第81話 〈ナイトゴブリン〉戦、これがパーティ攻略!




 今回のボスは、ちゃんとボス部屋で待ち構えていた。

 レアボスをツモるとボス部屋にボスは居ないので、こいつは通常ボスだな。


「事前に言ってあったとおり、ボスは〈ナイトゴブリン〉1、ソードゴブリン2、ただゴブリン2だ。作戦は事前通りに。ラナ、行けるか?」


「任せて! 前みたいな失敗はしないわよ!」


「いや、別に失敗はしても良いぞ。気をつけるだけでいいさ、何かあったら俺らでフォローする」


 失敗を恐れて何も出来ないとなったら本末転倒だ。以前のラナみたいにな。

 所詮しょせん初級中位ショッチューボス、少しの失敗くらいどうと言う事はない。

 むしろ今のうちにたくさん失敗しておけまである。


「ハンナは基本後方から『ファイヤーボール』で牽制と援護を。別に倒さなくても良い。仲間に当てないようにだけ気をつけてくれ」


「わ、わかったよ」


 魔法は射撃だ。『ファイヤーボール』を使い始めたばかりのハンナには、まだまだ動いているモンスターの狙いは付けられない。だから今は味方に当てないようにだけ頼んだ。


 エステルとシエラには特にない。彼女たちのパフォーマンスは良いからな。


「じゃ、戦闘開始!」


「「「「おー!」」」」


 お、今回はシエラも揃えてくれた。嬉しいね。



 最初、ボスの〈ナイトゴブリン〉は狼に跨がりながらその場で待機。

 まあ、初級ダンジョンのボスだ。集団戦型のボスのトップバッターなだけあってその攻めはぬるい。


 今のうちに取り巻きのゴブリン共を片付ける。


「『シャインライトニング』!」


「「ごぶぁ!?」」


 バラバラに駆けてくるものだから『シャインライトニング』は二体までしか当らず。

 しかし、なかなかのダメージが入ったはずだ。

 その二体は俺にヘイトを向く。


「『挑発』! 良いわよ!」


「『守護の加護』! 『獅子の加護』!」


「『ファイヤーボール』!」


 残りの二体のヘイトはシエラが取り引きつける。

 それを確認してラナからバフが届いた。防御力上昇と攻撃力上昇だ。


 次いでハンナの〈フレムロッド〉の特性『ファイヤーボール』が飛ぶが、これは残念ながら避けられてしまった。


「『アピール』!」


「『ロングスラスト』!」


「『聖魔の加護』! 『迅速の加護』!」


「『ファイヤーボール』!」


 俺が受け持った二体のただゴブリンをさらに『アピール』で引きつけると、バフで強化されたエステルのスキルが突き刺さる。

 戦闘はまず弱い者から片付ける。セオリーだな。


 ラナは冷静に魔法力上昇と俊敏力上昇を発動して味方全体にバフを掛けた。

 いち早くクールタイムが終わったハンナがまた『ファイヤーボール』を放ち、シエラの方のソードゴブリン一体に命中する。


「やた!」


 今度は当ったことでハンナが握りこぶしを作った。

 今のは良い一撃だったな。シエラが『シールドバッシュ』を放ってノックバックしたソードゴブリンに命中、そのままノックバックダウンしたのでやった感があった。あれは気持ちいいだろうな。


 そうこうしている間にこちらの戦闘が終わる。

 所詮はただゴブリン、ボスの取り巻きで能力値が上がっていたとしても余裕の勝利。

 俺はタンクからアタッカーにポジションチェンジしてソードゴブリンへ躍り掛かった。


「『ソニックソード』!」


「ゴブ!?」


 良い一撃が決まったようでクリティカルダウンを取れた。ついでにヘイトも奪ってしまったようなので起き上がらないうちに畳み掛けて倒してしまおう。


「『ロングスラスト』!」


 遅れてきたエステルがもう一体のソードゴブリンに突撃する。良い判断だ。

 あれはエステルに任せよう。


 その間に俺がダウン中のソードゴブリンを通常攻撃で倒し終わると展開が少し動いた。


「ボスが動いたわよ! バフをかけ直すわ! 『守護の加護』! 『獅子の加護』!」


 〈ナイトゴブリン〉は残りゴブリンが一体になると動き出す。

 ヘイトはゴブリンを一番多く倒した者に向けられるので、並とソードを1ずつ倒した俺に向く。

 アタッカーから再びタンクにポジションチェンジ。


「任せろ。『アピール』!」


 サブタンクいるとほんと便利。シエラはエステルがソードゴブリンを屠るまでそっちに居てもらい、ボスは俺が引きつける。

 〈エンペラーゴブリン〉を倒した俺が本気になればサシでやれないことも無いが、今回は彼女たちとのパーティ攻略なのでポジションにてっした。


「『ファイヤーボール』!」


「『回復の祈り』!」


 俺のリアルタンクはまだまだ勉強中なのでいくつか掠る。

 HPが少し減ったのを確認したラナが嬉々として回復魔法を掛けてくれた。


 ハンナの『ファイヤーボール』も何個かボスが反応し、当りこそしなかったが避けるために攻撃が何度か中断する。

 よしよし。教えたとおりの援護が出来ているな。


「『挑発』!」


「『ロングスラスト』!」


 そうこうしているうちに取り巻き戦が終わったシエラとエステルが合流する。


 シエラの『挑発』に反応して〈ナイトゴブリン〉の向きがシエラに変わった。

 俺の『アピール』とシエラの『挑発』の効果はほとんど同じなのだが、今回俺は攻撃せず、相手の攻撃を受けるに徹したためヘイトが緩和された結果タゲがシエラに移った形だな。


 タンクをシエラが引き受けてくれたので俺もアタッカーにポジションチェンジする。


 スキルを使って大ダメージを与えるとタゲがこっちに向きそうなので通常攻撃で攻める。


「よ、せい」


「『回復の祈り』!」


「『ファイヤーボール』!」


「『ロングスラスト』!」


「クールタイムが終わるわ。『挑発』!」


「よっし。『ソニックソード』!」


 シエラは見事に〈ナイトゴブリン〉の攻撃を捌いていたが、それでもダメージは蓄積していく。ラナが回復魔法を唱えて全回復だ。やっぱ【聖女】は強いな。1度回復したら数十秒回復使わなくても良いんだから、ヘイトとMP管理が段違いな性能だ。


 シエラがうまく引きつけつつヘイトを稼いでくれたので俺もスキルを解禁し、ダメージを与えていく。今回は『勇者の剣ブレイブスラッシュ』を使わない。あれは強すぎる。一瞬で片が付いてしまうだろうからな。


 それにユニークを使うまでも無く装備が強いため、さほど時間も掛からずその時は訪れた。


「ゴ、ゴブゥゥゥゥッ…」


 エステルの『ロングスラスト』が綺麗に決まると、ボスモンスター特有の膨大なエフェクトをまき散らして〈ナイトゴブリン〉は消滅した。


 残心しながら戦闘を振り返る。

 今回の戦闘はかなり上手くいった。これが連携を駆使したパーティ戦だと胸を張って言えるほどだ!



「良い感じだったぜ! お疲ぇ……」


 俺がいつものとおり労いの声を上げようとして、しかしその声はしぼんでしまった。


 みんなの視線のその先、

 エフェクトの消えた先には金箱が鎮座していたからだ。




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