第66話 これレアボス素材やないの!?これが勇者の力さ
研究所からの帰り道、ハンナが今まで溜めこんだ感想を口にした。
「すごい、人たちだったね」
語彙が乏しくなるほど圧倒されたらしい。
「ああ、激しく同意だな。いや、俺のイメージする研究員そのままって感じだったが」
「そうなの?」
特に自分が知りたい事に齧り付く感じがな。
あののめり込み具合はすごかった。多分あの後ろに控えていた研究員たちは所長が前もって押さえていたんだろう。そうじゃなきゃカオス空間が形成されていたに違いない。
それくらい各研究員たちの血走る目がヤバかった。
俺のヒントが具体的すぎたというのもあるのだろう。
だが、今までの研究資料を見せてもらったが、やはり統計でしか無く「これこれこういうことを続けた人は発現しやすいのでは?」というものに過ぎなかった。
なのでもっと効率を重視したやり方を教えてやったわけだ。悪夢の100万回なんてやる必要は無い。
研究員たちはその効率重視とも言うやり方に目から鱗がボンボン落ちていた様子だ。そしてどんどんのめり込んできて、最終的に俺を中心にレポート用紙とペンを持った研究員が間近でサークルを形成していた。俺の声を一瞬たりとも聞き逃さないという気迫を感じて好感が持てる。
うむうむ。良い人たちだった。〈ダン活〉プレイヤーに似た空気を感じたぜ。
「ま、これで高位
あと三週間。研究所にとって、いや学園側にとって地獄の期間だが、頑張ってほしい。
俺は丸投げしてギルドを育てる事に集中する。出来ればあと5人欲しい。
「うーん。でも、ライバルとか増えると思うけど、いいの?」
「むしろドンと来いだな。この学園、思っていたより水準が低い。このままじゃ楽にSランクまで取っちまう、それじゃつまらないだろ?」
「だろって言われても…。うーん。ゼフィルス君のその自信がどこから来ているのか知りたいような、怖いような…」
「ま、ハンナも俺のギルドに入った以上、ひもじい思いをさせるつもりはないさ」
確かに学園全体のレベルは上がるだろうが、今回研究所にリークしたのは汎用系の
要は高の低ランクばっかりな職種だな。高の中以上を取りたければそれなりの人種カテゴリーを持っていなくちゃいけない。
さすがに人種カテゴリーの条件まで話すとキリが無い。あれは具体的過ぎるし、なんで俺が知っているのかってなる。
それに王族なんかにしか発現しない
俺たち〈ダン活〉プレイヤーだって開発陣からノーヒントで頑張ったんだからな。
まあ、ゲームの中には至る所にヒントは鏤めてはあったのだが、助言をもらえたことは一度も無かった。
研究塔から出た俺たちはそのままC道へ向かう。
この時間ならマリー先輩も授業が終わってギルドの方に居るだろう。
「マリー先輩いますか?」
「あ、いらっしゃい兄さん。待ってたわぁ」
「こんにちはマリー先輩」
「ハンナはんもいらっしゃい」
ここ最近何故か落ち込み気味だったマリー先輩がいつもの元気に戻っていた。
ハンナに挨拶した時微妙に顔が引きつって見えた気がしたが、きっと気のせいだろう。
「兄さんたちギルド結成おめでとうな!」
「おう、ありがとう。やっぱりその話、もう出回ってんのか?」
「そりゃあもう、兄さんは今一年生で一番ホットな人物やもん。それが王女様や騎士家の才女、それにマルグリット家の伯女まで連れて話題にならないわけないやん。兄さんも有言実行で
「そっか。じゃあ説明はいらないな。ギルド名は〈エデン〉、今後ともよろしくな。マリー先輩」
「こちらこそや」
小さなマリー先輩の手と握手を交わす。
これで〈エデン〉のメンバーもここで優遇してもらえるだろう。
「それで、買い取りを頼んでいた素材だが。出来てるか?」
「もちのろんや。ほい、これ査定表な」
慣れたものでいつもの通りメモを受け取り内容を確認する。
今回は今まで買い取りを受けてもらえずに溜め込んでいた
ハンナと山分けすれば205万ミール。締めて現在の所持金は385万ミールだな。
「少し、単価が下がったか?」
「ほんの少しだけなぁ。ほら例の筋肉パーティが
「なるほどね。ギリギリセーフだったな。大きく儲けられて良かったぜ」
これもスタダを決められた者の特権だな。今後どんどん
その前にある程度回収し、
これから
装備を調えるためにも大きく金が要る。特に平民は実家の援助が無いから大変だ。
その集団から頭一つ抜けたアドバンテージは非常に大きい。
その後、昨日集めた〈野草の草原ダンジョン〉の素材を買い取り査定してもらい、マリー先輩に「こ、これレアボスの素材やないの!? 兄さんどういうことなん!?」とびっくり仰天されたので、「これが【勇者】の力さ」と格好付けてごまかしておいた。とても気分が良い。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます