第104話 〈金箱〉の中身は超激レアの『空きスロット』!
「金箱!」
「金箱ね!」
真っ先にハンナとラナが駆け寄った。
二人の目はキラキラしていて期待でいっぱいだ。
「待て待て、勝手に開けるなよ? 全員で開けるところを見ようぜ?」
「当たり前じゃない! ほら、シエラも急いで!」
当たり前と言いつつ我慢できないとばかりにシエラを急がせるラナ。
「シエラ、お疲れ。がんばったな」
「ええ。少しハードだったわ」
「それにしては上手くできてたぜ」
「あなたが指示を出してくれたおかげよ。助かったわ」
お互いを労いながらシエラが合流する。
彼女は苦手なモンスターを相手によく立ち向かったと思う。
多少
これも彼女が
「ねえ、早く開けましょうよ!」
「ああ、そうだな。皆集まったし開けてもいいぞ。今日は誰の番だ?」
「エステルさんです。どうぞ、宝箱の前へ来てください」
「そうでした。では、その名誉、
いつの間に宝箱を開けることが名誉なことになったんだ?
今回のローテーション。前回はラナだったため今回はエステルのようだ。
皆が注目する中、ゆっくりとエステルの手によって開けられていく金箱。
その中身は、
「杖ね!」
「両手杖ですね」
ラナが中を見て叫び、エステルが金箱から長さ2mに迫ろうかという両手杖を取り出した。杖の先端に大きな赤色の水晶が輝いている。
ちなみに宝箱の大きさ的に入らないサイズなのは置いておく。イッツマジック!
「〈マナライトの杖〉だ! こりゃ大当たりだぞ!」
「本当!」
俺が両手杖を見て判定するとハンナが飛び上がって喜んだ。
詳細は〈マナライトの杖:攻撃力7。魔法力28。『空きスロット』〉。
最後注目、『空きスロット』。
『空きスロット』である。重要なので二回言った。
ゲームなんかではたまにある物で、ここに特定の〈
〈能玉〉とはそのまま〈能力が詰め込まれた玉〉であり、中に〈スキル〉や〈魔法〉が詰められている。
〈ダン活〉では装備の『空きスロット』に〈能玉〉をカスタムすることで使うことが出来る仕様だった。
簡単に言えば、擬似スキルオーブ、擬似スクロールである。この意味が分かるだろうか?
つまりは、〈能玉〉さえあれば、なんでも好きな〈スキル〉〈魔法〉を使う事が出来るということである! え、冗談? と思うだろ。マジなんですこれ。
もちろん制限はあるが、〈マナライトの杖〉なら〈魔法〉全般に対応している。〈能玉〉さえあればハンナの『ファイヤーボール』だって、俺の『シャインライトニング』だってラナの『光の刃』だって撃てるようになるのだ。ヤバすぎる。
ちなみにこの『空きスロット』はドロップ品限定の激レアにのみ付与されているもので、プレイヤーメイドでは付与できない非常に希少価値の高い物だった。
あまりの超性能だが、その代わりにドロップの中でもダントツにドロップ率の低い激レア中の超激レア扱いだった。
それがまさか
ゲーム時代の俺ですらドロップしたことが一度しかなかったこの一品。
売れば1000万ミールを軽く超す値が付くだろう。
マジもんの大当たりだ!
そんな説明を簡潔に伝える。
「い、いっせんまんみーる………」
話を聞いてハンナがカチンコチンに固まった。俺はサッといつでも支えられる位置に付く。
しかし、今回はハンナの再起動は早かった。
「すっごいね…この杖にそれだけの価値が…」
むう、残念。今回は自分1人が手に入れたものじゃなかったせいか、ハンナは気絶まで行かなかった。
「何しているのよあなた」
「いや、前に一度ハンナがミールを見ただけでパンクした事があってな。いつでも支えられる位置についていた」
「そう? それにしては手からいやらしい感じがしたのだけど、気のせいかしら?」
「そうじゃないか?」
シエラが鋭い。とりあえずすっ
「これの所有者だが。ハンナ、使ってみるか?」
「え、えええ!?」
良いリアクションだハンナ。シエラのジトッとした視線がハンナの方に向いたぞ。
「む、無理だよそんな高いの! そんなので殴って傷つけたら弁償なんて出来ないもん」
「いや、だから殴んなよ」
相当錯乱しているハンナが妙なことを口走る。いや、わりといつものことかもしれないが。
それに傷ついても問題ない。『修復』『浄化』機能がついた〈浄化魔道具〉に入れておけば勝手に直るからな。そこらへんはゲームだ。ちなみに〈浄化魔道具〉は洗濯機の近くにあるぞ。
しかし、ハンナが今使っている〈フレムロッド〉は、正直今後も使い続けるのは厳しいだろう。ハンナINT無いし。『ファイヤーボールLV2』も低LVの上に下級魔法だし。完全に火力不足だ。
ここの幽霊ダンジョンのように魔法特効の効くダンジョンならともかく、通常のダンジョンではむしろMPの無駄使いまである。
そろそろ装備更新の時期だろう、と考えていただけにこれは渡りに船だった。
ハンナがどんなに拒否しても絶対持たせてやるぞ。
「な、皆もハンナに持たせてもいいだろ?」
「そうね。他に使う人もいないし、ハンナ、使ってみて」
「私も使わないわ。手が塞がるって、なんか性に合わないのよ」
「私も、武器は
「というわけだ。諦めろ」
「そ、そんな~」
外堀を埋められたハンナがブツブツと「私、心持つかなぁ」と心配しているが、大丈夫だ。どんなに高い装備でも使えば慣れる。最上級ダンジョンなんて宝剣、宝槍がゴロゴロしているぞ? いやゴロゴロはしてないけど。
「じゃあ、ドロップ集めて撤収しよう。帰ったら早速〈能玉〉を作成しようか」
「今日は周回しないのね」
「ああ、シエラもその方がいいだろ?」
「ええ。助かるわ」
幽霊ダンジョンは魔石系ドロップをよく落とすのだが、魔石はぶっちゃけスラリポマラソンで十分持っている。ちょっとハンナの部屋が怖いくらいだ。確か、ものすごく溜め込んでるようなことを言っていたしな。
という事で周回はLV上げくらいしか用途は無い。なら、わざわざシエラが苦手なダンジョンでする必要も無い。なら撤収だな。
シエラもホッとしたように息をついた。やっぱり無理はしていたのだろう。
全員で手分けしてドロップを〈
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