第33話 くまなの?アリクイなの? 初のボスモンスター
〈初心者ダンジョン〉とは違い、〈熱帯の森林ダンジョン〉のボス部屋は外だ。
ボスフィールドと言った方がいいか。円形に広がったサークルの中央奥にそいつはいた。
「あれが〈熱帯の森林ダンジョン〉のボス。〈クマアリクイ〉だ」
「クマ…アリクイ? くまなの? アリクイなの?」
「………アリクイだ」
分類上はな。
〈クマアリクイ〉は道中に出た〈クイール〉のボス型だが、行動パターンはかなりクマに似ている。二足歩行で立つし、豪腕を振るって攻撃し、四足で素早く移動する。そして舌は使わない。
正直、見た目がアリクイのクマと言った方が適している気がする。そんなボスだ。
俺とハンナは最奥の
「でも不思議だよね。こうして見えているはずなのに、触れないし入れないし反応もしないなんて…」
ハンナが
このように、フィールド型ダンジョンのボス部屋へは正規門を潜らなければ入れない仕組みだ。他にどんなスキルを使っても外からボスへダメージを与えることは出来ない。
「まあな。…おお! このおにぎり、中に卵焼きと焼き鳥が入ってるぞ!?」
「ふふ、美味しいでしょ?」
「
いやマジで美味いな。この組み合わせは予想外だった。
今食べているハンナ特製の弁当は〈初心者ダンジョン〉で取れたドロップを使って作ったらしい。ハンナがドヤ顔でアピールしてきたのでむっちゃ褒めておいた。
「さて、このおにぎりには何が………、ハンナ、何も入ってないぞ?」
「あ、それはおにぎりの中、全部ご飯にしてみたの」
「それただの
勘違いかよ。あ、でも塩が利いてて美味しい。
そもそも
前世ではおにぎりを作ってくれる女の子なんていなかったしなぁ。
微妙に感傷に浸りながらハンナのご飯を食べる、塩味が先ほどより強く感じた。
「んじゃ、やりますか。ハンナは手筈通りに後ろに下がって
「うん。わかった。ゼフィルス君も気をつけてね」
「ま、俺もボスモンスターは初めてだから気をつけはする、けど所詮
軽い口調でハンナを安心させるように言う。
〈ダン活〉での〈クマアリクイ〉は行動パターンや攻撃パターンなどが多様で、対策のしにくいモンスターではあった。しかし、所詮は
初めてのボスモンスターの宿命だ。仕方ない。
俺は〈天空シリーズ〉を構えて門を潜った。次にハンナも入ってくる。
クマアリクイの赤い瞳がこちらを向き、今まで微動だにしなかったボスが動き出した。
ほほう。リアルだとなかなかの迫力だ。ボスなだけあって俺より大きい、威圧力がある。
「んじゃ行くぜ。『アピール』!」
俺は前へ出ると、〈クマアリクイ〉のタゲがハンナに行く前に『アピール』で決めポーズをシャキンと決めてヘイトを稼いだ。
「グルルルッ!」
赤い目が俺を突き刺すように見つめる。
これは、分かっていてもなかなか怖い物があるな。ゴブリンのときとは大違いだ。
「ガアァ!」
「開始早々の、『
ある程度距離が空いているとクマアリクイはこっちに突進してくる習性がある。
それを逆手にとって『
タイミングを見計らって、下からかち上げるようにして一閃。
「ガッ!」
「うおっ!」
俺の『
足にかすってHPが4削れ、僅かに傷が出来る。
「っとと。なるほど、リアルでダメージ食らうってこんな感じかぁ」
「ゼフィルス君大丈夫!?」
「ああ、かすっただけだ! 全然痛くもないし問題ない!」
ハンナにそう応えて返す。実際怪我の痛みとかはほとんど無かった。
これはリアル〈ダン活〉ではHPがダメージの多くを肩代わりしてくれ、かつ痛みなどを軽減してくれるからだ。
聞いていたのと実際に経験するのとじゃまるで違うが、取り乱すほどじゃない。
構え直すとクマアリクイに向き直った。
クマアリクイとの距離は遠くない、俺は盾を前に出しながら今度はこちら側が突撃する。
「ガアァ!」
クマアリクイが立ち上がると両の手を振りかぶって切り裂いてきた。
この攻撃方法は知っていたので、盾で受けてみることにした。
ガツンッ! と盾を殴りつけられ大きな音を響かせるが、その音量に反して手に返ってくる衝撃は少ない。
どんなもんかと思ったが、70を超えるSTRとVIT値に裏打ちされ、さらに天空装備に身を包んだ俺にとってあまりに弱い威力だった。
これなら行ける。
俺はまたクールタイムの終わったばかりの『
そして豪腕が来たタイミング、それを躱して懐に潜り込むと青く耀くエフェクトを一閃。
「はあっ!」
「ガッ! ガガガ……」
お、クリティカルが入った。
一気に大ダメージを負ったクマアリクイの動きが止まる。ダウンだ!
チャンス!
『
「ガガガガガガーーーーッ」
そしてそのままHPが0になり、〈クマアリクイ〉が膨大なエフェクトに包まれて消えていった。
天空の剣で『
ボスモンスターとの初戦闘はこうしてあっさりと終わった。
その後には大量のドロップが残されていた。
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