第148話 リカとカルアの攻略状況と今後の方針。




 ガント先輩に〈からくり馬車のレシピ〉と素材を全部預け、前金をとりあえずギルド予算から500万ミールほど払っておく。

 勝手に決めて依頼を掛けてしまったけど、皆に話せばギルド予算が下りるだろう。ダメだったら俺のポケットマネーから出しても良いしな。


 目的の物を受け取ったガント先輩はまた無表情に戻りただ一言「五日後に来い」とだけ残して帰っていった。以前〈真魂のネックレス〉を買った店に行けばいいということだろう。


 その後、マリー先輩にも〈銀箱〉産アイテム〈ナックルガード〉の〈デザインペイント変更〉を依頼する。俺の天空シリーズ装備に合うようばっちりコーディネートすると約束してくれた。これでタダ券は6枚になった。


 他にもガント先輩に預けなかった素材はほとんどを〈ワッペンシールステッカー〉ギルドに卸し、昨日の〈孤島の花畑ダンジョン〉の査定表を貰う。


 〈サボッテンダー〉は4回しか倒さなかったのであまり報酬は多くない。

 採取した素材も多くがハンナ行きになったからな。


 ということで今回の報酬は505万ミールだった。周回していないとこんなものだ。

 ボスの〈サボッテンダー〉素材は宝箱を含め合計240万ミール。一回辺り平均60万ミールが報酬だな。ここら辺は俺の感覚と同じだ。ちなみに〈銀箱〉産ドロップは売っていないぞ。


 一応纏めると、初級ダンジョンだとボスは一回辺り、下位平均10万ミール、中位平均30万ミール、上位平均70万ミールほどが売値となる。

 周回の計画などを立てやすくなるので覚えておくと何かと便利だ。


 閑話休題




 翌日水曜日。

 今日は朝からギルド部屋に来ていた。


「よう、なんか久しぶりな気がするが、そっちの状況はどうだ? 元気にやってたか?」


 ギルド部屋に入ると珍しくカルアとリカと会ったので近況を聞いてみる。


「ん。ゼフィルスが色々してくれたおかげ。装備もありがとう」


「おう。だが素材代はちゃんとラナたちに払ってるしマリー先輩の所から装備を買ったのもカルアだ。あまり気にしなくていいぞ」


「うん。でも、他にもたくさんお世話になってる。ありがとう」


 カルアがぺこりと頭を下げて礼を言う。

 はは。お礼を言われるのはなんかこそばゆいなぁ。


「私からも感謝を言わせてくれ。【姫侍】は非常に強い。正直、初級下位ダンジョンどころか初級中位ダンジョンのモンスターでも相手にならないほどだ」


 続いてリカがグッと握りこぶしを作りながら感謝を述べる。

 だが、リカが初級中位で無双できるのはその〈姫職〉装備のおかげだと思うぞ? ラナたちと同じでしっかり中級装備で身を固められたらそりゃあ初級中位ショッチューのモンスターでは相手にならないだろう。

 ま、いつか気が付くだろうから今は素直に感謝を受け取ることにする。


「そりゃあ良かったな。セレスタンから聞いているぞ。〈ナイトゴブリン〉を倒したんだってな」


 正直なところ、自分たちのパーティが今ノリりなので先にばっかり進み、新メンバーのカルアとリカをほったらかしにしていたのを少し気にしていた。

 出来るだけの補助をしてやっているが、未だ一度もパーティを組んでいないし、同じギルドなのにこうして会うことすらほとんどない。もう少し交流を深めたいところだ。


 一応セレスタンを通じて二人の近況は聞いていた。

 それによると、昨日二人のパーティで〈ナイトゴブリン〉に挑み、見事勝利したらしい。

 正直言って、それを聞いた時はおったまげたものだ。


 初級中位ショッチューからはボスが非常に強くなる。何せお供が付くからな。

 ソロでの攻略はほぼ出来なくなり、パーティでの攻略が必須な難易度になる。

 それをたった二人のパーティでクリアしたと言うんだからびっくりだ。普通はフルパーティで挑むものだぞ?


 しかしこれで二人は初級中位ダンジョン攻略者なので一目を置かれることになる。

 まだ一年生で初級中位ダンジョン攻略者は少ない、というのもあるが単純に初級中位ダンジョンのボスの難易度が高いのだ。

 聞いた話では、普通1年生がここまで来るのに2,3ヶ月は掛かるらしい。



「でも次が難しい」


「ああ、ゴーストだからな。【スターキャット】は属性攻撃も無いから厳しいか」


 初級ダンジョンの壁の一つとして〈ゴースト特性〉というものがある。

 次の〈幽霊の洞窟ダンジョン〉は幽霊ゴースト系モンスターの多いダンジョンなので物理攻撃しか持っていない職業ジョブとは相性が悪いのだ。【筋肉戦士】とかな。


 まあ、属性付きの装備を身につければ簡単に進めるのだけど。

 しかし、その肝心の属性付きの〈短剣〉を持っていない。

 リカも同様だ。属性付きの〈刀〉はもっと手に入り難い。


 どういった攻略を予定しているのか聞いてみることにした。


「今後はカルアのために属性付きの短剣を求めて〈野草の草原ダンジョン〉を回るつもりだ。ボスのドロップで落とせば最良だが、ダメだった場合は素材の収入で購入を予定している」


 リカがすらすらと今後の予定を答えてくれる。カルアとリカのパーティも色々と考えているようだ。

 しかし、それだったら俺たちの誰かが入ってダンジョンを抜けさせる方が効率的だな。


 俺たちも次の初級上位ダンジョンを攻略すればEランク試験が受けられるようになり、それをクリアすれば〈エデン〉もEランクギルドの仲間入りだ。上限人数も増えるし新メンバーも入ってくる。

 Eランクになれば攻略は一時的に落ち着くのでリカとカルアの手伝いも出来るはずだ。


 Eランクギルドになれば中級ダンジョンにも挑めるようになるのだが、実はそこで一回足止めを食らうことになる。

 中級ダンジョンからは少し毛色が変わってくるので、今のメンバーでは躓く可能性が高いのだ。

 いくつかの理由から中級ダンジョンに挑む前に、まず後続を育てた方が効率が良い。特に斥候職を育てたいと思っている。



 つまり結論として、俺たちがEランク試験を合格するまでに属性短剣がドロップしない場合は俺たちのメンバーがサポートに入ってカルアとリカを〈幽霊の洞窟ダンジョン〉の攻略を手助けする。という事にしよう。


 後続を助けるのも先達せんだつの基本だ。そうしないと、ギルドバトルでもそうだが誰か少数が突出しているだけでは先へ進むことは出来ない。


 そうカルアとリカに説明した。


「ん。わかった」


「了解した。君が協力してくれるというのなら心強いな」


 二人とも異論は無いようだ。


 そういえば、二人の職業ジョブLVはどこまで上がったのだろうか?


 俺も昨日、三段階目のツリーが解放される職業ジョブLV40に届いたのだ。

 今日は朝からここでステ振りを行うつもりだった。ついでに二人のステータスも確認させてもらおうかな。




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