ギャル勇者メーシャちゃんに、まとめて全部まかせろし! 〜《ギャルのキックはジャッジメント》世界征服たくらむ邪神に『ガツン!』と右脚叩き込みます!!〜
第87話 『焦りと憤りの修業をする僕と、思いがけない出会い』
第87話 『焦りと憤りの修業をする僕と、思いがけない出会い』
植林(森)活動をした次の日。
トゥルケーゼ近くの岩山に、ヒデヨシはひとりで来ていた。
「このままでは……。このままでは僕は……!」
岩山を登りつつ、ヒデヨシは先程からずっとひとりごとを呟いている。
「でもあの時、お嬢様の手を避けるのは、さすがに失礼だったでしょうか……?」
昨日メーシャが撫でようとしてからぶったのは、どうやらヒデヨシが
「いや、あの手を受け入れてしまったら、僕はいつまでも変われない! このまま子ども扱いされていては、ダメなんです!」
ヒデヨシは決意を胸にロックタートルのいる場所に向かう。
「だからこそ、今日は『ロックタートルの討伐』をひとりで受けたんです! ああ……でも、お嬢様に嘘をついてまでクエストを受ける必要は無かったような……?
でも、正直に言ったら、もしかすると灼熱さんか氷河さん辺りが付いてきてしまう可能性もありますからね……。
やっぱり誰かが一緒だと、ピンチになっても助けが入るだろうという
ヒデヨシは自身がついた嘘で大いに悩んでいるようだ。
今日は本来、メーシャと一緒にタコ焼き屋さんの面接官(手伝い)をする予定だった。
しかし、昨日のメーシャの
確かに今までもヒデヨシは、メーシャの戦いを見ているだけの方が多かったし、戦ったとしても雑魚を倒すか、そうでなくても見守られていた。それに普段だって、子ども扱いかペット扱いか知らないが、少なくとも頼りにされているようには感じられない。
故に今日は『村のおじいちゃんが町でミルクを売るそうですから、その手伝いに行ってきます』と
「せっかく
ヒデヨシはとりあえず覚悟が決まった様だ。
「おっと、いましたいました……」
岩に擬態したロックタートルを見つけたヒデヨシは、見つからないよう咄嗟に岩場の陰に隠れた。
そして、左肩に装着していたスターチャームから、事前に買い込んでいたアイテムを取り出して確認する。
「“錠剤型回復薬”100個、念のために用意した“毒消し”と“麻痺直し”それぞれ30個ずつ。
なかなかのお値段がしましたが、捕縛用結界と睡眠弾。まあ討伐クエストですから、結界とかは緊急脱出用ですかね。
あと、なんか防御力が上がるらしい“竜のうろこ”……。持っているだけで、なんというか、皮膚が硬くなったような……?
最後に水の入った水筒と、茹でた豆の入ったお弁当箱、前にお嬢様が作ってくれたタコ焼き。
よし、こんなものですね。あとは自分の実力次第。ですが、どう攻めましょうか?」
ロックタートルは近づくと攻撃をしかけてくる。基本的には噛みつきだが、たまに身体に貯め込んだ高温のガスを噴射する個体もいるそうで、それを受けると火傷や毒に掛かってしまうようだ。
「まあ、案ずるより産むがやすしとママさんも言ってましたし、出たとこ勝負です。……とうっ!」
ヒデヨシは意を決して岩場から飛び出し、ロックタートルの元に走り出した。
「グォオオオ!!」
ロックタートルは向かって来る
「来ましたね。────
ヒデヨシは黒いオーラに包まれて、変身しつつ高温のガスから身を守った。
ちなみに“クロスギフト”とはヒデヨシが考えに考えた、変身の時の掛け声であり、自慢の逸品だ。
それはともかく、意味としてはまず、サンタ
それにサンタクロースからの贈り物、つまり“ギフト”を合わせて『クロスギフト』だ。
────ズドドド……ドーン!!
黒いオーラが放つ爆風がガスを消し去り、眩い閃光を放ちながらエネルギーが収縮する。
「できました! クロスギフト:バージョン新星!」
そして、黒いオーラが霧散して、変身を終えたヒデヨシが登場した。
そのヒデヨシは、アルマジロのような黒いうろこ状の鎧のような板に背中と頭を包まれ、額には一本長いハリが生えている。
見た目は殆どアルマジロだが、ヒデヨシは断固として『アルマジロ』とは認めない。
ヒデヨシ曰く『ハリが生えているから』だそうだ。
「グォオオオ!」
ロックタートルは変身にも怯まず、ヒデヨシに噛み付き攻撃を仕掛ける。
────ガキーン!
しかし、ヒデヨシの装甲は硬く、金属がぶつかるような音を立てて跳ね返されてしまった。
「どんなもんですか! 次は僕の番です!」
ヒデヨシはそう言ってハリの先にエネルギーを集中させる。
「きてますきてます、きてますよ~!」
そして、ハリが眩く煌めいた瞬間、全速力でロックタートルに向かって駆けだした。
「いまだ!」
────キランッ!
ヒデヨシは煌めきをまとい、
「グォオオ」
──ズンッ!
ヒデヨシは甲羅にぶつかると一瞬止められてしまう。
ロックタートルは自分の甲羅の堅さに自信があるのか、それを見て余裕の表情をした。
「負けませんよ~!」
────ギュウィーン!
ヒデヨシの回転力がどんどん上がっていく。
「グォオオ……!?」
甲羅が削られ始めてロックタートルは焦り、ヒデヨシへの攻撃を再開しようとするが、もう遅かった。
「とどめです! 必殺“流れ星”!!」
────ズドンッッ!!
ヒデヨシは煌めきを最高潮にし、その名の通り流れ星がごとくロックタートルを貫いた。
「グォオアア!?」
確かに、ロックタートルの甲羅は硬い。だが、ヒデヨシのハリの方がもっと硬く鋭かったのだ。
ドシン……。
そして、ロックタートルは重たい音をたててその場に倒れた。ヒデヨシの勝利である。
「……ふぅ~。さすが『戦士泣かせ』というだけあって、なかなか硬かったですね。元の姿だと、甲羅は砕けなかったかもしれません。まあ、柔らかい部分を狙えば勝てるでしょうけど……」
そう、ヒデヨシは
楽な道を通り続けてしまえば、困難に陥った時に打開できなくなる。
だからこそ、あえて難しい道を進んだのだ。成長するために。
「でも、この程度じゃまだ『一皮むけた』なんて言えません。もっと、もっと強い敵を倒さないと……」
ヒデヨシは、いずれ置いて行かれるのではないかという焦り、弱い自分自身に対する怒り、そしてせっかく手に入れた能力を上手く使えていないようなもどかしさを感じていた。
「山頂の方なら強いモンスターがいるでしょうか? ロックタートルなんて目じゃないくらいの……って、あれはっ!?」
山頂に行こうとしたヒデヨシの前には、
「……くっ」
傷だらけになり、気を失っている青色のカエルが倒れていたのだった。
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