第65話 熱烈歓迎研究所! リアルの水準を高めよう。
「やあやあやあ【勇者】くん、待っていた、待っていたぞ!!」
「あっと、おじゃまします」
「おじゃまします……」
「全然邪魔ではないから気にしなくて良いぞ。お付きの子も楽にしてくれ。お茶も用意出来ないところで悪いがな、ハハハ!」
研究塔に着いたところ。
少し待たされたのち、受付の方に案内された場所でやたらテンションの高い初老の男性に出迎えられた。その後ろには白衣を着た研究員が
「申し遅れたな! 俺は研究所所長、ミストン! この研究所で俺以上の男前はいねぇ!」
驚いた事にこのおっさんが所長、つまり研究機関のトップだった。
〈名も無き始まりの村〉にいた武器屋のおっちゃん並に四角いごつい顔している。男前うんぬんはジョークなのか?
「ああ。俺は――」
「おう一年生のゼフィルス氏だろ。もちろん知ってる。そっちのハンナ嬢も揃って研究塔で名前を知らない奴はいねぇ」
どうやら自己紹介は不要のようだ。
しかし驚いた。俺は分かるが、ハンナも有名なのか?
「というよりギルド《エデン》のメンバーは今最もホットな集まりだからな。なんだ【勇者】【聖女】【盾姫】【姫騎士】【錬金術師】って。こんなギルド初めて見たぞ」
どうやら、こちらのギルドの情報は筒抜けらしい。
というか、エステルが【姫騎士】になったのは今日の朝なんだが、なんで知ってるんだ?
確かに学園側にはダンジョンに潜る際、
「本当なら《エデン》のメンバーには研究員総出で歓待させてもらいたいくらいなんだが、ゼフィルス氏、全員今度連れてきてはくれないか?」
「ま、そこは研究所の頑張り次第じゃないですか? 一応声は掛けてみますけど、自分たちも大事な時期ですから研究所がなんの成果も出せないと知れば協力はしてくれないでしょう」
「辛辣だな! だがもっともだ。王女様方の信頼も無償では手に入らない。我々の成果でもって勝ち取るのが筋というものだ!」
「その協力はしますよ。自分にも利がある事ですから。そのために今日は参上しました」
「ありがとう! ゼフィルス氏は我が研究所の希望だ! 我々で出来る事ならできる限り協力を惜しまない!」
ミストン所長とグッと固い握手を交わす。
ここまで俺が受け入れられているのは、あの入学式の時のジョブ一覧の影響もあるが、そもそもこの研究機関自体、言ってはなんだが成果をほとんど上げられていない事が起因している。
ゲーム時代の〈ダン活〉では16歳からスタートだったために
まあそれでも、〈ダン活〉プレイヤーの有志たちが膨大な労力と時間を掛けて探し出したのだけどな。俺も少なからず協力した。
しかし、リアル〈ダン活〉では16歳以前の行動も計測されてしまうために、どんな行動をしていたのか不明な点が多かった。
幼い頃の事なんて憶えていない方が当たり前だしな。
〈竜の像〉が16歳にならないとジョブ一覧を表示してくれないので事前に確認する事も出来ない。
難易度はゲームの時の比ではないだろう。
だが、〈ダン活〉プレイヤーの有志ならそれでも全て見つけ出したと思うが。
そんなわけで、研究所は学園の中でも肩身が狭い。
学園長はなんとか研究所に成果を上げさせたくて、俺みたいな優良職になれた学生を紹介したりして色々と援助を入れているらしい。
しかし、大して成果を上げられていないのが現状だ。
だが、それでは困る。
後々ギルドメンバーを増やしていく際、低位や中位職のメンバーではダンジョンが強くなればなるほど付いてこられなくなる。ネタジョブも同様だ。(付いてこられないとは言っていない)
故になるべく高位の
俺が個人的に教えることも考えたが、今の《エデン》のギルドランクはF。最大10人まで参加可能でしかない。最高Sランクは最大人数50人が参加可能で、俺は近い未来Sランクへ昇り詰める予定だ。その時なるべく高位
しかし、それは一ヶ月で叶えられる事でもない。一ヶ月後学生は全て
「Sランクになれたら迎えに行くから~」と言ってキープすることもできなくはないが、できればやりたくない。
そのため、高位
あとは実直で実力もある学生が勝手に高位
俺は後でそれを引き抜けば良い。フハハ。
ということで、この研究所にはその情報を多く広め認知させるために役立ってもらおう。
先ほどのエステルの【姫騎士】の件もあるし、情報を扱う手段はあるようだしな。
「さて、早速【大剣豪】【大魔道士】【司祭】辺りの、これが原因じゃないかという可能性から話しましょう」
「おおおお!! いきなり大物だな! 是非頼む! それとまだ見ぬ未発見の
「良いでしょう。しかし、広告はしっかりしてくださいね」
「任せろい!」
ミストン所長はレポート用紙を広げると、後ろに並んでいた研究員たちが一糸乱れぬ動きでレポート用紙を広げた。よく訓練されている。
そして俺がヒントを話し始めると高速でメモを取り始めたのだった。
これで少しは高位
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