彼女と二人で謎を解く。「ケーキ入刀みたい!」夫婦探偵じゃねえよ!
「誰か……助けて」
小学六年生の夏休み、俺は燃え盛る家の中から一人の女の子を救出した。
彼女の名は国府(こくふ)幸希(ゆき)。
同い年ぐらいの彼女の右側は可哀想なくらいに焼けただれていた。
俺は必死になって救助し、その後は駆け付けていた大人たちに任せたのだけど。
人命救助の報労として感謝状を貰ったり、全校集会の場で校長先生から褒められもしたけど「お前が死んだらどうするんだ!」と、親父からは大目玉を喰らってしまった。
それから約一年半後、中学二年生。
俺の中で火災現場から女の子を助けた事は既に過去となっていたのだけど。
彼女は帰ってきた。
右目に出来た火傷の痕を隠すように、顔半分を小奇麗な布で巻いた妖精の様な美少女。
「私の目的は放火魔を捕まえること。そして……私の命を救ってくれた風祭君と結婚する事です! 風祭君! ぜひ私と結婚を前提にお付き合いお願いします!」
「……え?」
初対面ではないにしても突然の告白を受け入れることも出来なくて。
その後も俺と幸希は共に行動する。
放火魔を捕まえるべく日夜勉強している幸希はあらゆる謎に首を突っ込む。
図書室で発生した完全犯罪から、学校全体を揺るがしてしまったとある騒動。
さらには偽装恋愛と言えるほどの浮気調査まで。
中学生高校生と年をとっても相も変わらず共に行動する俺達の事を、いつしか夫婦探偵なんて呼ぶ人も現れた。
彼女は自分の顔を焼かれた犯人に対して怒りを燃やしている。
俺はそんな彼女と最後まで付き合う覚悟を持って接している。
なぜなら……俺は彼女の家を焼いた人物を知っているから。
いつかこの事を彼女に話す日が来るその日まで。