海外を放浪したりと、自分に正直に生きてきた。なのにいつの間にか人生の路地裏に迷い込んでしまったかのような有様。
『回想』を通して語られる人生は、明瞭ながらどこか胡乱で、変えようもないもどかしさも孕んでいます。現実と虚構の壁とは……
物語の構造が巧みで驚かされます。
表通りを歩く彼女を見つけてしまったことで、変わろうとあがくも『変えられない』主人公のハードボイルドなミステリー小説。
事態が暗転していくあたりから、特に目が離せなくなり一気に読んでしまいました。そして行き着くのは『パーフェクトワールド』。この物語の真相は、読んだ者だけが想いを馳せることができるでしょう。
長編ハードボイルドな小説です。
冒頭は異世界転生かな?と思わせますが、物語が進行すれば嫌でも気付くでしょう。
そう、本作はハードボイルドな人生を歩んでしまった男のお話です。
物語の作り方がとても面白く、読み手を惹きつけます。自分の人生を振り返る形で進行するのですが、視点変更が絶妙な計算とバランスで描かれていました。この書き方がカッコいい!
スマートな文章なのに奥深い心情が心地良く伝わります。しかも読みやすい。内容がハードなだけに読ませ方が巧みで、物語の展開に心が躍りました。
人物の造形も素晴らしく、何とも言えない不思議な感情が芽生えました。私はハードボイルドな人生を送っていないので、とても新鮮な感覚と同時に色々と考えさせられる作風です。
登場人物達の関わり方も物語に滑らかに入ってきていて作品の世界に自然と誘われるでしょう。
沢山の生き方があり、考え方がある。
それが私達の住んでいる現実世界。
是非、美しくも素敵で、クソったれのパーフェクトワールドをご堪能下さい。
貴方だけに残る世界が、見えるかも知れません。
物語は「僕」の回想の形で進んでいきます。
海外をふらついていた以外は、特に珍しくもない人生を歩んできた、平凡な男。
心から大事だと思える女性に出逢うこともできた…
それなのに、なぜこんな事態に陥ってしまったのだろう?
ささやかなひとりの人生の中に現れる、大きな希望と、絶望。
何が真実で、何が幻なのか。
思わぬ方向へ何度も転がっていく展開に、読者の心も翻弄され続けます。ハラハラしすぎて、心臓に悪いくらいです(笑)
まるで映画を見ているような、怒涛のエンターテイメントと言えるでしょう。
最後まで、余すことなく読者を揺さぶり続けます!