第119話 「子爵」の子も採用です。問題はありません。
ケイシェリアの面接の結果、採用が決定した。
いや、したけどちょっと待ってほしい。
「採用ではあるが、正式なギルド加入はもう少し日を置いても良いか?」
「はい。構いませんが、どのくらいでしょう?」
まあ、長く待たせる気は無い。
しかし、俺たちのギルドってまだFランクなんだよ。
Fランクの参加人数は10人まで。
この後4人面接があるのでそれがすべて採用だった場合、人数がオーバーしてしまう。
「俺たちがEランクに上がるまで、まあ来週中には行けると思うぜ」
Eランクに上がる条件はギルドマスターが初級上位ダンジョン3つクリア。その他諸々あるが、とりあえずそれを満たせれば良しだ。
今日は土曜日。
おそらくハンナの装備が月曜日あたりには完成するので試運転がてら初級上位ダンジョンに挑むことになるだろう。遅くとも水曜日にはダンジョンアタックできる。
そしたらすぐだ。多少強くなろうと所詮は初級ダンジョン。
3~4日で攻略できるだろうと想定している。
「分かりました。では来週末、ギルド〈エデン〉がEランクに上がったら正式に加入するということで、よろしくお願いいたします」
「おう。こちらこそよろしくな。とりあえず【精霊術師】についての伝授や、〈初心者ダンジョン〉の話もある。また時間をもらえるか?」
「もちろんです」
今決めることはこれくらいで良いだろう。
続きは【精霊術師】に就いてからだな。
ちなみにギルドメンバーでなくてもパーティは組めるため正式加入前に育成することは可能だ。
それじゃギルドの意味無くね? と思うかもしれないが、ギルドバトル〈ランク戦〉ではギルドメンバーしか参加できない決まりなのでちゃんと意味は有るぞ。
というわけでケイシェリアは一礼し、エステルと一緒に帰っていった。
うむこれで【精霊術師】が仲間になったな。ビックリだよ。
二人を見送って一息ついた。まさかこんな方法でギルド加入するとか、久しぶりに度肝を抜かれたぜ。昨日は抜く側だったのに、抜いた肝を持ってかれてしまった気分だ(意味不明)。
ま、それじゃ切り替えて次行こうか。
次はシエラと、例の「子爵」の子だ。楽しみすぎる!
ガラリッ。ギルドの扉が開くと、外からシエラが入ってきた。
何故か寝ている幼女を背負って。
「ごめんなさい。寝ちゃったみたいで」
「予想の斜め上過ぎる…」
もうどこから突っ込めばいいのか分からないレベルだった。
シエラの背に隠れてよく見えないが、幼女がすやすや眠っているのは分かった。
「どうしたらいいかしら?」
「いや、さすがに想定外だったというか…」
俺が聞きたいんだけど? 起こす、のか? この眠っている幼女を?
非常に重大な事態に悩んでいると、遠くの席で見守っていたハンナが恐る恐るといった様子で聞いて来た。
「あの、シエラさん、その子本当に私たちと同じ歳なんでしょうか? どう見てもその…」
「そうね、見えないわよね。でも私が小さい頃からの知り合いだから歳は同じのはずよ。…多分だけど」
最後の最後でシエラがボソリと小さく呟いたのがばっちり聞こえた。シエラも自信が無いらしい。
ま、それも仕方ない。
シエラの背中ですやすや寝ているのはどう見ても6歳~7歳くらいにしか見えない幼女だったのだから。
これが「子爵」。俺たち〈ダン活〉プレイヤーは〈幼子化〉と呼んでいたシンボルだ。
このように体格がかなり極端なキャラも〈ダン活〉には登場していた。そしてその体格特有の
ゲームの時はキャラクターメイキング時に〈特殊体格〉というジャンルから選べた分類だ。
閑話休題。
「とりあえず〈やわらか簡易マット〉に寝かせるか。そのままってわけにはいかないしな」
「……まさか本当に使うことになるとは思わなかったわ」
俺も自分で言ったことだけど、本当に使うとは思わなかったよ。
とりあえず寝かせた幼女。
ちゃんとシエラも着ている学園の制服を着用しているのだが、見た目が完全に小学生低学年にしか見えない。
軽く口を開けて少し涎が垂れているのもポイントだった。何これ、可愛いんだけど…。
いや、年齢は16歳のはずなのであんまり寝ているところを見るのは
そう思って視線をシエラの方に移すと、彼女は疲れたように幼女の紹介を始めた。
「彼女はルル。子爵家の令嬢で、昔から私やリカと同じグループで一緒に遊んでたの。リカは心配していなかったのだけど、この子はこの体型でしょ? 正直他のギルドに任せるのが不安で、出来るなら私たちのギルドで引き取りたいのよ」
完全に扱いが幼子なんだがそれは?
まあ、シエラの言い
つまりは〈エデン〉を信頼しているというシエラのメッセージと、そういうことだろう。
そうだよな?
俺はシエラにキラキラした視線でそう問うた。
「……ここもダメだったかしら」
「そんな事無いぞ?」
無い無い。無いったら無い。このギルドは安全です。
だから「子爵」「姫」ください。強いんです【ロリータヒーロー】。
何故かシエラにジト目でジーッと見つめられたので、勇者らしいキリッと格好いいと思われる顔で返した。
「はぁ」
シエラがため息をつく。
何故だ?
「ふみゅ…みゅ~……」
簡易マットの上で寝ている幼女から可愛い寝言が漏れた。
本当に可愛い寝言だった。思わず近くまで寄ってきていたハンナと目を合わせる。
ハンナの目がハートマークだった。
「ね、ねえゼフィルス君、その子ギルドに入れないの? 入れよう?」
「入れようか!」
「賛成!」
「ちょっと…」
俺とハンナの厳密な審査の結果、何故かシエラから待ったが掛かった。何の問題があるというのか!?
カワイイは正義という言葉もある。なら我がギルドで預かるのは正義な行いという事に違いない!(全然違う)
こうして
「ちょっと、本気なの?」
本気です。
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