第286話 やられたゼフィルスの敵討ち? 全力の攻撃。
「全員馬車から降りて戦闘準備! 『アピール』! ラナはバフを頼む!」
そのボスを確認した瞬間、俺は〈サンダージャベリン号〉から飛び降りていた。
リカ、カルア、ラナがまだ馬車から出てこないのを確認、エステルも馬車に乗りながらの戦闘は難しい。
今動けるのは俺しかいない、すぐにヘイトを稼ぎ、タゲをエステルから俺に移した。
「ビビル! ビビル! ビビルゥゥゥ!!!」
「『ガードラッシュ』!」
徘徊型Fボス〈ビビルクマジロー〉がすぐに振り向きざまに攻撃してくるのを防御スキルで受ける。
右、左、右、とフック系のスキル『ビビル・シビレル・クマパンチ』を繰り出してきたが〈天空の盾〉で難なく防御を決める。
ちなみにクマパンチとなっているが、アルマジロパンチじゃないのというツッコミはなしだ。
何しろこいつの見た目は、アルマジロの
というかクマだろこいつ。背中以外全部クマだよ。アルマジロ要素がちょびっとしかないよ。どこがアルマジロなんだよ、名前も〈ビビルクマジロー〉ってどういうことなんだ!
「ビビッテルゥゥゥゥ!!」
「ビビってねぇから! 『ソニックソード』!」
素早い移動からの斬撃スキル。
俺はこれを使い、繰り出される『ビビル・ストレートパンチ』を華麗に回避して背中側に回り込んで斬り付けた。
「ビビル!?」
「おっしゃ! ドンドン行くぜ! 『
「ビビルゥゥゥ!? ビビル!?」
立て続けに攻撃されて慌てて振り向く〈ビビルクマジロー〉。
よし、まずは引きつける事に成功だ。俺もだいぶプレイヤースキルが上がったな!
徘徊型ボスは突然の遭遇戦になることも多い、そのためこうして少しの間体勢を立て直す時間を稼ぐことが重要だ。奇襲を受けて、はい全滅なんてゲーム〈ダン活〉時代、山ほど経験したからな。
今は全力で皆が準備完了する時間を稼ぐ!
皆がピンチの時に活躍する存在こそ【勇者】! 【勇者】のオールマイティを今、生かす時!
「待たせたわねゼフィルス! 真打登場よ! 『守護の加護』! 『回復の祈り』! 『獅子の加護』!」
「すまないゼフィルス、待たせた、すぐ代わろう。『影武者』! 今から私が相手だ! 『名乗り』!」
一瞬で【勇者】の出番が終わった。
あれ? おかしいな。俺、今すげぇ気合を入れたところだったのにタゲ取られちゃったぞ?
いや、いいんだけどな。それが目的だったんだしな。悔しくなんてないもんな!
「『属性剣・火』! 『ハヤブサストライク』! 『シャインライトニング』! 『ライトニングバースト』!」
「ぜ、ゼフィルス!? そんなに攻撃してはタゲが移ってしまうぞ!?」
俺の全力攻撃にリカが戸惑った声を上げる。
八つ当たりだ! 八つ当たりしてやるぞ! 倒れろ偽者のクマ! いや偽者のアルマジロ? くっ、本物がどっちかわからない!
「ビビィル!」
一瞬の迷いにタイミング悪く〈クマジロー〉がこちらを向いた。
――あ、タゲ移った。
「ビビルゥ!!」
「ぐはぁっ!?」
そう思った瞬間には〈クマジロー〉の拳にぶん殴られていた。
「「ゼフィルスー!?」」
まるで痛いじゃないかこの野郎と言わんばかりに振り上げられた拳、おそらくスキル『ビビラナイ・アッパーカット』によって吹き飛ばされ、宙を舞う俺。
ラナとリカの驚愕の声が重なって聞こえてきた。
「アウチ!」
そして頭から着地。思いっきりダウンした。
リアル〈ダン活〉に来て初めてのダウンだ。
ぐっ、ユニークスキル後の硬直のように体が動かない。これがダウンか!
「よ、よくもゼフィルスを! 許さないんだから! 『聖光の耀剣』! 『聖光の宝樹』! 『光の刃』! 『光の柱』!」
「おのれ、覚悟してもらおう! 『飛鳥落とし』! 『焔斬り』! 『凍砕斬』!」
「ビビ!?」
「ん! ゼフィルス、どうしたの?」
「カルア、ゼフィルスがやられたわ!」
やられてねぇよ!? ダウンしただけだよ!
遅れてやって来たカルアにラナがとんでもないことを言う。
「カルア、こちらに来てくれ! 押し通す!」
「ん。絶対倒す。『フォースソニック』! 『鱗剝ぎ』!」
リカの真剣な声にカルアが二刀の短剣を出し、素早い移動からの4連斬りからの防御力低下スキルで踊りかかった。
「エステル! 『姫騎士覚醒』を許可するわ! ゼフィルスの
「え、えっと、はい! 『姫騎士覚醒』!」
待ってくれ! 俺の分も残しておいてくれ! ダウンしている間にボス戦が終わっちゃう!
エステルも、俺がやられてないことに気が付いているくせに『姫騎士覚醒』しやがった!
それすぐに終わっちゃうやつ!
「ユニークスキル『双・燕桜』!」
「ビビュッ!?」
「ん、『急所一刺し』!」
「ビビッリュ!?」
「ナイスよリカ、カルア! クリティカルダウンしたわ! エステルやっちゃって!」
「行きます! 『ロングスラスト』! 『閃光一閃突き』! 『トリプルシュート』! 『プレシャススラスト』! 『ロングスラスト』!――――」
「私らも負けてられないな。『横文字二線』! 『十字斬り』! 『光一閃』! 『闇払い』!」
「ん、全力で狩る。『32スターストーム』! 『デルタストリーム』! 『スターブーストトルネード』! 『スターバースト・レインエッジ』!」
「ビ! ビ! ビビ! ビビルゥゥ………」
「ぁ……」
俺がダウンから復帰して立ち上がったときには、哀れ〈クマジロー〉のHPが勢いよく減っていき、そのままゼロになるところだった。
エフェクトに包まれる瞬間、〈クマジロー〉のつぶらな瞳と目が合った。
その目には、怯えと恐怖が滲んでいるようだった。
先ほど思いっきりぶん殴ってくれた相手だが、こうなってしまうと哀れにしか思えない。
俺はそっと視線を逸らし、〈クマジロー〉の冥福を祈ったのだった。
徘徊型フィールドボス〈ビビルクマジロー〉。
――よくわからないけど、勝利だ。
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