78.王女との感想会

  本を元の場所に戻した後ハルとミカエルの2人は王宮内にあるカフェへとやって来た。そこでは休憩中なのかあるいは遅い昼食をとろうとしているのか数名の天使がいた。のんびりと彼らは過ごしていたが、ハルが入ってくるなり、臣下の礼をとった。

 ハルはいきなりのことに目を開け驚いたが、ミカエルがこっそりと耳打ちした。



 「皆様、ハル様に対して物凄く恐れや尊敬を抱いてますの」

 「そ、そう……」

 なんかいたたまれないなと思いつつもハルはメニューを見に行ったミカエルに着いていった。



 「今日は……マイルドコーヒーとクリームケーキにして下さい。ハル様、ゆっくり選んでいいですよ」

 「ええ……じゃあ……あ、このミルクティーとチーズケーキと、後プチケーキを下さい」

 「分かりました」

 席に座り、2人は自分たちの飲み物と食べものを注文した。注文を受け付けた店員はキッチンの方へ向かった。

 ハル達は頼むとすぐに先程の本の感想会に入った。



 「最初に読んだ本だけどさ視点が変わるっていうのは結構面白いなって思うのよ」

 「分かりますか。でも混乱しますよね今誰か」

 「私はまぁそんなことないとは思うけど……」

 「流石ですね、ハル様は……」

 「内容としてはミステリーかな? 結構入り込んじゃった。何回か読んで分かるところもあってさ……」

 と、店員が2人が注文したものを持ってきてもこの話し合いは続いていた。



 頼んだ者がやって来てからは2人の感想会はヒートアップする。ある程度語ったところでハルは一息つくために既に中身が冷めたティーカップに手をつけた。



 「いやー、にしても楽しいね。こうやって本の感想を言い合うのは」

 「? どういうとこですか?」

 ハルの言っていることが少し分からないミカエル。ハルは悪魔国の事を思い出しながら言った。



 「悪魔国にも図書館はあったけどいかんせんルシファーは本嫌いだったんだよね。まぁ、彼女とのデート(?)と楽しかったけどさ」

 ハルがそう言った途端ミカエルは満面の笑顔で(やったわー! ルシファーに勝ったわ!)と喜んでおり有頂天になっていた。

 そのため、ハルが次に言った「まぁ興味を持ってくれて、だんだんと本を読み始めてるみたいだけど」という言葉は聞こえていなかった。

 


 さて、その後カフェにやって来た従者達に「お2人ともそろそろ夕食の時間です」と言われるまで2人は本の感想を話し合った。



 夕食後、ハルの部屋にやって来たミカエルは寝間着姿であったというものの美人であり、ハルを驚かせた。



 「ハル様、約束の本を持ってきましたわ」

 「あ、ありがと……」

 「ふふ、明日が楽しみですね」

 「……そ、そうね……」

 それじゃあおやすみなさいと言い、部屋から出たミカエル。ハルはもう誰もいないドアの前で呆然としながらこう呟いたのだ。

 

 「彼女も……魔性だわ……」

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