83.やはり図書館は地雷

レイラの余計な一言でハルはミカヅキと戦うことになった。室内で戦うのもアレなので2人及び観客は草原のしかも近くになにもないところに来ていた。



 「わー! ミカヅキ様! がんばれ!」 

 「ハルさんも負けるな!」

 ワーワーと鬼達が応援する中、かなり盛り上がっているがクレセだけはまだげっそりとした表情だった。見かねたショコラが声をかける。



 「どうしたクレセ、いつものオマエらしくないぞ?」

 「ショコラ。鬼族って結構戦いになると容赦ないんだよ」

 「ん? どういう事だ?」

 「鬼族って派手な戦い方をすればするほど好まれるから、あたいも結構派手に戦うんだ。だから周りの物が壊れるのも当たり前で……しかも頭領が相手なら……」  

 「……まさか……?」

 「うん……だから素直に喜べないんだよ……」

 ショコラは最悪のシナリオを頭に思い浮かべクレセよりもげっそりとした表情になった。 



 「ほれいくぞ。あまりのことにビビらんようにな」

 「そう簡単には折れませんよ」

 そんな2人はさておき、戦いが始まった。先に仕掛けたのはミカヅキで、彼女は炎を待とう拳をハルに向かって仕掛けた。しかし、ハルは見切っていたのか瞬時に防御魔法を唱え、ガードする。しかし、魔方陣の一部はひび割れており、これはよほどじゃないと勝てないとハルは直感で悟った。



 「どうした? 守ってばかりじゃ勝てんぞ?」

 「ええ、十も承知です」

 続いて、ハルは水魔法を唱える。巨大な水柱が何個も出てくるが、ミカヅキはこれを軽々と避け、ハルに挑発的な笑みを見せた。一瞬、ハルはカチンときたが、すぐに冷静になり、次の一手を考えた。



 さて、しばらくの間両者互角の状態が続いたが、ミカヅキが急に空高く飛び、そして体の向きを逆さまにし、その拳を地面に打ち付けた。

 その姿に鬼の1人が歓喜の声を上げる。



 「でた! 首領の得意技! これかなり派手にやるよな!」

 「たまーに他の集落にも被害が出るからなぁ」

 ハルはこの鬼達の言葉を聞き逃さないでおり、一瞬で何が起こるか察したのだ。

 このままだと屋敷、つまりは図書館に被害が出る。どうしても避けたかったハルは屋敷とその周りに防御魔法を唱え、何とか守るようにした。

 しかし、それこそがクレセが言っていた最悪のシナリオ。そう、たとえ意図的でなかったとしても、図書館を攻撃すると言うことは、ハルの逆鱗に触れる。ということである。

 ハルはゆらりと怒りながら呪文を唱えた。



 「図書館……壊すな……図書館……」

 「な、何事じゃ?」

 「首領の攻撃を受けてもピンピンしてるとはな……」

 「いや、寧ろ強くなってないか?」

 「というか……なんか怖くね?」

 「そうだな……」 

 すると、その後先ほどの水柱の勢い以上の物が吹き出し、ミカヅキを襲った。何とかその攻撃は避けれたものの、次の炎の鞭には敵わず、後はもうされるがままだった。



 何とかハルの機嫌が直る頃にはミカヅキはボロボロであり、降参を宣言した。その頃には周りの鬼達もミカヅキと同じ気持ちになっていたらしく、誰も反対はしなかった。



 「……おまえ強いなぁ……一体何したら……」

 「読書です」

強さの秘訣を聞いたミカヅキに対し、ハルは先程の図書館の恨みもあったのか、凄く不機嫌そうに言った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る