第132話 採取ポイントと隠し扉巡り! 扉の鍵はどこだ




「あ、採取ポイントあったよー」


「お、やっとか」


 その後少しずつ階層を潜りながら探索したのだが、採取ポイントの発見は芳しくなかった。やはり上級生が取りつくしているらしい。

 なんとか記憶の中にあるゲームの時の採取ポイントをめぐっていくと少しだが採取ポイントを確保できたのが幸いか。


「今回はどうだ?」


「うん。バッチシ! 例の素材手に入ったよ!」


「よし。この調子でどんどん行こうか」


 今ハンナに集めさせている素材は、今後ハンナがアタッカーとして俺たちに付いてくるために必要な重要アイテム、その欠かせない材料だ。


 後で救済場所セーフティエリアにて作ってもらい、ボスで初披露の予定だ。楽しみにしていてくれ。


「あ、モンスターを発見! 皆、狩るわよー!」


 採取中、周囲の索敵を頼んでいたラナより元気な報告が上がった。


 すっかり〈ダン活〉にハマり込んだプレイヤーって感じだな。

 いいね。俺とハンナも素早く準備を整え、声のあった方へ向かう。


「今回は〈ツルー〉5体ね! 援護するから、シエラ頼むわよ!」


「任せて。『挑発』!」


 俺とハンナが到着した時にはすでに戦闘は始まっていた。少しは待っててくれよ、待ちきれない子どもか! でもその気持ち、凄く分かっちゃう!


「参戦! 『ソニックソード』!」


「『フレアランス』!」


 〈孤島の花畑ダンジョン〉のモンスターは植物型が中心だ。

 今回遭遇したモンスターはモミの木からツルが伸びたモンスター、名称〈ツルー〉。

 根っこが何故か土の上にあるせいで移動も可能なモンスターだ。

 いや、ここに登場するモンスターは大体が移動可能だな。最初見た時はおったまげたぜ。


 植物モンスターの多くは斬撃攻撃と火属性攻撃が有効だ。

 俺とハンナ、エステルはこのダンジョンで有利に立ち回れるだろう。

 それも最初に〈孤島の花畑ダンジョン〉を選んだ理由の一つだ。



「あう。痛いです」


「エステル。あんまりタンクに近づくな、攻撃に巻き込まれるぞ!」


 〈ツルー〉のムチは小範囲攻撃だ。あんまりタンクの近くに居ると攻撃に巻き込まれるので注意が必要だ。エステルは迂闊うかつにも巻き込まれた。まだまだ慣れが必要だな。


 それでも高ステータスに加え装備も充実している俺たちの敵ではなく、物の数秒で戦闘は終了したが、さすがに被弾が増えてきたな。


「エステル、大丈夫?」


「はい。ラナ様が回復してくださったので、すでに全快です」


「攻撃を受ける事が増えてきたな。だが、ステータスや防具が良い仕事してるからあまり被害は無さそうか?」


 何しろこのためにエステルの【VIT】値は110もある。シエラが【VIT】170なので相当振った数値だな。前衛はとにかく被弾が増える。これはタンクが攻撃を受け持っても少なからず発生するので多少は硬くなっておかなければならない。


 そのおかげもあってエステルのダメージは微々たるものだ。

 元々範囲攻撃系は威力が低いので今はまだ問題ない。


「今のところ、大丈夫そうですが」


「この先もっと多くの巻き込まれが起こる。今のうちに居て良い位置、居てはいけない位置などを知っておくといいぞ」


「ご教授ありがとうございます」


 エステルが畏まって礼をする。


 ま、それは俺にも言える事だ。まだリアル〈ダン活〉のプレイヤースキルは勉強中。

 お互いスキルアップしていこうな!




 そのまま5層を探索中、俺はとある壁の前で立ち止まった。


「? ゼフィルス君? どうかしたの?」


 突然立ち止まった俺にハンナが首をかしげて見上げてくる。

 ぐ、可愛いなその仕草。


 ではなく、ここは例のポイントだ。

 手で触れてみると案の定『直感』がここに何かあるぞと教えてくれる。

 当然、こんな何の変哲も無い壁に何があるかなんてわかりきった事である。


「『直感』が反応した。ここに隠し扉があるぞ」


「え!」


「お宝!?」


「超ゲットだ!」


 なんかラナとハンナの反応が面白かったのでついノッてしまった。

 それはともかく、俺は壁を詳しく観察しつつ指示を出す。


「ラナ、例の鍵をくれ」


「え? なんだっけ?」


 おい。忘れんなよ王女。


 正式名称〈隠し扉の万能鍵(鉄)〉通称:〈扉の鉄鍵〉。

 この隠し扉を開けるために必要な重要な鍵だ。

 まあリアルなら壁ごとぶっ壊せるのだが、せっかく鍵ゲットしたんだから使う。

 使わないなんてとんでもない!


 それをラナが当てたと記憶しているのだが、なんで当てた本人が忘れてるの?

 と思っていたらスッと出てきたエステルがラナの耳に口を近づけた。


「ラナ様、―――こしょこしょこしょ」


「ひう、くすぐったい! でも思い出したわ! あの金箱の鍵ね! 別に忘れていたわけじゃないわよ?」


 嘘をつけ。今絶対エステルから教えてもらってただろ。しかも思い出したって言わなかったか?


 しかし、そんな野暮やぼな事を言うメンバーは誰もおらず、むしろ生暖かい目で見られるのがラナだ。

 さすがだよこの王女。俺、ラナのキャラが大好きです。



 ラナが自分の〈空間収納鞄アイテムバッグ(容量:少量)〉から〈扉の鉄鍵〉を取り出したので受け取ろうかと手を伸ばしたら、何故かひょいっと躱された。何?


「私に開けさせて! 隠し扉って興味があったのよ!」


「スティール!」


「ああ!?」


 俺は有り余る【STR】値に任せて問答無用で〈扉の鍵〉をひったくった。


「ちょっと、私の鍵!?」


 ラナが抗議の声を上げるが、華麗にスルーする。ちなみにラナの鍵じゃない、ラナが当てた鍵だ。

 似たようなものかもしれないが。


 そのまま先ほど見つけていた鍵穴に突き刺すと、扉がゴゴゴゴと音を立てて横にスライドした。


「わ! すごい!」


「さすがゼフィルス殿です」


「本当に隠し扉ね。初級上位ダンジョンから現れるとは聞いていたけれど、幸先良いわね」


 俺が場所を全部把握しているからな! これも幸先が良いって言うのかな?


「もう、今回はいいわ! でも次は開けさせてよね!」


 聞き分けが良いのもラナの美点。

 まあ今回は俺も、前回の隠し扉は破壊したために正規の方法で開けてみたかったんだ。

 次は他の人にも譲るから許してほしい。何、このダンジョンにはまだ3つも隠し扉が残ってる。


 それはともかく、隠し扉が開く瞬間ってすごくワクワクドキドキするな!

 ゴゴゴゴって音が鳴るのがロマンを誘う!


 さて、中身をご拝見。


「銀箱!」


 まず最初に反応したのはやっぱりハンナだった。さすが。


 俺はもう中身を知っているので彼女たちに開けさせてあげよう。


「えっと、次は誰だったかしら?」


「前回エステルが開けていなかったのだし、エステルで良いのではないかしら」


「私ですか?」


「はい。私も良いと思います」


 前回の〈ビューティフォー現象〉の時エステルだけが開けていなかったため今回はエステルが開ける事になったようだ。


「では、行きます」


 躊躇ためらいもなく、いどむといった様子でエステルが宝箱の前に座り、パカリと開いた。


「これは、ルーペ?」


「ああ。『鑑定LV5』が付与されたアイテム〈メドラ〉だな。マリー先輩が使っていた〈解るクン〉のと同じタイプだ。中級中位ダンジョンのドロップまでは『鑑定』出来るから便利だぞ」


 ちなみにマリー先輩の〈解るクン〉は『鑑定LV4』なので〈メドラ〉の方が優秀だ。ふはは。


 今までのアイテムは全て俺の目利きにより物理で鑑定してきたが、ここで〈スキル〉の『鑑定』が手に入った形だな。

 これで今後は俺無しでも、彼女たちでアイテムを判別することができるようになる。


 まあ、しばらく〈空間収納鞄アイテムバッグ〉行きか。

 もしくはカルアたちに持たせても良いか。


 良いアイテムも手に入ったのでこの調子で隠し扉全制覇してみようか!




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