【旅立ち】

(平成28年)


1月29日・はれ


その日の夕方のことであった。


場所は、六甲アイランドの夜行フェリー乗り場のレストランにて…


新門司港行きの阪九フェリーの乗船の手続きを終えたアタシは、瓶ビールとカツ丼定食を注文して夕食を摂っていた。


その時、行方不明になっていた虫ケラオヤジの小娘が突然アタシの前に現れた。


小娘は、アタシに『助けてほしい。』と言うた。


せやけど、アタシは『断る!!』と言うて突き放した。


「あんた!!この5ヶ月の間、どこで何しよったん!?」

「友人のところにいた…」

「うそばっかり言われん!!」

「まりなさん!!」


タンブラーに入っているビールをイッキのみしたアタシは、小娘を怒鳴りつけた。


「アタシ、もう一度やさぐれ女で生きて行くと決めたけん!!」

「まりなさん、どうしてなのですか!?」

「アタシは、ちいちゃいときからずっとひとりぼっちで生きてきたのよ!!男とトラブった回数もたーんとある!!もめ事をたびたび起こした!!職も転々としたわよ…せやけど、アタシは悪いなりに生きてきたわよ!!あんたもアタシみたいなやさぐれた女になりたいの!?」


小娘に怒鳴りつけたアタシは、飲食代の伝票を叩きつけた。


「アタシのごはん代…払っといて!!」


アタシは、キャリーバックと赤茶色のバッグを持って、フェリー乗り場へ行こうとした。


けれど、小娘がアタシの行く手をはばんだけん、ケンカになった。


「どいてよ!!」

「まりなさん!!」

「どいてといよんのが聞こえんのかしら!!」

「まりなさん…お願い…考えなおして下さい!!」

「はぐいたらしいわね!!どついたろか!!」


(バシッ、バシッ、バシッ、バシッ…)


アタシは、小娘の顔により強烈な往復ビンタを喰らわせた。


「浮世の世知辛さを知らずにノホホンと育ったあんたに、アタシの気持ちなんぞ分かってたまるか!!」


そしてアタシは、パンプスで小娘を思いきりけつった。


小娘は、グスングスンと泣いた。


アタシは、キャリーバッグと赤茶色のバッグを持って、フェリー乗り場へ向かった。

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