第307話 ゼフィルスピンチ。ドロップが良すぎたんだ!




「おはようゼフィルス! いよいよ今日はエクストラダンジョンね!」


「ラナ、昨日からずっと楽しみにしてた」


「それはカルアもでしょ!」


 日曜日、朝からギルド部屋に入るととても楽しみな顔をしたラナとカルアがやってきてそう言った。

 カルアに昨日の様子を暴露されてラナの顔が少し赤くなっているのが可愛い。


「おはようラナ、カルア! 俺も初のエクストラダンジョン、楽しみにしてたぜ!」


「ルルも楽しみにしていたのですよ!」


 俺も彼女たちに合わせてテンション高めに挨拶すると、俺の後ろにいたルルもぴょんぴょん跳ねながらそう言った。


「あ、ルルもおはよう。なに、2人は一緒に来たの?」


「おい、その目はなんだ? ちょっと下で一緒になっただけだぞ?」


 ラナがとても疑わしい者を見る目つきで俺を見た。失敬な。


「途中までシェリアも一緒だったのですよ。でも別のギルドで少し用事があったみたいなので一旦分かれたのです。多分すぐに来ると思うのですよ」


「そういう事ね。もう、ゼフィルスが変な嗜好しこうに目覚めたのかと思ったじゃない」


思考しこう、です?」


「ルルは気にしなくていいぞ、ラナの寝言だからな」


「寝ているのですか?」


「寝てないわよ!」


 そんなやりとりをしつつ和気藹々とギルドに入る。

 どうやら皆、これから行くエクストラダンジョンにテンションが高い様子だ。


「おはようゼフィルス。ちょうど良かったわ、昨日の戦果をやりとりしたいから少し来てくれるかしら」


「シエラおはよう。了解、ちょっと待ってな」


「おはようございますゼフィルス様」


「おはようございます」


「セレスタン、シズもおはよう」


 ギルド部屋の一角でシエラとセレスタン、それにシズが書類を手に仕事をしていた。おそらくギルドの運営状況についてのあれやこれやだろう。シエラとセレスタンにはいつも世話になっている。

 しかし、シズはいったいどうしたというのだろうか?


 荷物を整理してそちら側に向かうとセレスタンとシズが優雅に礼をとった。


「お待たせ、これが昨日の報告な」


 簡単に纏めておいた書類をシエラに渡す。

 これはダンジョン利用や消耗品などの使用状況、買い物などの経費に関わる報告書だ。

 ギルドの運営は、将来的な業務の練習も兼ねているため結構本格的な書類のあれやこれやもやりとりしていたりする。


 最初は口頭での報告だけで済ませていたのだが、ある日セレスタンが「準備が整いました」と、かなり本格的な書類や何かを用意してからは、規模の大きさによりこうして報告書を提出する形にしていた。

 これもリアルならでは、だな。ゲームではこんなものは無かった。


 とはいえ、書類の方はかなり簡易的で、買い物なんかは〈学生手帳〉のキャッシュレス利用記録通り書き込めばすぐに終わるようになっているなど負担はかなり少ない。

 その辺学生向けの書類、ということなんだろう。

 さすがセレスタンだ。


「シズは手伝いか?」


「はい。シエラ様から相談を受けまして、雑事を行なっております」


「シズのおかげで助かっているわ。ダンジョンに行く度に仕事が溜まるから」


 どうやらこちらはかなり負担があるようだ。

 それなら俺に言ってくれればいいのに。


「あなたはやるべき事がたくさんあるでしょ。こんな雑事は私たちでやっておくから気にしなくて良いのよ。ゼフィルスの役目はこのギルドをSランクにすること。そのサポートや後のことは私たちに任せておきなさい」


 シエラが真剣な眼差しで俺を見て言う。

 その姿はとても気品に満ちていて、思わずドキッとさせられた。


「それはそうと、この装備代○○ぴー万ミールについて説明して貰えるかしら? 昨日、いったい何を買ったのよ?」


「お、おう」


 高揚した気持ちが一瞬で冷や水を浴びせられた。


 そういえば昨日は〈バトルウルフ〉を狩り終えてからリーナとC道の〈ワッペンシールステッカー〉ギルドを訪ねたんだった。

 そこで〈ビリビリクマリス〉戦の〈パーフェクトビューティフォー現象〉で引き当てた、例のレアボス〈金箱〉産レシピを〈幼若竜〉で解読してもらった。


 解読の結果現れたのは、〈雷光の衣鎧ころもよろいシリーズ〉と呼ばれるシリーズ装備だったのだ!

 しかもシリーズ全装備が書かれた全集レシピである。

 つまり〈頭〉〈体①〉〈体②〉〈腕〉〈足〉の五つ全ての作り方が書かれたレシピだった。


 これレアボス〈金箱〉産級だぜ?


 シリーズ装備とは、3種類以上装備していると〈シリーズスキル〉が付与される優秀な防具だ。

〈シリーズスキル〉はその数で効果が変わり、例えば3種類で一つ、4種類装備していれば二つ、5種類以上を装備していれば三つのスキルが付与される感じに、そのシリーズの装備を着ければ着けるほど強力な能力が付与される。


〈雷光の衣鎧ころもよろいシリーズ〉は雷属性に対して非常に高い耐性を持つ。

『小耐性』も加われば雷属性魔法は大幅にダメージが削減され、防具に付属される〈スキル〉も〈シリーズスキル〉を合わせれば10を超える。

 レアボスの〈金箱〉産級ということもあり、上級下位ジョーカーでも活躍できるレベルの超優秀な装備である。


 現状〈エデン〉が持つ防具の中でピカイチの性能を持つ事は間違いない。

 学園長クエストで素材を集めていたのはこれのための可能性が高いな。

 できれば5種類以上の装備でコンプリートしておきたい〈シリーズ装備〉、それが全部載った全集レシピとか、さ。


 こんなのがドロップしちゃったら、分かるだろ?


 そういうことである。


 なお、〈ビリビリクマリス〉の素材は山ほどあったので、払ったのは作製代のみだが、やはり中級レアボス装備は高いな。○○ぴー万ミールもするなんてな。ハハハ!


「ちゃんとギルドの攻略に役立てるので許してください」


「ダメよ」


 マジで?




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