【もう一度、恋がしたいな…】

1月11日・晴れ


和歌山に来て最初の休日、紀ノ川の緑地公園へ行った。


アタシは、ベンチに寝転んでメンソールをくゆらせながら青空をながめていた。


この時、川の対岸で昔ながらの花嫁行列が行われていた。


アタシは、ぼんやりとした表情で花嫁行列を見つめた。


アタシは、故有吉佐和子先生が書いた小説『紀ノ川』のひと節を小声でエイショウしながら、思い出したくない思い出を思い出した。


福山で同棲生活をしていた時に好きだったカレを…


どうして、思い出すのか…


最後の最後まで…


愛しきれなかった理由は、なんだろうか…


悲しくなったアタシは、川沿いの県道を歩いて和歌山市内へ向かった。


その夜、アタシは市内十一番丁にあるかに道楽(居酒屋さん)へ行った。


かに鍋をさかなにビールをのんだ。


その時に食べたかに鍋は、悲しくも温かい味だった。

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