第34話 勉強を楽しくする方法
結局、勉強会は……俺、ヒナノ、高円寺、草刈、委員長の5人で行われることになった。
そして俺ら3人組は教えられる側、草刈と委員長は教える側として、個別の塾みたいな感じで勉強会は進んでいったのだ。
それで……最初に俺の隣に着いてくれたのは、草刈だった。俺は教科書を開きながら、草刈に話しかけてみる。
「草刈君……俺さ、暗記みたいなのはあまり得意じゃないんだよね。何かコツみたいなのってあるかな?」
「コツでござるか? んーなら例えば……藍野氏は歌を覚える時、どうやって覚えるでござるか?」
「えっ?」
変な質問に少し驚いてしまった。
歌? 歌か……俺、あまり歌には興味ないんだよな。別に草刈はそういうことを聞いているんじゃないと思うけど。まぁ覚えるとするなら……
「えっと……普通に聞いて覚えるかな」
「そうでござるか。それなら教科書も音声で覚えるのをオススメするでござるよ?」
「音声?」
何か凄い提案してきたな……? 天才しか許されない、独特なやつなんじゃないのかそれ?
「草刈君……音声って?」
「そのまんまの意味でござるよ。教科書を読んだ音声を録音して、それを暇な時に聴く……これが意外とすぐに覚えるんでござるよ!」
「へぇー。ハイテクな勉強法だね」
何ともまぁ現代的な勉強法だ。
まぁ……英語とかも声に出した方がいい、だなんてよく言われるけど……実際にしてる人はあんまり見ないよな。こういう所で差がつくもんなのか?
……でもその方法は、俺には難しいんだ。だって……
「でも草刈君……俺、自分の声を聞くのがめちゃくちゃ嫌いなんだよね。勉強どころじゃなくなるよ」
「ほう……そうなのでござるか?」
そしたら草刈はスマホを取り出して……何やら文字を入力し出した。そして俺にスマホの画面を見せてくる……そこに表示されていたのは。
「音声……依頼サイト?」
「その通りでござる! これを使えば、声優の卵の方達に授業のノートとか読んでもらえるのでござるよ?」
「あっ……へぇ……そうなんだ」
いや、どんな発想だよ。俺が100回頭打って逆立ちしても、絶対出てこない考えだぞそれ。
「でも草刈君……依頼にもお金はかかるよね?」
「無論ですぞ! 無償で働いて貰うなんてありえないでござるよ!」
「いや、それは分かってるんだけど……お金をかけるなら、塾とかの方がいいんじゃ……?」
すると草刈はメガネをキラーンと光らせて。
「甘いですぞ藍野氏。無論、お金はかかりますが……塾などと比べると圧倒的に格安! それに幼なじみや年上の先輩みたいなシチュエーションも付けられるのですぞ!」
「はぁ……」
「それに……ふひっ、ここでは言えないような……トロトロ甘々ボイスも付けてもらったり……!! というかむしろそっちが本編だったり……!?」
「あー分かった分かったから!」
草刈が興奮して暴走し出したので、俺は無理矢理話を止めた。
まぁ分かったことは……人にはそれぞれの勉強法があるということ。そして草刈の勉強法は……全く参考にならないということだ。
──
そして次に隣に着いてくれたのは、委員長だった。どうやら委員長は、俺が草刈とわちゃわちゃやっている間に、ヒナノと高円寺を一通り教えていたらしい。
「委員長、2人はどうだった? ちゃんと出来ていた?」
「……」
俺がそう聞くと、委員長は全くの無表情で答える。
「雨宮は……平均的な学力は持ち合わせていた。だから飲み込むのも比較的早く、まぁまぁ教えがいはあった」
「そ、そっか……良かったよ。じゃあ高円寺は──」
「言うな」
「え?」
「言うなっ……!」
委員長は怒りか悲しみか分からないけど……プルプル身体を震わせた……おい何したんだよ高円寺!!!
「え、えっと……始めましょうか」
「ああ。何の教科をするつもりだ?」
「とりあえず数学を教えて欲しいな」
「分かった」
──そっから俺は、委員長から停学中に進んでいた所を中心に教えてもらった。
流石委員長と言った所か、全く無駄のない解説をしてくれるから頭にズカズカ入ってくる。ぶっちゃけ教師よりも分かりやすい……もうアンタが授業やってくれよ。
「ということは……ここは公式を使うんだね」
「ああ。藍野は理解が早くて助かる」
「あ、ありがとう」
そして褒められると普通に嬉しい。もしこれがギャルゲーなら、委員長は勉強のステータスを上げてないと、全く相手にされないんだろうな…………何の話?
「ねぇオタク君って彼女とかいるのー?」
……そしたら向こうから勉強に関係ない、完全な私語が耳に入ってきた。普通にイラッとしたので、俺は注意する。
「おい高円寺、私語は慎め」
「えーだって勉強ばかりじゃ飽きちゃうよー?」
「勉強会ってそういうもんだろ」
「ちぇー」
高円寺は渋々納得した……かに見えた。高円寺はまた全員に聞こえるような音量で喋るのだった。
「あっ、そうだ! 勉強が楽しくなる、いいこと思い付いたよ!」
「何だよ高円寺……?」
「テストの点数が1番高かった人が……みんなにお願いごとをきいてもらうってのはどうかな?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます