出るかと思ったほど美味かった。

 あまりのガツンと来る暴力的な香りに、人前でお供えできないくらいのスペシャルメニューである


 みんなが帰った後、俺は1人ギルド部屋に入り、〈幸猫様〉にこれをお供えする。


「〈幸猫様〉〈幸猫様〉! 今日も素晴らしいドロップをありがとうございます! こちら今日の成果です! 是非〈幸猫様〉もご賞味ください! そしてこれからも良いドロップをよろしくお願いします!」


 神棚に〈最高のミスジ焼肉〉をお供えして、俺は真剣にお願いする。

 これだけの美食だ。きっと〈幸猫様〉も良い物を授けてくれるに違いない。


 しっかりと祈ると俺はその場を後にし、帰宅した。


 翌日、〈最高のミスジ焼肉〉は神棚からなくなっていた。きっとお気に召したのだろう。


 ゲームの時も〈幸猫様〉のお供えはいつの間にか消えていたが、その後のドロップは良い物が当たりやすくなる気がするんだ。次のダンジョン攻略が楽しみである。




 翌日以降のダンジョン週間は瞬く間に過ぎていった。

 みんなエクストラダンジョンで美味しいお肉を食べて、野菜も食べて、カレーライスも食べて、入れ替わりで夜までボス周回をやりまくったからな。

 目的だった英気は十分養えただろう。


 月曜日からのみんなの気合は一味も二味も違った。

 おかげでダンジョンがすごく捗るんだ

 この週は本当にいろんなダンジョンに行った。


 いよいよ中級下位チュカ3つ目となるダンジョンにも挑むことにした。

 そろそろ中級中位チュウチュウに行っておきたい気持ちもある。

 というか早くDランクになりたい。

 なりたいんだ。うん。まだまだ先は長いが。


 また、ギルドメンバーも順番に中級ダンジョンに慣らしていった。

 目標は全メンバーのLV50超えと、中級下位チュカの3つを攻略し、中級中位チュウチュウに進出することだ。

 まあ、あと7日しかない。7日で全メンバー中級中位チュウチュウまで行くことは無理だ。なのでできる所まで頑張ることにする。


 俺もパーティを分け、このパーティならどこのダンジョンをクリアできるかを教えて送り出したり、また共に参加したりしてメンバーの中級下位チュカの攻略を助けたりした。


 俺、エステル、ラナはすでに中級下位チュカを2つクリアしているのでノルマ達成は早かった。

 しかし、3人では中級中位チュウチュウの攻略は不可能なので、それぞれで他のパーティに参加し、メンバーを助けていくことになった。


 あとは攻略が詰まったときには相談に乗ったり、フィールドボスをギルドメンバー10人で倒すなんて事もした。

 あれは楽しかった。フィールドボスは参加人数が増えれば増えるほどステータスが上がるのだ。ハンディだな。

 ただ報酬は変わらないのであまりやりたくはないが、最上級ダンジョンなんかに行けば普通にやることになるので教えておいた。これも経験だ。


 また、最下層では上級生と会う機会が増えた。

 特に人気と言われるダンジョン、〈楠玉の遺跡ダンジョン〉や〈三本の木橋ダンジョン〉、〈盗鼠の根城ダンジョン〉の最奥はすごい人だかりで、とてもボス周回はできなかった。上級生たちもダンジョン週間中はずっとダンジョンに明け暮れているみたいなので遭遇率も高いらしい。

 ボス周回はほとんど上級生が来ない、人気の無いダンジョンですることになった。今のところ〈ジュラパ〉が優秀だ。


 木曜日には大体の効率化が済み、

 最終的には2パーティに分けて、片方に俺が入ってダンジョン攻略。

 もう片方は人気の無いダンジョン、〈丘陵の恐竜ダンジョン〉でボス周回、LV上げを行なう形に落ち着いた。


 俺はダンジョンの道順を知っているので、エステルがいなくても中級下位チュカなら2日で攻略可能だ。

 エステルも〈丘陵の恐竜ダンジョン〉を何度も行き来することで道順を覚えたらしく最奥までキャリーできるようになった。

 これで〈エデン〉のメンバーはリーナを除いて全員が〈丘陵の恐竜ダンジョン〉をクリアすることに成功。

 他にも1つどこかしらのダンジョンをクリアして、中級下位チュカ卒業にリーチをかけるメンバーが大半、というところでダンジョン週間は終了した。


 俺はLV65まで上がった。カンストまであと少しだ。


 5月末には最後の学園長クエストである〈最高級からくり馬車〉の納品も済み、大量のQPをゲットできた。



 とても充実したダンジョン週間だったな。




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