第92話 シエラが、俺に甘える? それって何のご褒美?




「ゼフィルス、昨日約束した魔法の相談に乗りなさい!」


「ラナ、もう少しマシな物の頼み方は出来ないのか?」


「い、良いじゃない。私は王女よ! 約束したじゃない!」


「俺はギルドマスターだけどな。まあ約束は別に守るけどさ。できれば次は甘える感じで頼む」


「なぁ! そ、そんな事しないわよ!」


 ラナはツンデレの才能があると思うんだけどなぁ。

 俺は慌てふためくラナを見るのが好きである。次は甘えているところを見てみたい。


「何やっているのよ。ラナ殿下をからかうんじゃないの」


「いや、わりと本音なんだが…」


「なら、代わりに私が甘えてあげましょうか?」


「シエラが、俺に甘える?」


 想像してみる。気品に満ちあふれ、出来る秘書の雰囲気を纏わせたクールなシエラが急に腕を絡めてきて「ゼフィルス、大好き」とか言ってくるのだ。

 ……それってなんのご褒美? え、いくら払えば良いの?

 俺の残金58万ミール、足りるのかな?


「是非今度よろしくお願いいたします」


「……冗談だったんだけど? それより私も職業ジョブについて教えてもらえるかしら?」


「オーケーオーケーなんでも聞いちゃって! 全部答えちゃうから」


「ちょっと、私にも教えなさいって言っているでしょ。泣くわよ?」


 すでに半泣きに近いラナが寄ってきた。

 いや、教えるって。どんだけ寂しがりなんだよこの王女。


「ラナ様とシエラ様が終わりましたら、私も是非ご指導いただければと」


「ゼフィルス君。私もお願いできる?」


「分かってるって全員教えるから」


「ゼフィルス、大人気」


「カルアにも伝授してやるから待っててくれよ、自分の判断で振っちまうと後悔するかも知れないからな?」


「ん。待ってる」



 昨日のボス周回でラナ、シエラ、エステルが職業ジョブLV20になった。

 つまり〈スキル〉〈魔法〉の第二段階が解放されたということだ。


 SUPとSPはこれからのダンジョンの動向に合わせ、ステータスと〈スキル〉〈魔法〉を最適解に振っていく事になる。

 そうなるとどうしてもメモでは伝えきれないので、今日はこうして勉強会となったわけだ。


「まずラナだが、喜べ。今までバッファーとちょこっとヒーラーしか出来ていなかっただろうが、今回からは攻撃魔法が加わるから、出番が増えるぞ」


「本当!」


 バンッと机を叩いてラナが身を乗り出した。


「ラナ様、はしたないですよ」


 エステルに注意されている。よほど嬉しかったらしい。


 【聖女】は魔法アタッカーとしての側面も持つ。

 【白魔道士】や【司祭】などは回復とバフがメインで少し攻撃魔法が使える程度だが、その最高位職である【聖女】は結構強力な攻撃魔法が使えるのでアタッカーとしても活躍出来る。

 さすがにダメージディーラーにはほど遠いけどな。


 しかしそれでもLV20で使用可能アクティベートになる『光の刃』と『光の柱』は重宝する。

 中級魔法なので威力もそこそこ高いからな。


 他にも全体回復魔法の『全体回復の祈り』というのがヤバい魔法だ。全体系で『継続』が付与される。その代わりMPもがっつり使うがユニークスキルと合わせればまさに敵無しだ。


 あと『生命の雨』も取っておいた方が良いだろう。こちらは純粋な全体継続回復魔法だ。

 『祈り』や『願い』系とは違い一瞬で回復せず、時間経過でホット回復する魔法だが、これにもユニークスキルが乗るので倍のスピードでじゃんじゃん回復していくことになる。


 次のこれは回復魔法と言えば欠かせない。

 蘇生系、『復活の奇跡』。文字通り戦闘不能状態のメンバーを復帰させる。

 これはさすがにユニークは乗らないので〈魔法LV〉を上げて回復量を上げておかないとすぐまた戦闘不能になる。あと消費MPも〈魔法LV〉を上げれば減っていくしクールタイムも短くなるので少し育てる事を勧める。


 『浄化の祈り』も欠かせないだろう、状態異常回復魔法なので絶対に取らせる。初級はまだまだ状態異常をしてくる敵は少ないが、中級に入るとそこそこ増え、上級に行く頃にはがっつりばらまかれる、状態異常回復は必須魔法だ。

 これも初期はMP消費が多く〈魔法LV〉を上げると使用MPが減っていく仕様だが、これにSPを振るのはさすがに勿体無い。使用可能アクティベートするだけで良いだろう。


 そして魔法系の職業ジョブに共通して覚える重要なパッシブスキル。『MP自動回復』と『MP消費削減』も忘れてはいけない。

 MP管理は魔法職に必須な技能だからな。


 ラナの〈魔法〉はこんなところだろう。ステータスも色々指示して今後のステ振りの構想も伝えておく。

 そうして出来上がったステータスを紙に書き出してもらった。これは他人のステータスを見るには〈水晶で出来たドラゴン像〉が必要なのだが、さすがにギルド部屋には無いため手書きで代用だ。


 それでラナの振り終わったステータスがこちら。

 ――――――――――


名前ネーム:ラナ

人種カテゴリー:「王族」「姫」「女」

職業ジョブ:【聖女】LV12→LV20

SUPステータスアップポイント:合計21P獲得

制限:〈RES+5 or INT+5〉

【HP 90/90→94/94】

【MP 210/210→340/340】


【STR 10】

【VIT 10→30】

【INT 60→110】

【RES 110→150】

【AGI 20→30】

【DEX 22→30】


【SUP 0P→168P→0P】

【SP  0P→8P→0P】


《スキル》

『幸運』『MP自動回復LV1』new『MP消費削減LV1』new


《魔法》

『回復の祈りLV1』『回復の願いLV1』

『全体回復の祈りLV1』new『生命の雨LV1』new

『復活の奇跡LV1』new『浄化の祈りLV1』new


『獅子の加護LV1』『聖魔の加護LV1』

『守護の加護LV1』『耐魔の加護LV1』

『迅速の加護LV1』


『光の刃LV1』new『光の柱LV1』new


《ユニークスキル》

『守り続ける聖女の祈りLV10』


《装備》

〈慈愛のタリスマン〉両手

 『回復強化LV5』

〈聖女装備一式〉頭、体①、体②、腕、足

 ――――――――――



「良い感じだ」


 メモを見させて貰って1つ頷く。

 INTが110も有るのでサブ魔法アタッカーとして十分やっていけるだろう。


 職業ジョブLV12からSPを貯めておいてもらったので〈魔法〉も概ね使用可能アクティベートできた。『復活の奇跡』をLV5に上げたいところだがSPが切れたのでここまでだ、後は少しずつ育てていってもらおう。


 【聖女】は優秀な〈魔法〉が多いから目移りしてしまうよな。

 しかし、全部育てようとすれば間違いなくパンクするのでここからいくつか絞っていきたい。

 とりあえずはこれで終わりだな。



 さて、次行ってみよう。


「私の番ね」


 次はシエラだな。




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