第40話 梨沙、やらかし。
「えーっと…梨沙?」
「ごべんってばぁぁ!!早紀ぃぃぃぃ!」
…そう。マイカちゃんが配信を切った直後、梨沙が泣き出してしまったのだ…。
最後のマイカちゃんの脅し(?)にどれだけ効果があったかは知らないが、どちらにせよ身バレはもう避けられない。私個人としては身バレしたところで恥ずかしいぐらいの問題しかないと思っているのだが、事態は思ってるより深刻なようで…。
「ファンがストーカーになるケースや、大勢のファンが押し寄せて周りの人にも迷惑がかかる可能性もあるにゃ」
具体的には、身内や友人が私の知人ということで危害を加えられる可能性や、企業に所属しているVtuberということでミラライブに対しての身代金目的で私を誘拐しようと考える人も出てくるかもしれない…とのことだ。
…甘い考えかもしれないが、案外大丈夫なのでは?
ミラライブって警察とどっぷりみたいだし、私の家族っつっても今唯一一緒に暮らしてるお母さんは元暴走族だったらしいし…。そんな簡単にどうこうされるようなタマじゃないだろう。問題があるとすれば…
「ひぐっ…うっ…ごめん…早紀…」
「もういいってば…過ぎたこと気にしてもしょうがないから、ね?」
「でもざぁぁぁぁぁぁ…」
…そう。梨沙のことである。
あ、別に罰しようとか処そうとかいうわけじゃないよ?私の身近にいる人で、狙われたら一番ヤバそうなのが梨沙って話。梨沙に迷惑かけたり、梨沙の彼氏や家族にまで影響が及ぶ可能性がある。そもそもの原因が梨沙だし…なんて割り切ることは当然できない。
自惚れてるわけじゃないが、私が梨沙を守ってあげなきゃいけないと思っている。梨沙は、ナイフを持った男に睨まれるだけで怯えて泣きそうになるくらいか弱い女の子なのだ。
普段は明るく元気に振る舞っているが、実は常に色んなことに怯えているということも知っている。この前の事件の後からはもっとだ。
…まあ、梨沙が一番危惧しているのは早紀に嫌われたくないということらしいけど。本人が言ってた。だから、今こうやって泣きわめいてるわけなのだが…
「ほら、もういいってば。とりあえず泣き止んで?」
そう、梨沙を優しく抱きしめながら言う。
「それに、梨沙に迷惑かけられることなんてしょっちゅうなんだから。その度に私が梨沙を嫌ってたらもう何回殺してもお釣りが来るレベルだよ?」
「サキちゃんさらっと毒吐くのにゃね…」
ミタマちゃんが空気読まずにツッコミ入れてきてるけど無視ムシ。
「それに、迷惑かけあってこその親友だって梨沙も言ってたじゃん?私だって梨沙のこと親友だと思ってるからたかが一回の失敗で嫌いになるわけないんだよ」
「…じゃ、じゃあ…」
「ん?」
「この前私がしたみたいに、一発ビンタして。そうじゃなきゃ私の気持ちが収まらない…」
この前というのは、私がVtuberの先輩の予習で徹夜したときのことだろう。思い出してちょっと恥ずかしくなってきた。
「いいの?」
「うん、お願い」
「じゃあ…歯、食いしばって」
「んっ」
「えいっ!」
スパァァァン!!
「ぎゃあああああああ!!!」
目を瞑って歯を食いしばる梨沙のほっぺたに、思いっきりビンタした。
「ガアッデム!」
「「なんで蝶野さん!?」」
「あり…が…と…」
「「サリーちゃん!?」」
梨沙、ほっぺたに赤い手形を残してぎこちない笑顔を浮かべていた。目尻に溜まった涙は、先程の涙だろう。ビンタが痛くて出てしまったなんてことはないはず。うん。ないよ。
「うわっ…こんなにくっきりつくものなの…?」
「綺麗なフォームだったからにゃあ…」
「いたい、歯がガタガタいってる…」
「ご、ごめんってば!!!!」
「ああ…方正さんってこんな気持ちだったんだね…」
「絶対違うよ!?あんなに痛いわけないよね!?」
「でも綺麗に入ってたしなぁ…」
「めちゃくちゃいい音してたにゃあ…」
ビンタの加減なんてわかんないもん!しょうがないじゃんか!
…話を逸らそうとふと時計を見るともうかなり遅い時間だった。今更感がすごいが、実は私と梨沙は明日大学で講義があったり。ということでもう寝なければ。
おやすみなさい。
あ、みーちゃんとマイカちゃんも泊まっていったよ。やっぱ、みんなで一緒に寝るのっていいね。
…ていうか、マイカちゃんのいびきがすごくて他の三人はほぼ寝れなかったなんて口が裂けても言えない。
…え?梨沙は頬の痛みが原因で寝れなかった?はいはいワロスワロス。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます