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07 ENDmarker 2.

 初めて見たときから。

 抱いてみたいと、思っていた。

 女になんて、一生興味は湧かないと思っていたのに。一度気付いてしまえば、もう後ろには戻れない。

 悪いことをしている企業から、人知れず金を奪っていく。詐欺師の真似事をしていた。人とあんまり触れ合えず、コミュニケーションがうまくとれなかった。どこへ行っても、顔がいいだの筋骨隆々だの言われ続ける。

 好きでこの顔に生まれたわけではないし、なりたくてこの身体になったわけでもなかった。それでも、外を歩くと女が寄ってくる。だから、女は嫌いだった。自分を、セックスの対象としか見ていない。

 女を抱くことなく、普通に生きていくはずだった。

 いつも通りに企業のコンプラチェックをしていて。その動画に、たどり着いた。ひとりの、女性。凛として、挙措に隙がなくて。そして、美しい眼をしていた。

 その女性が。会ったこともないのに、好きになって。詐欺師の仕事に力が入るようになった。前よりもちゃんとコンプラチェックをして、より悪い企業を狙うようになった。どうやら彼女は正義の味方で、悪いやつを捕まえるのが仕事らしい。

 自分は詐欺師だから。悪いことをしていれば、いずれ会える。そんな、意味も分からない確信が、たしかにあった。

 そんな、ある日。

 女性から連絡が来て。

 ホテルに呼ばれた。

 抱かれるのだと、思った。

 初めてのセックスだった。彼女は、とめどなく身体から液体をあふれさせて。それがこすれて出す音が、どうしようもなく自分を刺激した。何度も、何度もセックスした。最後には、ほとんど立てなくなるぐらいまで。

 彼女が、自分を見つけてくれた。それだけで、嬉しかった。呼ばれる度に、セックスを重ねて。

 そして、指輪を渡そうと、思った。どうせ振られる。身体だけの関係。それでも。抱いて抱かれるだけの関係ではないと言う意思表示を、したかった。

 とびきりの悪い企業を見つけて、金を奪って。仕事を完璧にこなした。これで、指輪が買える。彼女のための。普段使いできて、重くなくて、簡単に取り外せるやつ。

 指輪の注文を終わらせた瞬間、彼女から連絡が来て。そのときに。終わりだと、感じた。

 いつも通りに抱かれると思ったのに。唐突に、終わりが来て。でも、そういうものかもしれない。そんなことを考えていたら、彼女を前にしても、できるようにはならなかった。自分の人生の終わり。自分は、最期の瞬間に、セックスができなくなるタイプだったらしい。

 そのまま彼女に連れられて、警察署まで行って。

 署の前で、殴られた。痛くなかった。もともと身体は頑丈で。でも、自分の整った顔が殴られて、ちょっとだけ、気が晴れた。こんな顔。ぐちゃぐちゃになってしまえばいい。自分なんて、どうなってもいい。

 でも。

 彼女には、いなくなってほしくなかった。煙草なんかで、命を捨ててほしくない。そう思った。思っただけで。自分にはどうしようもない。

 殴られて、地面に転がって。

 彼女の囁き声だけが。

 自分の心を刺した。


「待ってるから」


 その一言だけ。

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