47.完成とお別れ

翌日、クレセ達4人は再びダンジョンに来ていた。今日は第十六階層から最後までの確認だ。

 第十六階層からは真面目なショコラの担当だったということもあってか、他の3人に比べて結構まともな作りをしており、トラップやモンスターの配置も完璧だったため、確認はすぐに終わった。


 「……つまんなかったね」

 『悪かったな!』

 二十階層でボスを倒し、宝箱を開けた4人はポツリと呟いた。その呟きにショコラはキレながらツッコんだ。



 4人からこうした方がいいというアドバイスを貰い、その翌日からショコラ達は再びダンジョンの内装を変えることにした。

 今回はショコラが監督をするため、少しでもふざけるとすぐに鉄拳が落ちた。


 「ショコラさん、ちょっと来て下さい」

 「ハル? 図書館は撤廃したよな?」

 「このスライム本読んでます」

 「おお、凄いな……ってバカ! 今そんな事してる暇ないだろ!」

 「いった……親にも殴られたこと無いのに……」

 「やかましいわ!」


 一方その頃、ミスティは元気が無かった。前から少し薄くなってるとは思ったのだが、今日は膝から下が少し見えなくなっていたのだ。


 「……ダメだよね。落ち込んでちゃ……」  

 「どうした? ミスティ」

 「え? ルチアさん!? いや特に問題は無いですよ!?」

 「ふーん、まぁいいけど……」

 いつもとは違う様子のミスティにルチアは声をかける。しかし、ミスティは誤魔化したため、ルチアは気にせず、自分の担当のところに戻った。



 「とりあえずは完成だな」

 「うう……図書館……いざという時の避難先……」

 「ダンジョンを避難先にするなアホ」

 「私の幽霊……」

 「幽霊ダンジョンじゃ無いっての」

 序階層のモンスターを幽霊やアンデッド以外のモンスターを増やし、ハルの担当だった十一階層からの図書館は全て撤廃し、一部はモンスターハウスにするなどの改良を施した。


 約2名ほどそれに不満を唱える者もいたが、即座にショコラが黙らし、完成させたのだ。


 

 「確認終了です!」

 『お疲れ、どうだった?』

 「はい、やり応えもあり、序盤は簡単でしたが後半はちょっと苦戦しましたね、特に十三階層のモンスターハウスは対策しないと難しいかもしれません。でもそこが面白いです」

 『だってよハル。よかったな』

 『……図書館……』

 『気にしなくていいぜ』

 「……はぁ……」 

 嬉しそうなショコラとは対照的にハルはかなり落ち込んでいたが、ショコラは気にせず4人に答えた。



 その日の夜、ダンジョン完成を祝してパーティーが開かれた。

 しかし、いつまでも主役の一人のミスティが来ず、心配した面々は彼女の部屋に行くことにした。そこで見たのは既に上半身しか無い彼女だった。

 

 「え、ミスティ……それって……」  

 「どうやら、お別れのようですね……短い間でしたけど楽しかったです」

 「そんな……ミスティ……」

 ミスティは儚げに微笑む。そんな彼女にハル達もしんみりとしてしまった。

 しかし、ハルはそんなかで一つ思い出したのだ。



 「そう言えば、あなたルチアに対して死んでもついて行くって言ってなかった?」

 「え? あ、そういえば」

 「オマエ、ちょっと、バカ!」

 いきなり発せられた爆弾発言に驚く一同。特にルチアはハルの方に掴みかかろうとするが、ハルは瞬時に避けた。そして、ミスティはというと。


 「そうでしたわ! この数日間ダンジョンにかかりきりで忘れていましたが、私ルチアさんに一生側にいると決めてましたわ!」

 「え、じゃあ……」

 「私、まだまだ死ねません! 死んでますけど!」

 すっかり薄れかかっていた陰は消え、いつの間にか元に戻っていた。屋敷のメンバーは泣いて喜んだが、一方でルチアは頭を抱え、その場に蹲ったのだ。



 「ということでこれからもよろしくお願いしますね、ルチアさん」

 「もう嫌だーーー!」


お知らせ

 明日から何日かに渡って原稿の改稿をします。大まかなあらすじは変わりませんが、各話の話を変更したり、話数も増えるかもしれません。そのため章が増えるかもしれませんがご了承ください。


             作者より

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る